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ハンサーラ公国と亡国の思惑
シン出動す。
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ペンを書類の上を走らせ、シンはサラ達の任務について、深く考えていた。
神ちゃんの言葉から、本来は調査では済まない案件に思えてならないからだ。
仮にレビウスゾンビの兵器化に成功したとして、関節的には公国の勝利としても、一番に得するのは亡国だろう。
また、兵器開発に失敗し、公国から王国や帝国を始め、諸国に蔓延しても、亡国の一人勝ちである。
亡国にしてみれば、兵器開発がある程度、公国が行えば、どの道勝ちは確定しているのである。
「……と、すれば打つ手は一つだな。」
ペンを止め、スクッと椅子から立つと、シンはサイのいる部屋へと向かった。
まだ、休んでいない時間だと知って、国王の執務室の前に訪問し、ドアをノックする。
「……入れ。」
「夜分遅く失礼します。陛下に相談したき議があり……」
すると、サイは面倒臭そうにしながら話をする。
「あぁ、堅苦しい言葉は無しだ、無し!んで、余にどう言った話だ?」
「例のレビウスゾンビの案件なのだが、公国が兵器として研究をしている。対策室で探ったが、当たりの様だ。そこで、表立っての軍事行動は、公国軍を刺激し、要らぬ犠牲が出るかも知れない。」
「ふむ。」
「で、我々、対策室に研究室の破壊任務の承諾を得たいのだが。」
「なるほどな。詰まりは、このままだと、公国が勝つより、世界的危機に成り得る。と、言う事だな?」
「そうだ。間違いなく、そうなるだろう。」
サイは、ゆっくり紅茶を飲みながら、「ふむ。」と、思案していた。
短い時間だが、サイの思案には長い時間が経過した様に錯覚さえ覚える。
ティーカップをソーサーに戻し、デスクの上に乗せると、サイは言葉を紡いだ。
「うん。まぁ、百歩譲っても、それでも構わんのだが、問題は破壊工作したとして、この国か、帝国の仕業だと喧伝するだろうな。……そうとなれば、全面戦争だ。これまでの小競合い程度の様な戦いでは無くなる。つまりは、全てを擲ってでも、相手を完全に潰すか、潰されるかに発展する。それでもやるか?」
覚悟を見定めるかの様な視線で、サイはシンを見ていた。
「やるべき、だろうな。公国が研究に手を出し、更にクォーロストの一件があった時点で、公国……いや、亡国との戦いに腹を決めねばならない。つまり、遅かれ早かれだ。」
シンは、迷い無く率直な意見を述べた。
サイは両目を軽く瞑り、フゥっとため息を吐き、決断を下す。
「……わかった。ならば、諸将を明日には集めて、軍議を開く。無論、そうなれば、帝国にも参戦を促す様に、書状も用意せねばな?」
サイは続けて質問を投げ掛ける。
「で?どうするのだ?すぐに出立するのか?」
「そうだな。事は急を要すると思う。この話の後に出発するよ。」
「わかった。皆で無事に帰って来い。わかったな?」
サイは少し笑顔で言うと、シンも微笑み、
「善処する。」
と、言って部屋を出て行った。
神ちゃんの言葉から、本来は調査では済まない案件に思えてならないからだ。
仮にレビウスゾンビの兵器化に成功したとして、関節的には公国の勝利としても、一番に得するのは亡国だろう。
また、兵器開発に失敗し、公国から王国や帝国を始め、諸国に蔓延しても、亡国の一人勝ちである。
亡国にしてみれば、兵器開発がある程度、公国が行えば、どの道勝ちは確定しているのである。
「……と、すれば打つ手は一つだな。」
ペンを止め、スクッと椅子から立つと、シンはサイのいる部屋へと向かった。
まだ、休んでいない時間だと知って、国王の執務室の前に訪問し、ドアをノックする。
「……入れ。」
「夜分遅く失礼します。陛下に相談したき議があり……」
すると、サイは面倒臭そうにしながら話をする。
「あぁ、堅苦しい言葉は無しだ、無し!んで、余にどう言った話だ?」
「例のレビウスゾンビの案件なのだが、公国が兵器として研究をしている。対策室で探ったが、当たりの様だ。そこで、表立っての軍事行動は、公国軍を刺激し、要らぬ犠牲が出るかも知れない。」
「ふむ。」
「で、我々、対策室に研究室の破壊任務の承諾を得たいのだが。」
「なるほどな。詰まりは、このままだと、公国が勝つより、世界的危機に成り得る。と、言う事だな?」
「そうだ。間違いなく、そうなるだろう。」
サイは、ゆっくり紅茶を飲みながら、「ふむ。」と、思案していた。
短い時間だが、サイの思案には長い時間が経過した様に錯覚さえ覚える。
ティーカップをソーサーに戻し、デスクの上に乗せると、サイは言葉を紡いだ。
「うん。まぁ、百歩譲っても、それでも構わんのだが、問題は破壊工作したとして、この国か、帝国の仕業だと喧伝するだろうな。……そうとなれば、全面戦争だ。これまでの小競合い程度の様な戦いでは無くなる。つまりは、全てを擲ってでも、相手を完全に潰すか、潰されるかに発展する。それでもやるか?」
覚悟を見定めるかの様な視線で、サイはシンを見ていた。
「やるべき、だろうな。公国が研究に手を出し、更にクォーロストの一件があった時点で、公国……いや、亡国との戦いに腹を決めねばならない。つまり、遅かれ早かれだ。」
シンは、迷い無く率直な意見を述べた。
サイは両目を軽く瞑り、フゥっとため息を吐き、決断を下す。
「……わかった。ならば、諸将を明日には集めて、軍議を開く。無論、そうなれば、帝国にも参戦を促す様に、書状も用意せねばな?」
サイは続けて質問を投げ掛ける。
「で?どうするのだ?すぐに出立するのか?」
「そうだな。事は急を要すると思う。この話の後に出発するよ。」
「わかった。皆で無事に帰って来い。わかったな?」
サイは少し笑顔で言うと、シンも微笑み、
「善処する。」
と、言って部屋を出て行った。
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