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暗雲たちこめる王国と公国
一方、その頃。な敵と夫婦とHEROの存在。
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グレイと敵に本人の知らぬ所で付けられた名前の男が、薄暗い謁見の間にて、玉座に座る者に対し、うやうやしく片膝を着いて、報告を済ませていた。
「…………で、ございます。して、次の一手は如何なさいましょうか?……我が主。」
主と呼ばれた者は、黒い影を少し揺らして、何かをグレイに伝える。
「……………………………………。」
グレイは、それを聴くと、
「……はっ、畏まりました。しかと、遂行致します。」
一層、深々と頭を下げた。
グレイは退出する際、フードの奥から、鋭い眼光がキラリと一瞬光らせて去った。
その頃のヴェーラング城での
とある夫婦の会話。
サイが少し、興奮気味に話をしていた。
「ネーネリア。本当に余は驚いたぞ。シンが、あそこまで敵の動きを予測するなんてな。」
ネーネリアと呼ばれたのは、サイの妻、王妃の事である。
「まぁ?そうですの?シン様は、深謀の殿方でしたのね。」
「うむ。余も、『武』の一面しか見抜けなかった。これで、シンの予想があたれば、余の友は素晴らしい人財でもあると言う事だ。」
ネーネリアは少し考えてから、
「ならば、陛下は何故、シン様を臣下にお加えされなかったのですか?」
すると、サイは答える。
「あやつを観ていると、ふと、臣下としては勿体無いと思うたのよ。」
「勿体無い?」
ネーネリアの言葉に頷くサイ。
「うむ。勿体無いぞ。ただ忠誠を尽くすのではなく、余の本当の力となって、国を良くして貰う者が必要なのだ。シンとは、単なる忠臣ではなく、余に言うべき事を言える、そんな対等を期待してるのよ。」
陛下は幼少より、文武両道の教育を受け、その対等なる者は居なかった。
作る暇も無かった。
初めてのシンの謁見で、サイは何かを感じたのだろう。
サイ自身も口から「友」と、あの場において、すんなりと出てきた。
何かとは、それは判らない。
だが、サイはシンに心を王室の者以外で、初めて開いた人間と言える。
会議の場においても、シンには『武力』のみの人間と誰しも思っていたのを、『知略』の面を披露した時のサイの慌てた態度や、豪快に笑いとばす在り方は、以前には見られないものだった。
シンの存在は、サイのみに影響を留めなかった。
サラに対してもである。
どんな異性に対しても、無関心であり、健気に兄達を支えようと、武の方面で鍛え上げていた。
前国王による政略結婚の為の縁談も踏み倒すほどの、じゃじゃ馬ぶりであった。
しかし、シンと出会ってから、何故かそれは影を潜め、彼に惹かれているのは、誰しもが認め疑う事は無い。
人たらしと言うのだろうか。
何か、特別なオーラを人々は本能で感じている様であった。
術法の『魅了』とは違う魅了。
彼には、それが備わっている様にも思えた。
「…………で、ございます。して、次の一手は如何なさいましょうか?……我が主。」
主と呼ばれた者は、黒い影を少し揺らして、何かをグレイに伝える。
「……………………………………。」
グレイは、それを聴くと、
「……はっ、畏まりました。しかと、遂行致します。」
一層、深々と頭を下げた。
グレイは退出する際、フードの奥から、鋭い眼光がキラリと一瞬光らせて去った。
その頃のヴェーラング城での
とある夫婦の会話。
サイが少し、興奮気味に話をしていた。
「ネーネリア。本当に余は驚いたぞ。シンが、あそこまで敵の動きを予測するなんてな。」
ネーネリアと呼ばれたのは、サイの妻、王妃の事である。
「まぁ?そうですの?シン様は、深謀の殿方でしたのね。」
「うむ。余も、『武』の一面しか見抜けなかった。これで、シンの予想があたれば、余の友は素晴らしい人財でもあると言う事だ。」
ネーネリアは少し考えてから、
「ならば、陛下は何故、シン様を臣下にお加えされなかったのですか?」
すると、サイは答える。
「あやつを観ていると、ふと、臣下としては勿体無いと思うたのよ。」
「勿体無い?」
ネーネリアの言葉に頷くサイ。
「うむ。勿体無いぞ。ただ忠誠を尽くすのではなく、余の本当の力となって、国を良くして貰う者が必要なのだ。シンとは、単なる忠臣ではなく、余に言うべき事を言える、そんな対等を期待してるのよ。」
陛下は幼少より、文武両道の教育を受け、その対等なる者は居なかった。
作る暇も無かった。
初めてのシンの謁見で、サイは何かを感じたのだろう。
サイ自身も口から「友」と、あの場において、すんなりと出てきた。
何かとは、それは判らない。
だが、サイはシンに心を王室の者以外で、初めて開いた人間と言える。
会議の場においても、シンには『武力』のみの人間と誰しも思っていたのを、『知略』の面を披露した時のサイの慌てた態度や、豪快に笑いとばす在り方は、以前には見られないものだった。
シンの存在は、サイのみに影響を留めなかった。
サラに対してもである。
どんな異性に対しても、無関心であり、健気に兄達を支えようと、武の方面で鍛え上げていた。
前国王による政略結婚の為の縁談も踏み倒すほどの、じゃじゃ馬ぶりであった。
しかし、シンと出会ってから、何故かそれは影を潜め、彼に惹かれているのは、誰しもが認め疑う事は無い。
人たらしと言うのだろうか。
何か、特別なオーラを人々は本能で感じている様であった。
術法の『魅了』とは違う魅了。
彼には、それが備わっている様にも思えた。
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