上 下
79 / 111
大乱と統一

作戦開始

しおりを挟む
民間人の解放に丸3日になった。

貴族軍にも苛立ちが表れる。
それは何故か?

「なんで野郎ばっかで、女が居ないんだよ!」

女だけではない。
子供や老人まで居なかった。つまり、男連中だけが解放されたのだ。

「くっそ、女を犯せると思ったのに……」

そんな下衆な事を実行しようとした騎士達も居た様だ。

そんな中、ザッザッザッと一軍が向かって来る。

「……おい、フリッツ辺境伯様だぞ」

騎士達は左右に分かれ道を作り、フリッツの軍は民間人の集団の元へとやって来た。

フリッツは集団の手前で挙手し、軍の停止を指示する。
そして馬から降り民間人に問う。

それがしはフリッツ・フォン・ヴォルフ辺境伯だ。一つ尋ねたい。何故、男ばかりだ?他の者は如何いかがした?」

すると、ボロボロのローブにフードを深く被った男が答える。

「女、子供、老人は、あの高さの縄梯子はきついので、最初に男共が来たのです。他の者は、門が治り次第解放しますので、今しばしの猶予を、と言伝ことづてを受けました。」

フリッツはフゥと溜め息を吐き

「あい判った。では、解放まで猶予を与える。」

きびすを返し、馬に乗ろうとするフリッツにフードの男は、急いで近付き更に声を掛ける。

「……あのぅ、貴方様がフリッツ様でしたなら、フォルクハルト様から、これを渡す様に、と」

懐から何かを出そうとすると、フリッツの兵士達が一斉に身構える。

懐から出した物。
それは一通の書状であった。

フリッツは書状を受け取り文に目を通す。
書状を読み終えると、フリッツはフードの男に
「民間人達は某について来い。それと民間人は、某の軍で対応する。他の貴族の騎士達は主の元へ赴き、指示をうけよ。公爵様からのめいであるぞ!」

そして、フリッツは部下に

「民間人は公爵様の付近まで連れて行く。そこで某達も夜営する。」

と命令を出した。

暫くして、目的地にたどり着き、夜営の準備後、自分のテントに招いた。

「……して、ここに書いてある事。お主に聞けと書いてあったが?例の密約の件か?」

「左様です。フリッツ卿」

フードを脱ぐと、そこに現れた顔はリックであった。

「卿は、公爵に反旗を翻す意志は変わらないか?」

フリッツは、渋い顔をしながら語る。

「公爵と心中する気は更々無いな。某の目指す世は、フォルクハルト様の目指す世の中と一致してるのでな。偶々たまたま公爵の配下になっていただけで、奴とは相容れぬよ。」

フリッツとは、フォルクハルトが謀反を起こす前に、事前に協力要請をしていた。
大公に反旗を翻したら、その話を逐一に公爵の耳に入れさせ、大公派の人間を集める様に仕向けていた。

フリッツが公爵の事を良くは思ってはおらず、フォルクハルトとの思想の一致から決めてはいたのだ。

その策略のお陰で大公派貴族は、見事に大軍を引き連れて首都に集まった。

「しかし、大公派の貴族がこれ程居たとは。」

なかば呆れた口調と態度で、リックは感想を述べる。

「それは某も同感だ。」

フリッツも同調しながら、何も無いが、と水を入れたコップを差し出す。

「フリッツ卿が予定どおりの時間に現れたのは、正直助かりました。卿が来なかったら、作戦自体は失敗せずとも難航したでしょうからね。」

リックはそう言いながら握手を求め、フリッツは快く応じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...