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トップモデル
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それから1週間後の午後。
「莉帆お姉さん、おはようございます!」
「おはよう、みんな。今日のウォーキングレッスンは、2番のレッスンルームね」
はーい!と元気に返事をして楽しそうに廊下を歩いて行く女の子達を、莉帆は微笑ましく見送った。
オフィスビルでは、毎日モデルの卵達にウォーキングやポージングのレッスンを行っている。
すでに165cmを超えたスラリと手足の長い女の子達は、全員がまだ中学生。
167cmの莉帆が追い抜かれるのも時間の問題だった。
(次元が違うわー。これからまだ背が伸びるなんて、末恐ろしい。9頭身とかになっちゃうんじゃ?)
そんなことを考えながら、女の子達の後ろからやって来た母親達にも挨拶する。
「おはようございます。お疲れ様です」
「莉帆さん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」
さすがはモデルの卵達の母親だけあって、綺麗なマダムばかりだ。
(私、一般的には背が高い方なのに、ここに来るとチビになっちゃう。ガリバー旅行記か?)
そんなことを考えながら、オフィスに戻ろうと廊下を歩き出すと、突き当りにあるエレベーターが到着して扉が開いた。
まさにガリバー旅行記の世界かと思うほど、異次元にスタイルの良い男性が降りてくる。
身長190cm、長い手足に切れ長の涼しい目元。
黒髪に黒い瞳で顔立ちの整った、誰もが認めるトップモデル。
「キャー!禅よ!」
マダム達の裏返った黄色い声が後ろから響いてきた。
禅はそんなマダム達に小さく片手を挙げると、手前のオフィスに入って行く。
「ひゃー!」とマダム達の歓声が更に大きくなった。
「もう、失神するかと思っちゃった」
「空気が、オーラが、輝きが!マイナスイオンがー!」
「今、同じ空間に一緒にいられたこの奇跡を、神様に感謝するわ」
背後で盛り上がるマダム達に苦笑いしつつ、莉帆は禅のすぐ後ろにいた和也に会釈する。
和也も莉帆に頷くと、オフィスに入って行った。
***
「お疲れ様、莉帆ちゃん。禅が来てるわよ」
オフィスのデスクに戻ると、向かいの席の成美が声をかけてきた。
172cmでモデルとしても活動している成美は、30才を過ぎて仕事が激減し、今はプレーイングマネージャーとしてオフィスでの仕事もこなしている。
「お疲れ様です、成美さん。はい、廊下で見かけました」
「珍しいわよね、禅がここに顔出すなんて。社長室に行ったから、面談かしら」
「どうでしょうね?」
所属モデルは定期的に社長と面談があるが、禅ほどのトップモデルともなると、それもパスされている。
(もしかして和也さんが話してた、禅にいい話が来てるって件かな?)
それが一体、何なのか?
今日は、どんな用事で来たのか?
それは莉帆には分からない。
いくら和也とつき合っているとはいえ、仕事に関することは互いに口にしないようルールは守っていた。
他の社員が知らないことは、莉帆も知らない。
こちらから詮索することもせず、莉帆はあくまで成美や他の社員と同じように業務をこなしていた。
***
しばらくすると、奥の社長室のドアがガチャッと開く。
和也が姿を現し、ドアを押さえたまま社長室を振り返る。
「それでは、失礼します」
「身体に気をつけて。がんばってね!禅」
「はい、ありがとうございます」
禅と60代の女性社長のやり取りが聞こえたあと、和也が開けているドアから禅が出て来た。
「お疲れ様です!」
莉帆達社員が一斉に立ち上がって、禅に挨拶する。
「お疲れ様です」
その間を、まるでランウェイのウォーキングのように、禅は颯爽と歩いて行った。
「莉帆お姉さん、おはようございます!」
「おはよう、みんな。今日のウォーキングレッスンは、2番のレッスンルームね」
はーい!と元気に返事をして楽しそうに廊下を歩いて行く女の子達を、莉帆は微笑ましく見送った。
オフィスビルでは、毎日モデルの卵達にウォーキングやポージングのレッスンを行っている。
すでに165cmを超えたスラリと手足の長い女の子達は、全員がまだ中学生。
167cmの莉帆が追い抜かれるのも時間の問題だった。
(次元が違うわー。これからまだ背が伸びるなんて、末恐ろしい。9頭身とかになっちゃうんじゃ?)
そんなことを考えながら、女の子達の後ろからやって来た母親達にも挨拶する。
「おはようございます。お疲れ様です」
「莉帆さん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」
さすがはモデルの卵達の母親だけあって、綺麗なマダムばかりだ。
(私、一般的には背が高い方なのに、ここに来るとチビになっちゃう。ガリバー旅行記か?)
そんなことを考えながら、オフィスに戻ろうと廊下を歩き出すと、突き当りにあるエレベーターが到着して扉が開いた。
まさにガリバー旅行記の世界かと思うほど、異次元にスタイルの良い男性が降りてくる。
身長190cm、長い手足に切れ長の涼しい目元。
黒髪に黒い瞳で顔立ちの整った、誰もが認めるトップモデル。
「キャー!禅よ!」
マダム達の裏返った黄色い声が後ろから響いてきた。
禅はそんなマダム達に小さく片手を挙げると、手前のオフィスに入って行く。
「ひゃー!」とマダム達の歓声が更に大きくなった。
「もう、失神するかと思っちゃった」
「空気が、オーラが、輝きが!マイナスイオンがー!」
「今、同じ空間に一緒にいられたこの奇跡を、神様に感謝するわ」
背後で盛り上がるマダム達に苦笑いしつつ、莉帆は禅のすぐ後ろにいた和也に会釈する。
和也も莉帆に頷くと、オフィスに入って行った。
***
「お疲れ様、莉帆ちゃん。禅が来てるわよ」
オフィスのデスクに戻ると、向かいの席の成美が声をかけてきた。
172cmでモデルとしても活動している成美は、30才を過ぎて仕事が激減し、今はプレーイングマネージャーとしてオフィスでの仕事もこなしている。
「お疲れ様です、成美さん。はい、廊下で見かけました」
「珍しいわよね、禅がここに顔出すなんて。社長室に行ったから、面談かしら」
「どうでしょうね?」
所属モデルは定期的に社長と面談があるが、禅ほどのトップモデルともなると、それもパスされている。
(もしかして和也さんが話してた、禅にいい話が来てるって件かな?)
それが一体、何なのか?
今日は、どんな用事で来たのか?
それは莉帆には分からない。
いくら和也とつき合っているとはいえ、仕事に関することは互いに口にしないようルールは守っていた。
他の社員が知らないことは、莉帆も知らない。
こちらから詮索することもせず、莉帆はあくまで成美や他の社員と同じように業務をこなしていた。
***
しばらくすると、奥の社長室のドアがガチャッと開く。
和也が姿を現し、ドアを押さえたまま社長室を振り返る。
「それでは、失礼します」
「身体に気をつけて。がんばってね!禅」
「はい、ありがとうございます」
禅と60代の女性社長のやり取りが聞こえたあと、和也が開けているドアから禅が出て来た。
「お疲れ様です!」
莉帆達社員が一斉に立ち上がって、禅に挨拶する。
「お疲れ様です」
その間を、まるでランウェイのウォーキングのように、禅は颯爽と歩いて行った。
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