上 下
77 / 77
第四章 砂漠の遺跡

第七十七話 古代の船

しおりを挟む
「これって、壁画?」

 エイル、ルルア、モンドさんの三人は壁画がある洞窟へ丁度吹き飛ばされていた。
 エイルはランタンを鞄から出し、出口を探して歩いていると、この壁画がある部屋へと出たのだった。

「ここにケンジとレアとマブルさんがいるはずなんですが……」
「ふえぇぇ……、おじいちゃ~ん! どこ~!!」

 皆んなフランの事を気にしていたが、特にルルアはフランの事を弟のように思っていたので、ショックが大きい。
 洞窟の中では俯き歩いて静かだったが、マブルさんがいるはずの壁画部屋に到着すると、涙腺が崩壊してしまった。

「ルルア……、泣かないで……、大丈夫、大丈夫よ……」

 エイルはルルアを抱きしめて頭を撫でているいる。

「ふむ、確かにこの場所じゃが、マブル達は何処にいるのか……」

 モンドさんは二人を見つめた後、壁画を眺めていると、洞窟の奥から誰かが走って来る音が聞こえる。

「ルルアとモンドさんは下がってください」

 エイルは魔導銃を向かってくる方向に構えた。
 その手は震えている。
 ヴァルスケルハイトのドレオスが追って来たのでは無いかと不安がよぎる。
 その暗い洞窟を駆け抜けてきたのはアン。
 アンはフランを背負っている。

「アン! それに……フラン!?」
「ふぇ……、フラン? フラン君!!」

 ルルアはアンの元へ走る。

「フラン君! フラン君は大丈夫なの!?」
「……わからない……、でもこのままだと……」
「そんな……」

 フランはアンの背中で目を覚ます事は無く衰弱している。
 アンはフランを背負ったまま、ルルアは涙を拭き壁を調べる。
エイル達は壁画の部屋に秘密の入口が無いか皆んなで調べている。

「モンドさん! 本当にそんな入口あるんですか!?」
「マブル達がこの部屋にいない以上、あるはずじゃ」
「お爺ちゃん達、もう戻っちゃったんじゃ無いですか……?」
「マブルにかぎってそれは無いじゃろう。 やはりこの魔法陣が怪しいと思うが……」

 エイルが壁を手探りで調べていると、急に壁に光りの扉が現れた。

「きゃ!」
「エイルさん、どうしました!?」
「急に扉が……」

 その中から俺が顔を出す。

「おっと……、……エイル? やっぱりエイルか! そっちはルルアにアン、それに背負ってるのはフランか?」

 アンに背負われているフランはピクリとも動かない。

「ゲン゛ジざ~ん゛……」

 ルルアが泣きながら抱きついて来る。

「ルルア、どうした?」
「フラン君があ~~!」
「フランがどうした?」
「死んぢゃう~~!」
「エイル、何が合ったんだ?」
「詳しい話しは後回しです! 早くフランをどうにかしないと!」
「よ、よし、それならこっちに!」

 船まで行けばマブルさんもレアもいる。 救護室位はあるはずだ。

「先にフランを連れて行くからエイル達は後から来てくれ!」

 アンからフランを受け取り背負い直すと、俺とアンは先に船まで走った。


「フランはどうだ? 治せるか……?」

 急いで船まで戻り、船の中にある救護室で調べてもらうが……。

『この船の医療でもこの方は治せそうもありません』
「そんな、 どうにかならないのか!?」
『……調べたところによると、この方も人造人間のようですが、体は既に崩壊に向かっています。 回復の魔導具や魔法でも無理でしょう。 旧型なので治せる見込みはありません』
「フランが人造人間? 初めて聞いたぞ」
「やはり……」
「レアは知っていたのか?」
「知りませんが、そんな感じはしていました。 しかし……、旧型は一つの能力に突出してはいますが、再生能力は無かったはずです。 フランのこの状態は能力を過剰に使ったとしか……」
「どうにかならないのか!?」
『……一つだけ方法はあります』
「方法があるなら頼む!」
『しかしこの方法では、このフランと言う方が無くなるかも知れません』
「どう言う事だ?」
『一度体を再構築し、精神を人工知能である私と一体化します。 その時、フランの精神が耐えられなければフランは消えてしまいます。 精神が消えれば肉体も滅びます』
「他に方法は無い……のか……?」
『はい』

 危険な賭けだが……、助かる道がそれしか無いから……。

「やってくれ。 このまま死んでしまうのを待つよりはいい!」
『かしこまりました』

 フランが寝ているカプセル型のベッドに蓋がされ、中が見えない状態となる。
 その後、エイル達が船のある部屋に辿り着きロープで引き上げた。

『初めまして皆さん』
「はえーー……、なんか……凄い……」
「このような船があるとは……」
「ケンジさん! フラン君は? フラン君は?」

 ルルアにフランの説明をすると真っ先に救護室へ向かった。
 モンドさんはマブルさんの元へ。
 残ったエイルとアンに地上で何が合ったのかを聞く。

「そうか……、ヴァルスケルハイトに……」
「フランが守ってくれなかったらやられてたと思う。 でもアンはどうやってフランを助けたの?」
「……あの時、吹き飛ぶフランに向かってスライムを紐状にして引っ張った……」
「よくやったよアン」
「……褒めて褒めて……」

 アンを褒めつつ、一度皆んなに集まってもらう。

「これから俺とレアはこの先にあるって言う塔に向かう。 フランの事はルルアに任せるよ」
「うん! 任せて!」
「……私も行く?」
「アンはマブルさん達を頼む」
「……わかった」
「ケンジさん早く戻って来て下さい」
「ああ、フランの事も心配だからな」

 フランの治療に手伝える事が無いので、俺とレアは塔へ向かう。
 マブルさんとモンドさんはまた船の中を調べに行った。
 ルルアはフランの救護室へ。
 アンはとりあえずルルアに着いて行く。

 準備が出来たから塔へ向かいたいが……、どうやってここから出るか……。

『こちらをお使い下さい』

 案内された場所はこの船の格納庫。 そこにはバイクのような乗り物と、大きな鉄の塊のような乗り物まである。

『こちらの乗り物なら砂漠を移動するのに便利だと思います』

 バイクのような乗り物の電源が入る。
 これに乗れってことか?
 
「これ、どうやって動かすんだ?」

 生前はバイクなんて乗った事も無いので、動かし方がわからない。

「ご主人様、私にお任せください」
「レアは動かせるのか?」
「はい、知識はあります」
「それじゃ頼む」

 その乗り物にレアと二人乗りで座ると格納庫のハッチが開く。

『この先は危険ですのでお気をつけて』

 船は船首が下に沈み砂に埋まって傾いている。
 そのため丁度格納庫が天井に向いているのでバイクの乗り物に座ると、勝手に勢い良く射出される。

「ご主人様! しっかり捕まっていて下さい!」
「うわああ!」

 流れ落ちて来る砂に突撃するとレアはスロットルを全開にし、砂の中を進み地上へ出た。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです

22話
 手回しが早い^^;

解除
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです

20話
 ロイさんの士気の元→ロイさんの指揮の元 かな?

かなちょろ
2024.09.30 かなちょろ

 誤字指摘ありがとうございます。
 早速直します!

解除
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです

12話
 ヤキモチ(笑)

かなちょろ
2024.09.23 かなちょろ

どっちに対してのヤキモチでしょうね?
両方かな?

解除

あなたにおすすめの小説

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。