58 / 111
ハンサーラ公国と亡国の思惑
公国side フォルクハルト・フォン・シュナイダー侯爵
しおりを挟む
その頃、聖防御壁の封印門を守護する貴族がいた。
その名も、フォルクハルト・フォン・シュナイダー侯爵。
別名を白銀の巨狼と言う異名を持つ若き名将だ。
その名将は、この地ラーゼの町にて、辺境伯と変わらない生活を余儀無く、強いられていた。
何故ならば、何者かの手により封印門がこじ開けられ、アンデッドが押し寄せてしまったのだ。
その対応の為、フォルクハルトはラーゼに本陣を構え、封印の為の戦いをせざるを得なかったのである。
その間に、帝国・王国連合軍による、公国軍の大敗。
帝国軍には、フォルクハルトのライバルとも言える、異名『オルトロス』の名で知られる猛将がいた。
ジュラルド・レスカー公爵である。
フォルクハルトは歯痒い思いをしていた。
その戦場に出陣していれば、かの首を討ち取る事が出来た、と。
しかし過ぎた事は過ぎた事。
フォルクハルトには、成さねば成らない目標がある。
その為には、今は堪え忍ぶ時と、自身を落ち着かせる様に念じていた。
と、同時に
この封印門を破った者は、帝国か王国の工作員がやったのではないか、と思慮したが、これが部下オスカーの報告で、見事に裏切られ粉砕される事になる。
「侯爵閣下。敗れた我が軍の大半は……」
公国軍の編成内容を聞いて、フォルクハルトは驚愕したのと同時に戦慄を覚えた。
「な、なんだ……と?まさか!我が軍の大半がライトゾンビで編成されてたとは!」
つまり、この門を破ったのは、帝国や王国ではなく、
「……まさか、我が国が、この門を……」
フォルクハルトは、疲れたかの様に、その場にある椅子に座った。
公国内部では、珍しい人道主義の人格者としても有名なフォルクハルトである。
戦奴隷も奴隷から解放し、きちんと兵士として、分け隔て無く接する人間性が彼には備わっていた。
そんな彼が、この話を聞いて驚かないのが土台無理な話であった。
何せ、奴隷制度廃止や亜人差別撤廃に対し、積極的な侯爵である。
国主たる大公にも、幾度も上奏し疎まれてはいたが、まさかこう言う形で、国の在り方を大公が提示するとは思わなかったのである。
「……愚かな。国も魂も亡国に売り渡したのか。」
その呟きにオスカーの表示が曇る。
上司の心痛を察した為であった。
「オスカー。大至急、封印門の修理を全力で行えと伝えよ!その後、速やかに首都に帰投する。急げ!」
「ハッ!」
オスカーは命令を受けると、伝達の為にその場を後にした。
後に残ったフォルクハルトは、拳を強く握り締め、何かを決意する様な、鋭く力強い眼で宙を睨んだ。
その名も、フォルクハルト・フォン・シュナイダー侯爵。
別名を白銀の巨狼と言う異名を持つ若き名将だ。
その名将は、この地ラーゼの町にて、辺境伯と変わらない生活を余儀無く、強いられていた。
何故ならば、何者かの手により封印門がこじ開けられ、アンデッドが押し寄せてしまったのだ。
その対応の為、フォルクハルトはラーゼに本陣を構え、封印の為の戦いをせざるを得なかったのである。
その間に、帝国・王国連合軍による、公国軍の大敗。
帝国軍には、フォルクハルトのライバルとも言える、異名『オルトロス』の名で知られる猛将がいた。
ジュラルド・レスカー公爵である。
フォルクハルトは歯痒い思いをしていた。
その戦場に出陣していれば、かの首を討ち取る事が出来た、と。
しかし過ぎた事は過ぎた事。
フォルクハルトには、成さねば成らない目標がある。
その為には、今は堪え忍ぶ時と、自身を落ち着かせる様に念じていた。
と、同時に
この封印門を破った者は、帝国か王国の工作員がやったのではないか、と思慮したが、これが部下オスカーの報告で、見事に裏切られ粉砕される事になる。
「侯爵閣下。敗れた我が軍の大半は……」
公国軍の編成内容を聞いて、フォルクハルトは驚愕したのと同時に戦慄を覚えた。
「な、なんだ……と?まさか!我が軍の大半がライトゾンビで編成されてたとは!」
つまり、この門を破ったのは、帝国や王国ではなく、
「……まさか、我が国が、この門を……」
フォルクハルトは、疲れたかの様に、その場にある椅子に座った。
公国内部では、珍しい人道主義の人格者としても有名なフォルクハルトである。
戦奴隷も奴隷から解放し、きちんと兵士として、分け隔て無く接する人間性が彼には備わっていた。
そんな彼が、この話を聞いて驚かないのが土台無理な話であった。
何せ、奴隷制度廃止や亜人差別撤廃に対し、積極的な侯爵である。
国主たる大公にも、幾度も上奏し疎まれてはいたが、まさかこう言う形で、国の在り方を大公が提示するとは思わなかったのである。
「……愚かな。国も魂も亡国に売り渡したのか。」
その呟きにオスカーの表示が曇る。
上司の心痛を察した為であった。
「オスカー。大至急、封印門の修理を全力で行えと伝えよ!その後、速やかに首都に帰投する。急げ!」
「ハッ!」
オスカーは命令を受けると、伝達の為にその場を後にした。
後に残ったフォルクハルトは、拳を強く握り締め、何かを決意する様な、鋭く力強い眼で宙を睨んだ。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる