60 / 111
ハンサーラ公国と亡国の思惑
シン出動す。
しおりを挟む
ペンを書類の上を走らせ、シンはサラ達の任務について、深く考えていた。
神ちゃんの言葉から、本来は調査では済まない案件に思えてならないからだ。
仮にレビウスゾンビの兵器化に成功したとして、関節的には公国の勝利としても、一番に得するのは亡国だろう。
また、兵器開発に失敗し、公国から王国や帝国を始め、諸国に蔓延しても、亡国の一人勝ちである。
亡国にしてみれば、兵器開発がある程度、公国が行えば、どの道勝ちは確定しているのである。
「……と、すれば打つ手は一つだな。」
ペンを止め、スクッと椅子から立つと、シンはサイのいる部屋へと向かった。
まだ、休んでいない時間だと知って、国王の執務室の前に訪問し、ドアをノックする。
「……入れ。」
「夜分遅く失礼します。陛下に相談したき議があり……」
すると、サイは面倒臭そうにしながら話をする。
「あぁ、堅苦しい言葉は無しだ、無し!んで、余にどう言った話だ?」
「例のレビウスゾンビの案件なのだが、公国が兵器として研究をしている。対策室で探ったが、当たりの様だ。そこで、表立っての軍事行動は、公国軍を刺激し、要らぬ犠牲が出るかも知れない。」
「ふむ。」
「で、我々、対策室に研究室の破壊任務の承諾を得たいのだが。」
「なるほどな。詰まりは、このままだと、公国が勝つより、世界的危機に成り得る。と、言う事だな?」
「そうだ。間違いなく、そうなるだろう。」
サイは、ゆっくり紅茶を飲みながら、「ふむ。」と、思案していた。
短い時間だが、サイの思案には長い時間が経過した様に錯覚さえ覚える。
ティーカップをソーサーに戻し、デスクの上に乗せると、サイは言葉を紡いだ。
「うん。まぁ、百歩譲っても、それでも構わんのだが、問題は破壊工作したとして、この国か、帝国の仕業だと喧伝するだろうな。……そうとなれば、全面戦争だ。これまでの小競合い程度の様な戦いでは無くなる。つまりは、全てを擲ってでも、相手を完全に潰すか、潰されるかに発展する。それでもやるか?」
覚悟を見定めるかの様な視線で、サイはシンを見ていた。
「やるべき、だろうな。公国が研究に手を出し、更にクォーロストの一件があった時点で、公国……いや、亡国との戦いに腹を決めねばならない。つまり、遅かれ早かれだ。」
シンは、迷い無く率直な意見を述べた。
サイは両目を軽く瞑り、フゥっとため息を吐き、決断を下す。
「……わかった。ならば、諸将を明日には集めて、軍議を開く。無論、そうなれば、帝国にも参戦を促す様に、書状も用意せねばな?」
サイは続けて質問を投げ掛ける。
「で?どうするのだ?すぐに出立するのか?」
「そうだな。事は急を要すると思う。この話の後に出発するよ。」
「わかった。皆で無事に帰って来い。わかったな?」
サイは少し笑顔で言うと、シンも微笑み、
「善処する。」
と、言って部屋を出て行った。
神ちゃんの言葉から、本来は調査では済まない案件に思えてならないからだ。
仮にレビウスゾンビの兵器化に成功したとして、関節的には公国の勝利としても、一番に得するのは亡国だろう。
また、兵器開発に失敗し、公国から王国や帝国を始め、諸国に蔓延しても、亡国の一人勝ちである。
亡国にしてみれば、兵器開発がある程度、公国が行えば、どの道勝ちは確定しているのである。
「……と、すれば打つ手は一つだな。」
ペンを止め、スクッと椅子から立つと、シンはサイのいる部屋へと向かった。
まだ、休んでいない時間だと知って、国王の執務室の前に訪問し、ドアをノックする。
「……入れ。」
「夜分遅く失礼します。陛下に相談したき議があり……」
すると、サイは面倒臭そうにしながら話をする。
「あぁ、堅苦しい言葉は無しだ、無し!んで、余にどう言った話だ?」
「例のレビウスゾンビの案件なのだが、公国が兵器として研究をしている。対策室で探ったが、当たりの様だ。そこで、表立っての軍事行動は、公国軍を刺激し、要らぬ犠牲が出るかも知れない。」
「ふむ。」
「で、我々、対策室に研究室の破壊任務の承諾を得たいのだが。」
「なるほどな。詰まりは、このままだと、公国が勝つより、世界的危機に成り得る。と、言う事だな?」
「そうだ。間違いなく、そうなるだろう。」
サイは、ゆっくり紅茶を飲みながら、「ふむ。」と、思案していた。
短い時間だが、サイの思案には長い時間が経過した様に錯覚さえ覚える。
ティーカップをソーサーに戻し、デスクの上に乗せると、サイは言葉を紡いだ。
「うん。まぁ、百歩譲っても、それでも構わんのだが、問題は破壊工作したとして、この国か、帝国の仕業だと喧伝するだろうな。……そうとなれば、全面戦争だ。これまでの小競合い程度の様な戦いでは無くなる。つまりは、全てを擲ってでも、相手を完全に潰すか、潰されるかに発展する。それでもやるか?」
覚悟を見定めるかの様な視線で、サイはシンを見ていた。
「やるべき、だろうな。公国が研究に手を出し、更にクォーロストの一件があった時点で、公国……いや、亡国との戦いに腹を決めねばならない。つまり、遅かれ早かれだ。」
シンは、迷い無く率直な意見を述べた。
サイは両目を軽く瞑り、フゥっとため息を吐き、決断を下す。
「……わかった。ならば、諸将を明日には集めて、軍議を開く。無論、そうなれば、帝国にも参戦を促す様に、書状も用意せねばな?」
サイは続けて質問を投げ掛ける。
「で?どうするのだ?すぐに出立するのか?」
「そうだな。事は急を要すると思う。この話の後に出発するよ。」
「わかった。皆で無事に帰って来い。わかったな?」
サイは少し笑顔で言うと、シンも微笑み、
「善処する。」
と、言って部屋を出て行った。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる