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神話の時代の話

神話 1

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「この話の前の書は無いのだな。」

「無いッスね。しかし酷い話ッス。時の皇族を弑し奉り、尚且つ其れを歓喜の声を上げるとは……。」

「……うむ。」

一体、何が臣民達にここまでの蛮行をさせたのであろうか?

そんな疑問を持ちつつ、サイ達は古文書の続きに目を通した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

皇太子が引き裂かれる刹那。

「汝が望みし願い、我が叶えてくれようぞ」

大地の奥から響き渡る様な低く暗い声が、宙に舞う頭部の薄れ逝く意識にソレは・・・語り掛けて来た。

四方八方に散らばる四股。

裂ける胴体。

巻き散らかされる臓物。

皇太子の視界に写し出される己の肉体の惨劇。

狂った様に皇族が滅んだ事に沸き立つ群衆。

苦しみ死に絶え逝く、皇太子を冷徹な視線を送る反逆者共。

最期まで救いの願いを祈っても、救わなかった天の神々。

死ぬ間際の負の感情の力に応えた、大地より沸き立つ声。


全てが永遠に感じる、この一瞬に凝縮されていた。

~~~~~~~~~~

皇太子が弑された。

沸き立った群衆の歓喜の声が、次の瞬間、恐怖の音色に変化した。

皇太子が亡くなったその場所に、突如、霧状の暗黒が由現したのだ。

その霧は、反逆者共を、群衆を次々と呑み込み始め、漆黒の内部より、

『グシャグシャ……ボリッ、ガリガリ』

と、まるで咀嚼そしゃくするかの様な音と悲鳴が聞こえて来た。

生きとし生ける者だけでは無い。

無限に拡がるかの様なソレは、周囲の建造物も捲き込み、破壊音を響き渡らせる。

その深き闇より、ドスの効いた低い声が帝都、いや、全世界に轟いた。

「貴様らの全てを喰らい、我が内より、死の臣民を作り、死の国を造りあげてやる。…………喜べ、我と同体となりし後、汝らは我が忠実なるしもべと化し、永遠なる命を授かるのだ」

人々は逃げ惑った。

しかし闇たる霧は逃さず、喰らい、呑み込み、アンデッドを生産し続けた。

徐々に世界を侵食し始める絶望。

闇は貪欲に食べ続け、まるで排泄物の様に眷属を造り続け、闇は歓喜の声を上げながら宣言した。


「我は死を司どる皇帝、死皇帝であるぞ。全てを陵辱し天の神々も喰ろうてくれようぞ!」
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