78 / 111
大乱と統一
徹底抗戦
しおりを挟む
暫くしてから、城壁より縄梯子が降りて来て、民間人がワラワラと外へ出て行く。
「……よろしいので?」
オスカーが、フォルクハルトに尋ねる。
「うん。彼の策に乗ると決めたんだ。彼の言う事が本当ならば勝てるし、嘘ならば枕を並べて討ち死にしかない。」
そう。
まさに乾坤一擲。
数で劣るなら策略で。
常識が通じないなら、奇想天外な発想で。
一つの策が駄目なら重複して。
シンの発想は、まさにソレであった。
「……彼が敵になるなら、命が幾つあっても足りないな。」
そう呟きながら、オスカーを見やる。
「確かに。この戦いの後…………消しますか?」
オスカーがシンの暗殺を提示する。
しかし、フォルクハルトは頭を2~3回と横に振る。
「いや、それは駄目だ。彼の思惑が、我々と同じならば利害が一致する。利用する、されるのではなく、共生・共存の道が必ずある。必ず、な。」
フォルクハルトは、ふと遠い眼をして、未だ観る事の無い太平の世に思いを馳せていた。
そこに、アルフォンスが現れる。
「策は順調だぞフォル。……で、この戦いの後、大公にお前が就け。フォル。」
兄のアルフォンスは、武人としての自身の価値は知っているし、フォルクハルトの政治手腕ならば、姉のエルネスティーネをも凌ぐ。
名君になる器がある、とその人間の器を見抜いていた。
「兄上、その事についてなのですが……」
フォルクハルトの話を聴き、アルフォンスとオスカーが眼を丸くする。
「……フォル、俺の聞き違いか?……それともお前の寝言か?」
「そうですとも、何かの間違いですよね?フォルクハルト様!」
フォルクハルトの決心は硬い様で、次の言葉を口にする。
「いや、戯れ言ではないよ。この方が世の中の為だ。」
アルフォンスの目付きが鋭くなり、フォルクハルトを睨む。
「……本気か?」
フォルクハルトも負けじと睨み返す。
「……極めて。」
周りの気温が、一気に絶対零度まで下がった様な錯覚をオスカーは感じた。
しかしアルフォンスが、参ったと言わんばかりの両手を挙げ、降参のポーズをする。
「判ったよ。フォルがそこ迄考え、そして決断したんだ。もう何も言わないよ。……さて当面の問題は、この包囲網をシンとやらの策略で破る事が出来るのか、だな。」
それに関しては、フォルクハルトは同じ思いであった。
確かに二重の罠ではある。
しかし、シンの
「勝算は成った」
とは、一体どういう事なのか。
更なる罠を仕掛けたのだろうか。
味方にも打ち明けずに。
「……よろしいので?」
オスカーが、フォルクハルトに尋ねる。
「うん。彼の策に乗ると決めたんだ。彼の言う事が本当ならば勝てるし、嘘ならば枕を並べて討ち死にしかない。」
そう。
まさに乾坤一擲。
数で劣るなら策略で。
常識が通じないなら、奇想天外な発想で。
一つの策が駄目なら重複して。
シンの発想は、まさにソレであった。
「……彼が敵になるなら、命が幾つあっても足りないな。」
そう呟きながら、オスカーを見やる。
「確かに。この戦いの後…………消しますか?」
オスカーがシンの暗殺を提示する。
しかし、フォルクハルトは頭を2~3回と横に振る。
「いや、それは駄目だ。彼の思惑が、我々と同じならば利害が一致する。利用する、されるのではなく、共生・共存の道が必ずある。必ず、な。」
フォルクハルトは、ふと遠い眼をして、未だ観る事の無い太平の世に思いを馳せていた。
そこに、アルフォンスが現れる。
「策は順調だぞフォル。……で、この戦いの後、大公にお前が就け。フォル。」
兄のアルフォンスは、武人としての自身の価値は知っているし、フォルクハルトの政治手腕ならば、姉のエルネスティーネをも凌ぐ。
名君になる器がある、とその人間の器を見抜いていた。
「兄上、その事についてなのですが……」
フォルクハルトの話を聴き、アルフォンスとオスカーが眼を丸くする。
「……フォル、俺の聞き違いか?……それともお前の寝言か?」
「そうですとも、何かの間違いですよね?フォルクハルト様!」
フォルクハルトの決心は硬い様で、次の言葉を口にする。
「いや、戯れ言ではないよ。この方が世の中の為だ。」
アルフォンスの目付きが鋭くなり、フォルクハルトを睨む。
「……本気か?」
フォルクハルトも負けじと睨み返す。
「……極めて。」
周りの気温が、一気に絶対零度まで下がった様な錯覚をオスカーは感じた。
しかしアルフォンスが、参ったと言わんばかりの両手を挙げ、降参のポーズをする。
「判ったよ。フォルがそこ迄考え、そして決断したんだ。もう何も言わないよ。……さて当面の問題は、この包囲網をシンとやらの策略で破る事が出来るのか、だな。」
それに関しては、フォルクハルトは同じ思いであった。
確かに二重の罠ではある。
しかし、シンの
「勝算は成った」
とは、一体どういう事なのか。
更なる罠を仕掛けたのだろうか。
味方にも打ち明けずに。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる