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大乱と統一
徹底抗戦
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暫くしてから、城壁より縄梯子が降りて来て、民間人がワラワラと外へ出て行く。
「……よろしいので?」
オスカーが、フォルクハルトに尋ねる。
「うん。彼の策に乗ると決めたんだ。彼の言う事が本当ならば勝てるし、嘘ならば枕を並べて討ち死にしかない。」
そう。
まさに乾坤一擲。
数で劣るなら策略で。
常識が通じないなら、奇想天外な発想で。
一つの策が駄目なら重複して。
シンの発想は、まさにソレであった。
「……彼が敵になるなら、命が幾つあっても足りないな。」
そう呟きながら、オスカーを見やる。
「確かに。この戦いの後…………消しますか?」
オスカーがシンの暗殺を提示する。
しかし、フォルクハルトは頭を2~3回と横に振る。
「いや、それは駄目だ。彼の思惑が、我々と同じならば利害が一致する。利用する、されるのではなく、共生・共存の道が必ずある。必ず、な。」
フォルクハルトは、ふと遠い眼をして、未だ観る事の無い太平の世に思いを馳せていた。
そこに、アルフォンスが現れる。
「策は順調だぞフォル。……で、この戦いの後、大公にお前が就け。フォル。」
兄のアルフォンスは、武人としての自身の価値は知っているし、フォルクハルトの政治手腕ならば、姉のエルネスティーネをも凌ぐ。
名君になる器がある、とその人間の器を見抜いていた。
「兄上、その事についてなのですが……」
フォルクハルトの話を聴き、アルフォンスとオスカーが眼を丸くする。
「……フォル、俺の聞き違いか?……それともお前の寝言か?」
「そうですとも、何かの間違いですよね?フォルクハルト様!」
フォルクハルトの決心は硬い様で、次の言葉を口にする。
「いや、戯れ言ではないよ。この方が世の中の為だ。」
アルフォンスの目付きが鋭くなり、フォルクハルトを睨む。
「……本気か?」
フォルクハルトも負けじと睨み返す。
「……極めて。」
周りの気温が、一気に絶対零度まで下がった様な錯覚をオスカーは感じた。
しかしアルフォンスが、参ったと言わんばかりの両手を挙げ、降参のポーズをする。
「判ったよ。フォルがそこ迄考え、そして決断したんだ。もう何も言わないよ。……さて当面の問題は、この包囲網をシンとやらの策略で破る事が出来るのか、だな。」
それに関しては、フォルクハルトは同じ思いであった。
確かに二重の罠ではある。
しかし、シンの
「勝算は成った」
とは、一体どういう事なのか。
更なる罠を仕掛けたのだろうか。
味方にも打ち明けずに。
「……よろしいので?」
オスカーが、フォルクハルトに尋ねる。
「うん。彼の策に乗ると決めたんだ。彼の言う事が本当ならば勝てるし、嘘ならば枕を並べて討ち死にしかない。」
そう。
まさに乾坤一擲。
数で劣るなら策略で。
常識が通じないなら、奇想天外な発想で。
一つの策が駄目なら重複して。
シンの発想は、まさにソレであった。
「……彼が敵になるなら、命が幾つあっても足りないな。」
そう呟きながら、オスカーを見やる。
「確かに。この戦いの後…………消しますか?」
オスカーがシンの暗殺を提示する。
しかし、フォルクハルトは頭を2~3回と横に振る。
「いや、それは駄目だ。彼の思惑が、我々と同じならば利害が一致する。利用する、されるのではなく、共生・共存の道が必ずある。必ず、な。」
フォルクハルトは、ふと遠い眼をして、未だ観る事の無い太平の世に思いを馳せていた。
そこに、アルフォンスが現れる。
「策は順調だぞフォル。……で、この戦いの後、大公にお前が就け。フォル。」
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名君になる器がある、とその人間の器を見抜いていた。
「兄上、その事についてなのですが……」
フォルクハルトの話を聴き、アルフォンスとオスカーが眼を丸くする。
「……フォル、俺の聞き違いか?……それともお前の寝言か?」
「そうですとも、何かの間違いですよね?フォルクハルト様!」
フォルクハルトの決心は硬い様で、次の言葉を口にする。
「いや、戯れ言ではないよ。この方が世の中の為だ。」
アルフォンスの目付きが鋭くなり、フォルクハルトを睨む。
「……本気か?」
フォルクハルトも負けじと睨み返す。
「……極めて。」
周りの気温が、一気に絶対零度まで下がった様な錯覚をオスカーは感じた。
しかしアルフォンスが、参ったと言わんばかりの両手を挙げ、降参のポーズをする。
「判ったよ。フォルがそこ迄考え、そして決断したんだ。もう何も言わないよ。……さて当面の問題は、この包囲網をシンとやらの策略で破る事が出来るのか、だな。」
それに関しては、フォルクハルトは同じ思いであった。
確かに二重の罠ではある。
しかし、シンの
「勝算は成った」
とは、一体どういう事なのか。
更なる罠を仕掛けたのだろうか。
味方にも打ち明けずに。
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