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夜明け前
prologue2
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【prologue2】
----Death has no tomorrow----
朝が来た。
変わり映えのない日々を過ごす。
ブログを見た人がお見舞いに来てくれた。
よくあることだ。
父は個人情報の保護より拡散を求めていたから。
感染症の類いではないし、面会を謝絶することは出来ない。
ただ面会はあまり好きではない。
疲れてしまう。
基本的に来てくれる人は良い人たちばかりなのだろう。
今日来てくれた人たちは、僕を見て「かわいそう」だと言った。
「かわいそう」と言われても、僕は情報でしか病室以外の世界を知らないから反応に困ってしまうのだ。
ただ、僕は自分が動画サイトで見た動物園のパンダに見えた。
客寄せパンダ。
いるだけで良いんだと。
それも彼らからしたら「かわいそう」なことなのだろうが、僕は自分の存在価値を再確認出来て安心した。
朝が来た。
今日は参議院だか衆議院の選挙の日だ。
父が演説してる様を動画サイトで見た。
画面の中の父は、必死な形相で社会的弱者の救済を叫んでいた。
そうして僕のことを例に挙げて涙を零していた。
周りにはそんな父を見て、狂気に包まれたかのような熱気を帯びた群衆が、口々に父を支持する表明を叫んでいた。
僕は役に立っていたみたいだ。
父は母のことを自分の人生の汚点だと前に言っていた。
母が作った汚点を僕で少しでも綺麗に出来たなら、それは凄く幸せなことだと思う。
朝が来た
父が中核をなしている政党が選挙で大勝したらしい。
その影響でテレビが僕に取材に来た。
そして3年ぶりくらいに父に会った。
カメラを向けられて戸惑っている僕に、くしゃくしゃの笑みで頭を撫でてくれる。
カメラマンの人も優しい人だった。
だからカメラマンの人が
「保興さんにとって、ヒナタくんはどういう存在ですか?」
という質問をした時に
「私の生きる意味です」
と返した父に尊敬と親しみの眼差しを向けていた。
僕は嬉しかった。
リポーター?と思われる芸能人は少し変な人だった。
30を少し過ぎたくらいの女性で、2,3年前は美人枠~としてテレビに出ていた気がする。
今はトーク枠に転換したとかなんだとか。
その人が、父に
「ヒナタくんと二人でお話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」
と言った。
父は少し考えた後にうなづいて、カメラマンの人やスタッフの人を連れて病室を離れた。
スタッフの人たちは僕に憐れみの視線を向けていた。
カメラマンの人だけは父の背についてキラキラした目をしていた。
彼らが出て行った直後のことだ。
ずっとニコニコして優しげだったリポーターさんが豹変した。
頰は赤く染まり、息遣いが荒くなっていた。
リポーターさんは、僕の側まで来て耳元で囁いた。
「私、君みたいな可愛い子は大好きなのよ」
「特に泣き叫ぶ顔が大好き。可愛くて綺麗な顔が苦痛に歪むの」
「君は今までで一番タイプかも。一番苦しめたいわ」
そう言うと、僕の口を押さえて鼻を摘んだ。
息が出来なかった。
苦しくて手足を動かそうとするが、それは酷く弱々しかった。
意識が飛びそう…というところで解放された。
彼女は満足そうに舌舐めずりしながら
「ああ、良いわぁ!君って最高ね!」
と言って今度は、僕の右手を取って指を反対方向に曲げようとしたり、爪をボールペンで刺したりして遊び始めた。
右手、左手、右足、左足。
そしてお腹が殴られたり、また息が止められたり、靴を口の中に押し込められたりした。
「病気で辛くて苦しんでる子っていくらで売ってるのかしら?私新たな性癖に目覚めそうよ」
そう言って、また殴られた。
蹴られた。
見えるところは一切手を出されていないのが、薄ぼんやりした意識で分かった。
一通りの暴力が済むと満足したのか、僕の体を抱き起こして、僕の頭を胸の中にかき抱く。
「あぁ、辛かったね。もう大丈夫だよ。よーしよし」
そう言って涙を流しながら僕の頭を撫でてくれた。
するとそれを見計らったかのように父達が帰って来た。
カメラは涙を流しながら僕を抱きしめるリポーターさんと、僕を撮り収めた。
テレビの取材陣を見送った後、父が帰り際に
「ふん、出来損ないのゴミが私の役に立てていることを光栄に思え」
と僕に言った。
それがどうしようもなく、誇らしかった。
欠陥品の僕でも、大政治家の父の役に立てているって凄くステキなことだから。
朝が来た。
テレビ取材陣の一件があってから、リポーターさんや彼女の友達らしき人が病室に遊びに来るようになった。
彼女たちの遊びは痛くて辛いけど、僕という欠陥品にどういう形であれ執着してくれていることが純粋に嬉しかった。
朝が来た。
最近、眠たい。
いやすぐ眠たくなるんだ。
遊びが増えて来たから疲れが溜まっているのかもしれない
朝が来た。
なんと朝を一回飛ばしていた。
1日丸々寝ていたらしい。
看護婦さんが、泣きそうな表情で僕を見ていたけどどうしてだろう?
あと1日丸々寝ていたはずなのに、またすぐ眠くなってしまう。
朝が来た。
起きたが眠かったのですぐ寝た。
朝が来た。
起きたけど、眠かったのですぐに寝た。
朝が来た。
起きた直後に意識が飛んで寝てしまった。
朝が来た。
目を開けようとする。
力が入らなかった。
寝ぼけているのかもしれない。
手に力を入れようとして、力の入れ方が分からなくなった。
意識が朦朧としている。
病室には誰もいない。
なんだが眠たいんだけど、強い力で引っ張られているようなそんな気がする。
抗う力もないし、そのまま引っ張らていくことにした。
僕の意識は深い闇に沈んだ
----Death has no tomorrow----
朝が来た。
変わり映えのない日々を過ごす。
ブログを見た人がお見舞いに来てくれた。
よくあることだ。
父は個人情報の保護より拡散を求めていたから。
感染症の類いではないし、面会を謝絶することは出来ない。
ただ面会はあまり好きではない。
疲れてしまう。
基本的に来てくれる人は良い人たちばかりなのだろう。
今日来てくれた人たちは、僕を見て「かわいそう」だと言った。
「かわいそう」と言われても、僕は情報でしか病室以外の世界を知らないから反応に困ってしまうのだ。
ただ、僕は自分が動画サイトで見た動物園のパンダに見えた。
客寄せパンダ。
いるだけで良いんだと。
それも彼らからしたら「かわいそう」なことなのだろうが、僕は自分の存在価値を再確認出来て安心した。
朝が来た。
今日は参議院だか衆議院の選挙の日だ。
父が演説してる様を動画サイトで見た。
画面の中の父は、必死な形相で社会的弱者の救済を叫んでいた。
そうして僕のことを例に挙げて涙を零していた。
周りにはそんな父を見て、狂気に包まれたかのような熱気を帯びた群衆が、口々に父を支持する表明を叫んでいた。
僕は役に立っていたみたいだ。
父は母のことを自分の人生の汚点だと前に言っていた。
母が作った汚点を僕で少しでも綺麗に出来たなら、それは凄く幸せなことだと思う。
朝が来た
父が中核をなしている政党が選挙で大勝したらしい。
その影響でテレビが僕に取材に来た。
そして3年ぶりくらいに父に会った。
カメラを向けられて戸惑っている僕に、くしゃくしゃの笑みで頭を撫でてくれる。
カメラマンの人も優しい人だった。
だからカメラマンの人が
「保興さんにとって、ヒナタくんはどういう存在ですか?」
という質問をした時に
「私の生きる意味です」
と返した父に尊敬と親しみの眼差しを向けていた。
僕は嬉しかった。
リポーター?と思われる芸能人は少し変な人だった。
30を少し過ぎたくらいの女性で、2,3年前は美人枠~としてテレビに出ていた気がする。
今はトーク枠に転換したとかなんだとか。
その人が、父に
「ヒナタくんと二人でお話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」
と言った。
父は少し考えた後にうなづいて、カメラマンの人やスタッフの人を連れて病室を離れた。
スタッフの人たちは僕に憐れみの視線を向けていた。
カメラマンの人だけは父の背についてキラキラした目をしていた。
彼らが出て行った直後のことだ。
ずっとニコニコして優しげだったリポーターさんが豹変した。
頰は赤く染まり、息遣いが荒くなっていた。
リポーターさんは、僕の側まで来て耳元で囁いた。
「私、君みたいな可愛い子は大好きなのよ」
「特に泣き叫ぶ顔が大好き。可愛くて綺麗な顔が苦痛に歪むの」
「君は今までで一番タイプかも。一番苦しめたいわ」
そう言うと、僕の口を押さえて鼻を摘んだ。
息が出来なかった。
苦しくて手足を動かそうとするが、それは酷く弱々しかった。
意識が飛びそう…というところで解放された。
彼女は満足そうに舌舐めずりしながら
「ああ、良いわぁ!君って最高ね!」
と言って今度は、僕の右手を取って指を反対方向に曲げようとしたり、爪をボールペンで刺したりして遊び始めた。
右手、左手、右足、左足。
そしてお腹が殴られたり、また息が止められたり、靴を口の中に押し込められたりした。
「病気で辛くて苦しんでる子っていくらで売ってるのかしら?私新たな性癖に目覚めそうよ」
そう言って、また殴られた。
蹴られた。
見えるところは一切手を出されていないのが、薄ぼんやりした意識で分かった。
一通りの暴力が済むと満足したのか、僕の体を抱き起こして、僕の頭を胸の中にかき抱く。
「あぁ、辛かったね。もう大丈夫だよ。よーしよし」
そう言って涙を流しながら僕の頭を撫でてくれた。
するとそれを見計らったかのように父達が帰って来た。
カメラは涙を流しながら僕を抱きしめるリポーターさんと、僕を撮り収めた。
テレビの取材陣を見送った後、父が帰り際に
「ふん、出来損ないのゴミが私の役に立てていることを光栄に思え」
と僕に言った。
それがどうしようもなく、誇らしかった。
欠陥品の僕でも、大政治家の父の役に立てているって凄くステキなことだから。
朝が来た。
テレビ取材陣の一件があってから、リポーターさんや彼女の友達らしき人が病室に遊びに来るようになった。
彼女たちの遊びは痛くて辛いけど、僕という欠陥品にどういう形であれ執着してくれていることが純粋に嬉しかった。
朝が来た。
最近、眠たい。
いやすぐ眠たくなるんだ。
遊びが増えて来たから疲れが溜まっているのかもしれない
朝が来た。
なんと朝を一回飛ばしていた。
1日丸々寝ていたらしい。
看護婦さんが、泣きそうな表情で僕を見ていたけどどうしてだろう?
あと1日丸々寝ていたはずなのに、またすぐ眠くなってしまう。
朝が来た。
起きたが眠かったのですぐ寝た。
朝が来た。
起きたけど、眠かったのですぐに寝た。
朝が来た。
起きた直後に意識が飛んで寝てしまった。
朝が来た。
目を開けようとする。
力が入らなかった。
寝ぼけているのかもしれない。
手に力を入れようとして、力の入れ方が分からなくなった。
意識が朦朧としている。
病室には誰もいない。
なんだが眠たいんだけど、強い力で引っ張られているようなそんな気がする。
抗う力もないし、そのまま引っ張らていくことにした。
僕の意識は深い闇に沈んだ
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