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久我くん、聞いてないんですけどー?!

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「えー?!どどど、どういうことですかー?!」

美鈴ちゃんが、卒倒しそうなくらい仰け反って驚いている。

「華さんが結婚?!しかも、久我くんと?!いつの間に?聞いてないんですけどー!」

「うん、ごめん。こんなはずじゃなかったんだけど…」

「何がどうなって、そうなったんですか?」

「それが、その。かくかくしかじかで、としか…」

「そんなので分かる訳ないですよ!」

…だよね。

「でもまあ、久我くんが華さんを好きなのは知ってましたからね。がんばってアタックしたんですねー、久我くん」

「えっ、そうなの?美鈴ちゃん、知ってたの?」

「あんなになついてたら分かりますよ。前にも話したでしょ?久我くん、華さんしか見てないし、華さんに褒めてもらいたくて仕事もがんばってるって。好きだからこそ、ですよ」

そうなんだ。
私って、ちゃんと愛されてたんだなあ。

そう思うと、なぜだか胸の奥がツンとした。

父さんの為にお見合い結婚を受け入れようとしていた私。

平気だと思ってたけど、やっぱり無理してたんだろうな。  

だって今、久我くんと結婚することになって、ものすごく幸せを感じるから。

「やだ!華さんが乙女の顔してる!かーわいい。恋の力って偉大だわ」

美鈴ちゃん、ほんとだね。
久我くんって偉大だね。

私は込み上げてくる涙をこらえながら、美鈴ちゃんに笑って頷いた。

*****

また桜の季節がやってきた。

久我くんと出逢って1年が経ったこの日。

私は純白のウェディングドレスに身を包み、チャペルの扉の前で父さんと腕を組んでいた。

「華…、綺麗だ。こんな日を迎えられたなんて、父さん感激してもう…」

はいはい。
何も言えねえ、のね。

やがてオルガンの音色が聴こえてきて、扉が大きく開かれる。

私は父さんと一礼してから、バージンロードを一歩一歩、踏みしめて歩く。

「きゃー!華さん、美しい」

美鈴ちゃんが、ひときわ大きく拍手してくれる。

課長達も笑顔で祝福してくれ、私は、どうも、と会釈をして通り過ぎた。

祭壇の前で微笑みながら私を待ってくれているのは、どこかの国の王子様のようなかっこいい久我くん。

これは本当に現実?

父さんが私の手を久我くんに託し、久我くんはしっかりと私の手を握りしめた。

「どうしたの?なんだかホワーンとしてるけど」

「だって、なんだかまだ夢みたいで…」

「大丈夫。キスで起こしてあげるから」

ひえっ!
こんな大勢の人の前で?!

「ダメだからね!」

「どうしてさ。誓いのキスなんだから、皆さんの前でしっかり誓わないと。俺が一生、華を幸せにしてみせるってね」

私は何も言えずに真っ赤になる。

「可愛い、華」

「ちょっと、からかわないで。私の方が4つも年上なんだからね?」

「またそれか。恋のイロハは全部俺が教えてあげたのに」

ヒーー!!
こんな神聖な場所でなんてことを!

「まだまだこれからたくさん教えてあげるからね」

「ちょっと、いい加減に…」

すると、ゴホン!と牧師様の咳払いが聞こえてきた。

「あのー、そろそろ始めても?」

「は、はい!すみません」

慌てて正面に向き直る。

厳かな雰囲気の中、私は久我くんと生涯の愛を誓い合った。

指輪を交換し、久我くんが私のベールをそっと上げる。

「華、すごく綺麗だ」

「ありがとう。久我くんもとっても素敵」

これはやっぱり夢の世界?
こんなにかっこいい人と結婚してもいいの?

じっと見つめていると、久我くんがクスッと笑う。

「また夢見てる。そろそろ起きて、俺の眠り姫」

そう言うと右手で私の耳の後ろを支え、うっとりするほど優しいキスをしてくれた。

「これからも、たくさん華に恋をするよ」

「私も。もっと久我くんを好きになっていく」

「俺達の人生は、この先もずっとバラ色だな」

「ふふっ、なんかキザなの」

「なんだと?!余裕ぶってるとキスするよ?」

そしてまたチュッと口づける。

「あー、ゴホン!そろそろいいかね?」

牧師様が再び咳払いする。

「はい、すみません!」

私達は慌てて正面を向き、こっそり顔を見合わせて微笑んだ。

幸せな日々は、まだ始まったばかり。

でも…?

久我くんがこんなに毎日、私に甘く愛をささやく人だったなんて…
二人切りだと、片時も私を離してくれないなんて…

久我くん、聞いてないんですけどー?!

♡おしまい♡
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