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一時の平和な日常

なぜ、呼んだ?

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一行がヴィルドーア帝国領のドラゴン出現地帯へ向かって、早3日。

この日も森の開けた場所にて夜営をしていた。

食事も終え、最初の見張りとして、シンとアーシュリーが焚き火を囲いながら会話をしていた。

「……で、俺はそう思うんだが、アーシュリーはどう思う?死皇帝がドラゴンを放つとしても、タイミングが悪すぎる。わざとズレさせたとするならば、別な何かの策略を巡らしているとしか思えないんだが……」

シンは真剣な眼差しを焚き火を見つめ、たきぎをくべながら、アーシュリーに意見を求めた。

「……むぅ。折角のデートなのに、皆で行く事になったし、ここで死皇帝の名前なんぞ、聴きたくなかったぞ…………」

別な考えで膨れっ面して、体育座りして焚き火を見つめて、シンに聞こえるか聞こえないかの声で文句を言うアーシュリー。

「……って、アーシュリー?聴いてる?」

アーシュリーの左側から声が掛かり、アーシュリーは反射的に其方そちらを見た。

すると、眼前にはシンの顔が間近にあり、アーシュリーは『ドキッ』としながら、慌てて右側へ少し引いた。

「いゃあ、すまんすまん、で何の話をしてたの?」

シンは改めて、アーシュリーに意見を求め、答えを待った。

アーシュリーは暫く思案顔をしていたが、

「うん!さっぱり解らん!奴等は、いつも小難しい小手先の策で、私を狼狽えさせようと、いっっっつも嫌がらせするのでな。」

「で?いっっっつも、どうやって策を破ってたんだよ?」

シンの質問に、キリッとした面持ちで

「何も考えず、神界から雷や隕石を落としたり、暴風を起こしたりetcで、取り敢えず『軽くぶっ飛ばした』」

ヒュ~~~。

何処からともなく、凄まじい寒い風が吹いた。

え?

今、雷も隕石も、その他諸々で『軽くぶっ飛ばした』?

シンとアーシュリーの間に何とも言えない沈黙の時間が流れる。

「……うむ。神界から出られなかったからな。直接的にほふる方法は、天災しか手段はなかったのだ。汝が此方こちらに来なければ、私は顕現けんげん……ううん、それよりハッキリした実物実体化は無理であった。神1柱を現すには、勇者を越える『英雄』が出現する事が鍵であったからな。」

「じゃあ、何か?俺をこの世界に呼んだ理由は、それなのか?」

すると、アーシュリーは少し間を置き、

「…………そうだ。だが、それだけではない。この世界を救う……だけでもない。」

そう言うと、アーシュリーは少し寂しそうに体育座りのまま、再び焚き火に目をやった。
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