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暗雲たちこめる王国と公国

真犯人

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「………………すまない。陛下が身罷みまかられた。俺の落ち度だ。」

シンは俯いて、サイの亡骸に向かい呟く。

「貴様っ!あれ程、危険な博打だと、俺は言った筈だ!だから反対したんだ!」

ヤースキーの怒声が、寝所内に響く。
今にもシンに斬りかからんとする剣幕で。

それを抑えているのが、ブレイブとギルバルト。

ゴンザレスは、陛下の脈を触り、

「確かに、身罷られておりますな。……無念にござります。」

と一言述べるに留めた。

ネーネリアも太后も子供達も、悲痛な表情で顔を伏せている。

誰も口を開かない。
ただ嗚咽だけが聞こえる、この場において、口を開いたのは、サラであった。

「宰相……後継者は如何しましょうか。」

「………そうですね。正式にご子息様であられる、ヘンリー王太子殿下が継がれるのが、筋かと思われます。………しかし、」

「しかし、何ですの?」

ネーネリアが言葉の先を促す。

「殿下様は、まだ6歳と幼のうござります。後見人が必要でありますな。」

「なら、義姉様かシンが後見人として……」

サラがそう言おうとした時、ゴンザレスは言葉を遮る。

「恐れいりますが、ネーネリア妃様は、政治に疎く、シン殿に関しましては、今回の作戦の失敗の責任を取って頂く必要があります。また、後見人としては、政治に通じた私めが補佐をするのが宜しいかと。」

「責任?どうするのだ?」

ブレイブはゴンザレスに質問した。

「………………打ち首か、北の国へ所払いが妥当かと。そして、対策室は閉鎖する方針で………」

そこまで言うと、ノックをせずに発言をしながら入って来た者がいた。

「それでは困るな?ゴンザレス。」

一同は、入室した者の顔を見て驚いた。

「へ、へへ、陛下!?」

「うむ。余である。」

ベッドに横たわるサイと、入室したサイを交互に見やる一同。

それをしなかったのは、シンとサラだけである。

「ふむ。ゴンザレスよ。それでは、余が困るなよな?失敗は誰しもがするもの。ただ、余が死んだだけで、そこまでする必要性はあるまい?」

まるで幽霊を見るかの様に、一同はサイを見る。

ネーネリアや子供達は、喜びの表情に変わっていた。

「それに、だ。それ以前に、またそれ以上に重い罪を犯し、シラを切っている裏切り者に厳罰を与えねばならん。」

ブレイブも、ギルバルトやヤースキーも「まさか」と言う顔をしていた。

「のう?ゴンザレスよ?」

サイの視線は、どこまでも冷たくもあり、憎しみを込めたものだった。
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