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暗雲たちこめる王国と公国

一方、リーチェは。

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「うーん。やはり、おかしいッスね。」

小声で、リーチェは呟いた。

亡国の完全なる属国ならば、生者は居ない筈である。

なのに、生者ばかりで死者は見かけない。

先の陽動に利用した、公国軍は死者で編成されていた。

一体、どこであの編成を実行したのかが掴めないのだ。

考えられるのは、

①公国が事実を隠蔽している。

②亡国が公国を語り、侵攻しようとしている。

③既に公国は、亡国に乗っ取りをされた後。

現時点では、これくらいしか思いつかない。
シンさまなら、どう考え、どう予測するのだろう。
と、リーチェは、ふとシンの事を思いながら帰路に着こうとした、その時。

「ん?アレは?」

リーチェは素早く音をたてずに身を隠して、気になった方向へと眼を細め向ける。

リーチェが見た方向には、フードを深々と被った、男とも女とも判別出来ない戻ったが、建物の壁に触れると、隠し扉だったのか、レンガの壁がズレて入り口が現れ、そして、その中に入って行った。

その後、入り口は閉まり、元の壁になった。

「……この建物は。」

国立独立記念館。

つまり、王国から独立した事を、展示品等を通してアピールする施設。

しかし、どうしてこんな所の路地裏に隠し扉があるのだろうか。

好奇心がまさったリーチェは、隠し扉の前に行き、仕掛けを理解した上で、侵入を開始した。

内部は、壁にランタンが掛かっており、若干薄暗い状態であった。

入って間も無く、地下へと下る階段があり、リーチェは忍び足で用心しながら、降りて行く。

約1階分だろうか。
降りた先は、横が約2人分ぐらいの、前の見通しが悪い、石畳の廊下に出た。

廊下には、所々に木箱が置いてあり、陰に隠れる事は出来そうだ。

箱の内部を確認したが、空箱で何も入って無かった。
そんな時、廊下の奥から話し声が近づいて来るのを察知したリーチェは、そのまま箱の中へと身を潜め息を殺した。

「…………にしても、あと何人実験にするつもりなんだ?アイツは。」

「さぁな。直接、訊けば良いだろう?俺達は俺達の仕事をするだけだろ?」

「……違いない。だが、あんまり良い気分な仕事で無いな。」

「同感だ。亜人を実験に使うのは良いが、人間までやるとはな。」

話声からするに2人。
近づいた声は、段々と遠くなり、リーチェが来た階段を昇る足音が聞こえた。

『……実験? 一体何の? 人体実験をこんな場所で行うくらいだから、きっとロクでも無い事ッスね。』

リーチェは、箱の蓋を薄く、そっと開け、周囲を確認した後に外へ出て、更に奥へ奥へと侵入した。
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