黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第四章 砂漠の遺跡

第七十六話 遺跡の船

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 暗い部屋に辿り着いた俺達は、手元の明かりで中に入る。
 突然、部屋の明かりが着くとそこには……。

「こ、これは……、これはなんじゃーー!!」
「す、凄い……、デカい……」
「これは……、なんでしょう?」

 明かりに照らされているのは、半分砂に埋まっているとてつもなく大きな船の様な物だった。

「これは壁画で見た船なんでしょうか?」
「わからない……」
「と、とりあえず調べるぞ! 早くせんか!」

 マブルさんは大興奮。 勿論俺も大興奮。 この異世界にこんな物があるなんてな……。

「ううむ……、砂に埋まっている部分もあるが全長は大体、二百二十~二百四十ラージュってとこかの。 装甲は……、これも見た事の無い材質じゃな……、しかも錆が一切無いとは……、どこからか中に乗り込めないかのぉ……」

 このデカい船の入り口を探すが、なかなか見つからない。

「ご主人様、こちらに来て見てください」

 レアの言う場所を見上げると、高い位置に入口らしい場所がある。 

「あんな所、届かないぞ」

 上に上がる方法を探して一日経ってしまう。
 マブルさんは夕食や睡眠もずっとこの船を調べているが、もう帰らないと迎えの船が来て帰ってしまうのだが……。
 マブルさんにその事を伝えるが、「かまわん、かまわん」と船を調べる事に夢中だ。

 紐か何かが有れば、上まで上がれるかも知れないな……。
 紐などを探していると足元が急に揺れ、天井から砂がサラサラと落ちて来る。

「なんじゃ?」
「地震か?」
「いえ、地上で何かあった様ですね」

 地上で何が起こっているんだ?
 わからないが砂の落ちる量が多くなって来た。 部屋が砂で埋まる前に早く上に上がる方法を見つけないと……。

 更に地上での振動が強くなると、天井が一部崩れ照明が落ちて来る。

「危ない!」

 マブルさんを落ちて来る天井の部品から守っていると、丁度良く金属の柱が傾き船の入口付近にぶつかり止まった。
 あの柱を登っていけば入口に辿り着きそうだな。
 マブルさんをレアに任せ登る。

 入口らしき場所に辿り着き、これまでと同じ様に手を当ててみると、ガコンッ! と重い音を立てて扉が開いた。

「扉が開いたから入ってみる! ロープでもあったら垂らすから待ってて下さ~い!」
「わかった! 早めに頼むぞい!」

 船内に入ると入口の扉が閉まってしまう。 でも船内の通路に照明が点る。
 何処に行けば良いかと通路を見ていると、船内に放送が入る。

『お待ちしておりました。 どうぞこちらに』

 誰の声だ?

「誰かいるのか!?」

 返事は無い。
 ただ照明が通路を照らす。
 明かりがついている方へ進むと操舵室の様な場所に着いた。
 中央に球体が浮かび上がると、その球体が話し始める。

『改めて自己紹介致します。 私はこの船の全てを管理している人工知能です』
「人工知能……、それじゃこの船を動かせるのか?」
『ケンジ様がその段階ではまだメイン部分のロックは外せ無いので無理です』
「俺がその段階? パワーアップが足り無いって事か?」
『そうです』
「でも、このヘイトルーガには塔が無いんだろ? 他の国でパワーアップしてこいと?」
『いえ、ここヘイトルーガにも塔はあります』
「あるの? 何処に?」
『この岩場を越えた先の場所です』
「そんな所に……、……わかった、行ってみるけど、その前に下にいるレアとマブルさんを入れてあげられないか?」

 下は危険だからな。

『普通の人間は許可出来かねます。 しかし、彼は力になっていただけそうなので、乗船を許可します』
「ありがとう、助かるよ。 それでロープとか無いかな?」
『ご案内します』

 人工知能さんは船内の照明でロープが置いてある部屋に案内してくれた。

「マブルさん! ロープを体に巻き付けて下さい! 持ち上げますから!」
「うむ。 準備出来たぞい!」
「それじゃ、持ち上げますよ!」

 レアは小さい猫になりマブルさんの肩へと乗り、一緒に持ち上げた。


「……お……」
「「お?」」

 船内の操舵室まで連れてきたマブルさんは一言だけ言うと、動きが止まった。

「おおおおおおっ!! なんじゃこれはーー!!」
『ここは船のメインブリッジとなります』
「凄い! 素晴らしい!」

 マブルさんは大興奮して、あちこちを見て回る。
 一つを見てはこの船の人工知能に聞いている。
 俺の声なんて今は聞こえないだろうな……。

「なあ、この船はなんなんだ?」
『この船は今より遥か古代に建造された魔導飛空艦まどうひくうかん【リュビナイト】です』
魔導飛空艦まどうひくうかん【リュビナイト】?」
「恐らく古代の大戦で使用もしくは建造された船だと思います」

 俺の肩に乗ってきたレアが言う。

「ん? まてまて! いま飛空艦と言ったか!?」
『はい』
「もしかしてこの船はマナの中を飛べると言う事かの?」
『はい、そのように建造されております』
「マブルさん、マナってなんですか?」
「マナはそうじゃの、この空気中に漂っておる魔力の源じゃよ。 一部の魔導法術機ガルファーもマナで動いておる物もあるし、魔生獣もマナの中で進化したと言われておるな」

 この空気中に……。
 そういや思い出すとマナって昔ゲームでも聞いた事があるような……?

『マブル様、一度こちらを見て頂きたいのでご案内いたします』
「おお、わかった、何処でも行くぞい」
『ケンジ様、レア様、お二人はこちらに宜しいでしょうか?』

 マブルさんと別々に案内をされた。

「ここは?」
『こちらはこの魔導飛空艦まどうひくうかん【リュビナイト】の心臓部です』

 案内された場所には操舵室に合った物より更に巨大な機械やパイプがあり、中心には球体の物が浮かんでいる。

『ケンジ様がもう一段階パワーアップして頂くと、ここにマナが溜まります。 それでやっと魔導飛空艦まどうひくうかん【リュビナイト】は動く事が可能となります』

 成程、早くパワーアップしてこいって事か?

「確かヘイトルーガの塔は岩場の先にあるって言ってたよな?」
『はい、そうです』
「それなら、レアと行ってくるからマブルさんは任せて良いか?」
『はい、お任せください。 それと……、その前に壁画の場所にお仲間が来ているようです。 あそこはケンジ様でなければ開きませんので、お迎えに行かれては如何ですか?』

 仲間? …………まさか……。

 俺は壁画の所に急いだ。
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