猫と鼠

Guidepost

文字の大きさ
上 下
1 / 45

1.甚振られる鼠

しおりを挟む

沢井が夏合宿の話を持ち出して3週間が経ち、その間に前期の講義のテスト期間もようやく終わりを迎えいよいよ夏休みが始まった

彰人と須田は訓練のためにサークル室ではなく朝から須田の家で2人で過ごしていた

「明日からの準備もうしたか?」

1時間の訓練が終わりいつも通り須田の膝の間でテレビを見ていると後ろから明日からのことを聞かれた

「だいたい、かな?」

「なに、まだ終わってないのあんの?」

「んー……ちょっと」

言い淀むと須田は彰人の頭上から覗き込むと聞いてきた

「海行ったことなくて、水着持ってないんですよね……」

そう言って苦笑いを見せると、そんなことかと須田は驚いた

「せっかくだし持っていくだけ持っていけば?入る入らないは行ってみてから決めればいいしさ」

須田のその言葉に悩みつつ頷くと、2人は須田の家を後にしてショッピングモールに向かった

「そっかぁ、彰人海初めてなんか」

感慨深げに横を歩く須田が呟くため、困ったように笑ってみせた

「泳ぐの苦手?」

「得意じゃないかなぁ」

「そっかそっか、まぁ海入るって言ったって足着くくらいのとこで遊ぶ程度だから怖かったら俺とビーチバレーでもしてような」

気遣うようにそう言って頭を撫でられながら歩くと、左腕をさすり喉の奥に支えるような感覚を心の奥底に押し込め明日からの夏合宿への期待で押し込めた

「これは?」

「派手すぎじゃない?!」

「目立つ方が見つけやすいなって」

「小さい子どもじゃないんだから!」

2人で彰人の水着を選んでいると、よく知った声が聞こえてきた

「相変わらず一緒にいるっすね」

「ん?お、沢井に上條じゃん。そっちも買い物?」

声に振り向くと、サークルの先輩の2人が連れ立ってその場にいた

「沢井さんが今更なって水着ないの気付いたって言い始めて」

暑い中引っ張り出され不服そうに上條がそういうと、横にいた沢井はけらけらと笑った

「いやぁ、去年遊びすぎて破けてたの忘れてて」

「事前に見るんすよ、絶対使うんすから」

「ごめんって」

パートナーとはいえDomの上條を振り回して明るく笑っている沢井の姿は、彰人にはまだまだ眩しく見えた

「山本も水着買ってるんだから俺と同じじゃん?」

「こいつはお前と違って、海行ったことないのー。一緒にすんなぁ?」

同じものを買っている彰人を仲間だと言わんばかりに沢井がそういうと、須田は一緒にするなと言い返していた

「ちぇ、まあ明日から楽しみましょう!」

拗ねた顔を一瞬作りつつ直ぐにそう明るく言って挨拶を済ませると、上條と共に会計へ歩いて行った

「あいつ、マジで嵐みたいなやつだな」

須田は2人の後ろ姿を見ながら呆れ顔でそう口にして、彰人はその言葉に小さく笑った
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

本ばっか読んでたら死ぬぞ

BL
本ばかり読む僕といじめっ子の幼馴染と精神疾患のお兄さんの薄暗い話。 恋愛要素は薄目です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...