猫と鼠

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20.抱き上げられる鼠

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「前はたまにだとちゃんと自分でもイけたのに」

 僕が思わずそんなことを言ってしまうと、五月先生は驚いたような顔をした後ニッコリ笑ってきた。

「へえ? と言うことは俺が手伝うか見てないとイけないってわけだ? へえ?」

 そんなこと言われて思いきり否定したかったが、あながち間違いではないような気がして僕はまた俯いた。
 五月先生に背後から見られ、そして手伝ってもらっていたあの時はとても気持ちよかった。その時のことを思い出し、週末にお風呂に入っている時についつい手が伸びてしまった。

 ……でもできなかった。

 いやできないというのか。実際した、手を動かし。

 でもイけなかった。

 五月先生に教わっていた時のことを思い出しながらすると、少し硬くなりできるかなと思ったのだが、それ以上何も進まなかった。
 以前だと、出したばかりだからだろうなと考えていたと思う。でも前に僕が酔ってしまった時、五月先生にされたようなのだが、その翌々日に僕は五月先生が見ている中、射精した。それもあっという間に達してしまった。
 これはどういうことなのだろう。僕はひたすら納得いかなかった。
 そんなことばかり考え、やっている自分が嫌だと思っていた今朝、五月先生に「鍵を……」と言われた。恐る恐る保健室へ向かうと、三年生の男子二人がワイワイ言いながら保健室から出てきた。髪の色が黄色と赤色の派手な感じの生徒だ。でも確か彼らの担任の先生は「見た目はチャラいしやたら煩いが悪いヤツらじゃないんですよ」と言っていたような気がする。学年が違うので生徒の名前までは覚えていないが、髪の色でわかった。二人とも比較的小柄でかわいらしい感じもする。

 ……まさかあの生徒たちにも何かしているのだろうか。

 僕は保健室で五月先生が他の三年の生徒と何やらしようとしていた時のことを思い出した。そして何となく微妙な気持ちになる。
 それがなぜかよくわからないまま、ハッとなり僕は保健室へ入った。怖い、嫌なことは早く済ませてしまおうと思った。
 だというのについ、今出ていった生徒たちにも何かしていたのかと口にしてしまった。するとなぜか笑われた。改めて本当に、五月先生はいちいち色々わからない。いきなり手をひっぱり、自分の上に僕を座らせるなどという、考えられないようなこともしてくるし。
 そして今。先生の手が、先生に跨っている僕のズボンへ伸び、中を弄ってきている。

「ちゃんと、言ったのに……、な、んで離してくれないどころか、こんな、こと……」
「んー、いちいち内藤先生がかわいらしいからですかねえ」

 五月先生はそんなこと言いながら僕をさらに引き寄せ、空いた方の手で僕の後頭部をつかみ、五月先生の首元に押しつけてきた。

「何す……、離し……っ」
「あまり声を出されてると外に聞こえますよ? いくら鍵をなさったとは言え、ねえ」

 まるで僕が自ら率先して鍵かけたかのように言われた。

 五月先生が鍵するよう言ったのに。

 そう思っていると、僕の下着の中を蠢いていた手がさらに動いてきた。

「っぁ、ん」
「いい声だ。ねえ先生、ちゃんと大きくなって濡れていますよ? なぜご自分ではイけなかったんでしょうね?」
「知らな……、ぁ、あ」
「へえ? 凄くいい反応なのにな。先生、ちょっと下、脱ごうか?」

 五月先生が僕を抱えたまま立ち上がった。僕はそんなに小さくない。貧相かもしれないが、背は普通にある。なのに易々と持ち上げられた感じがして少し複雑だった。
 いや、そんなことは今どうでもいい。

「な、何で脱がないといけないんですか……! か、鍵も返してもらいました、し、僕、もう職員室に……」
「そんなに下、膨らませて?」
「っうぅ」

 確かに僕は今、下が少々辛いことになっている。悲しいことなのだが、大きくなっても小さ目の僕のモノはけっしてズボンの中で大して窮屈にならないのだけれども、それでも通常時とは明らかに違うのはバレそうな気がする。

「……き、気を紛らわせていたら収まりますから……」

 何とか言うと、五月先生はニヤリと笑って僕を引き寄せてきた。

「気を、ねえ」

 そしてそのまま僕のズボン、下着をずらしてくる。

「っや、めてくださ……」

 僕は真っ赤になり、慌ててずらされたものを引き上げようとした。

「大丈夫ですよ、怯えなくても」

 五月先生はまた僕を引き寄せ、そのまま椅子に座って僕を膝の上に跨がせた。下がスカスカして落ち着かない。
 ていうか完全に露出していてこれでは僕はただの変態じゃないか。

「お願いですから……やめ……」

 僕は羞恥心と情けなさで顔と目頭が熱くなってきた。そんな男らしくない顔を下と同じように見られたくないため、顔を逸らしながらワイシャツの裾をなんとか引っ張った。

「煽ってきてるだけですよ、内藤先生」

 だが五月先生は当然やめてなどくれなかった。よくわからないことを言ってきた上に、僕の顔を自分へ向けさせ、またキスされてしまった。色んなところが熱くて、恥ずかしくて耐えられない。

「恥ずかしいならひたすら俺に顔を埋めてなさい」

 五月先生は自分がそうさせてるくせに、唇を離すとそんな風に優しく耳元で言ってきた。
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