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本編
番外編『魔王サクラさんと真奥サクラさん』
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小さい頃から少女は人とは違っていた。自分とは違う誰かの声が一日中話しかけてくる。
幼い彼女はひとりでに話す不思議な子だと思われていたが、大きくなってから心の中で話す事を覚えた。これは、そんな十六歳の少女、真奥サクラのちょっとしたお話である。
むかーしむかし。ん?いや、ほんの数ヶ月前じゃねーか。
現実では絶対ないようなサラサラの桃色の髪をしたサクラは喫茶店で勉強をしていた。この喫茶店はよく訪れ、いつも学校の復習をする。
(うん、やっぱりここの紅茶は美味しいんだよね)
(おい、サクラ。紅茶を飲む前にここの単位を直せ)
魔王さんの指摘に自分の回答を確認してみると
(あっ!cmがmになってる…。ありがとう、魔王さん)
なんだか、顔も知らない魔王さんがドヤ顔をしている様子が頭の中に浮かび上がった。
「えぇ!?今週末、お兄ちゃん予定あるの?」
突然、店内に見知らぬ少女の叫び声が響きわたった。少女の向かいに座る兄らしき人がそれに答えた。
「あるぞ。週末は機動兵器ガロンの新作映画を見るからな」
後ろからの大声に思わず振り返ったサクラに魔王さんは、知り合いなのかと疑問を投げかけた。
(あの女の子は知らないけど、男の人は……どこかで見たことあるような……?)
(まあいい。早く宿題を続けろ)
「えー…。私、行きたいトコあったんだけどなー」
「どうせ、タピオカなんちゃらでも飲むんだろ?」
「違うよ!今度はナタデココドリンクなの。ちょうどカップル割引ってのがあってさ」
「それに一緒に行けってか?本物の彼氏を連れていけば良いじゃん」
(ええと、この線分がこの点で交わるから…)
「うっさい、童貞。どうせ、私は彼氏なんていませんよ」
「ど、どどどど童貞ちゃうわ!撃滅の刃ぐらいしか知らない薄っぺら中学生のくせに!」
「はあ?撃滅の刃は一番面白いんですぅ」
(あっ、ここで三平方の定理が使える……のかな?)
「いや、確かに面白いけど一番じゃあないだろ。一番はやっぱりガロンだって」
「えぇ?あんな暗い話のアニメが?ないない」
「ああん!?てめぇ、この『ガロン ガールズ』でも目に入らぬかぁ!」
「ぎゃあああああ!怖いぃぃぃぃ!く、首が360度回ってるぅぅ!?」
(あっ、また単位をまちがえてる。ああもう)
ガタン!
サクラは勢い良く立って、勘定をして店を出た。
(なんだサクラ?やはりうるさかったのか?)
(いや、そうじゃなくて…。もうすぐユリキュアの時間だから…)
(なに、ユリキュアだと!?もうそんな時間か、早く帰るぞ!)
魔王さんは早くユリキュアが見たいのか、早く早くと催促してくる。録画は一応しているのだが。
そんな時、道路で小さな女の子が倒れてしまった!すると横から、明らかに法定速度をぶっちぎったトラックが!
うん、親の顔より見た異世界系テンプレである。おい、もっと親の顔見ろよ。
助けずにはいられないサクラは走って女の子を回収して向こう側へ渡ろうとするも、猛スピードトラックが………いや、普通に自動ブレーキで止まったわ。かがくのちからってすげー!
サクラが安心したのもつかの間、突如謎の力で膝から崩れ落ちてしまう。そのまま倒れて、意識が途切れる。
(ふむ、やはり運命は変えられぬか。ではようこそサクラ。異世界旅行へ)
幼い彼女はひとりでに話す不思議な子だと思われていたが、大きくなってから心の中で話す事を覚えた。これは、そんな十六歳の少女、真奥サクラのちょっとしたお話である。
むかーしむかし。ん?いや、ほんの数ヶ月前じゃねーか。
現実では絶対ないようなサラサラの桃色の髪をしたサクラは喫茶店で勉強をしていた。この喫茶店はよく訪れ、いつも学校の復習をする。
(うん、やっぱりここの紅茶は美味しいんだよね)
(おい、サクラ。紅茶を飲む前にここの単位を直せ)
魔王さんの指摘に自分の回答を確認してみると
(あっ!cmがmになってる…。ありがとう、魔王さん)
なんだか、顔も知らない魔王さんがドヤ顔をしている様子が頭の中に浮かび上がった。
「えぇ!?今週末、お兄ちゃん予定あるの?」
突然、店内に見知らぬ少女の叫び声が響きわたった。少女の向かいに座る兄らしき人がそれに答えた。
「あるぞ。週末は機動兵器ガロンの新作映画を見るからな」
後ろからの大声に思わず振り返ったサクラに魔王さんは、知り合いなのかと疑問を投げかけた。
(あの女の子は知らないけど、男の人は……どこかで見たことあるような……?)
(まあいい。早く宿題を続けろ)
「えー…。私、行きたいトコあったんだけどなー」
「どうせ、タピオカなんちゃらでも飲むんだろ?」
「違うよ!今度はナタデココドリンクなの。ちょうどカップル割引ってのがあってさ」
「それに一緒に行けってか?本物の彼氏を連れていけば良いじゃん」
(ええと、この線分がこの点で交わるから…)
「うっさい、童貞。どうせ、私は彼氏なんていませんよ」
「ど、どどどど童貞ちゃうわ!撃滅の刃ぐらいしか知らない薄っぺら中学生のくせに!」
「はあ?撃滅の刃は一番面白いんですぅ」
(あっ、ここで三平方の定理が使える……のかな?)
「いや、確かに面白いけど一番じゃあないだろ。一番はやっぱりガロンだって」
「えぇ?あんな暗い話のアニメが?ないない」
「ああん!?てめぇ、この『ガロン ガールズ』でも目に入らぬかぁ!」
「ぎゃあああああ!怖いぃぃぃぃ!く、首が360度回ってるぅぅ!?」
(あっ、また単位をまちがえてる。ああもう)
ガタン!
サクラは勢い良く立って、勘定をして店を出た。
(なんだサクラ?やはりうるさかったのか?)
(いや、そうじゃなくて…。もうすぐユリキュアの時間だから…)
(なに、ユリキュアだと!?もうそんな時間か、早く帰るぞ!)
魔王さんは早くユリキュアが見たいのか、早く早くと催促してくる。録画は一応しているのだが。
そんな時、道路で小さな女の子が倒れてしまった!すると横から、明らかに法定速度をぶっちぎったトラックが!
うん、親の顔より見た異世界系テンプレである。おい、もっと親の顔見ろよ。
助けずにはいられないサクラは走って女の子を回収して向こう側へ渡ろうとするも、猛スピードトラックが………いや、普通に自動ブレーキで止まったわ。かがくのちからってすげー!
サクラが安心したのもつかの間、突如謎の力で膝から崩れ落ちてしまう。そのまま倒れて、意識が途切れる。
(ふむ、やはり運命は変えられぬか。ではようこそサクラ。異世界旅行へ)
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