黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第四章 砂漠の遺跡

第七十二話 四人の決断

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 俺、レア、マブルさんがヘイトルーガを出て少し前の話し。

「ねぇねぇ、お姉ちゃん達」
「なに?」
「どうしたの?」

 ベッドで横になりながら同じ部屋で座っているエイル、ルルアに話しかけている。

「ケンジお兄ちゃん達の後を着いて行かなくていいの?」

 そう話すのは少し前まで風土病で熱を出していたフラン。

「そうね、フランの熱も下がったしケンジを追いかけても良いんだけど」
「無理はしちゃダメですよ」
「もう治ったし平気だよ。 皆んなで行けば魔生獣だって怖くないし」
「でもねえ……」
 
 フランの提案に少し悩んでいるエイル。

「……話しは聞かせてもらった……」

 いつの間にか部屋に入って来ているアンが、腕を組んで扉の前にいる。

「……フランも良くなったし、私もいる。 二人もそこそこ戦える……、これなら大丈夫」

 アンは親指を立ててサムズアップしている。

「ケンジさん達が帰って来るまで待ちませんか?」

 ルルアは言われた通り、待っている選択をしたようだが、そんなルルアにエイルは甘い言葉で語りかける。

「ルルア~、そんな事言って良いの? ケンジたちが向かったのって遺跡よ遺跡、古代遺跡。 何か良いお宝が見つかるかも知れないよ」
「ゔっ……」
「そうだよルルアお姉ちゃん。 僕もう平気だし、お兄ちゃんの所に行こうよ」
「……そう、お宝……、そしてケンジに会える……」
「……う~ん……、そうだね、レアさんにも会いたいし、行ってみちゃおっか?」
「うん! 決定だね」

 ルルアはエイルの甘い誘惑に負けてしまい、全員の意見が一致したので、エイル、ルルア、アン、フラン達はケンジ達の後を追うために旅立つ準備を始めた。

「まずは、ファブルの町に行くために船のチケットを買わなくちゃ」
「エイルさん、もうジルがあんまり無いよ?」
「それなら僕が稼ごうか? 僕可愛いから直ぐにジルなんて稼げるよ」
「「それは駄目! です!」」

 フランの提案はエイルとルルアに即却下された。

「……私が買う?」

 暗殺者のアンは元々ジルを使うタイプでは無いので、それなりの蓄えがあるようだが……。

「大丈夫。 私に任せて! これでもゴールドのガルなんだから!」

 エイルはぷにっとした二の腕を見せる。

「それでどうするんですか?」
「ガル支部で依頼を受けます! ゴールドだしそれなりの依頼を受けれるはず!」

 エイルは腰に手をやり胸を張る。

「わかりました。 私達も協力します!」
「大変な依頼だったら、宜しくお願いします」

 ルルア達の協力を経て、船のチケットを手に入れる為に依頼を受ける事にする。

「ここで受けられるんですよね?」
「そうよ……、こんにちは~」

 受付の人に声をかける。

「ようこそ、ガル支部へ。 ご依頼ですか?」
「はい。 ゴールドランクで受けられる依頼ありませんか?」
「ゴールドですか!?」

 受付の男性はランクを確認する。

「確かにゴールドですね……、しかも色々やってますね……。 これなら……と、これなんてどうですか?」

 出してきた依頼は【サンドスコーピオンの針 三つ】と言う依頼だ。

「報酬は針一つにつき三千ジルか……、うん、これなら良いかな。 で、サンドスコーピオンって強いの?」
「強いですよ! サンドスコーピオンの事知らないで依頼受けたんですか!?」
「私ここに来たばかりだから知らないけど、報酬的に強いんだろうな~、ってのはわかるけど、どんな魔生獣なの?」
「サンドスコーピオンは砂漠に出ます。 砂の中に潜っていて、いきなり襲って来る時もあります。 そして硬い外骨格で並の剣では歯が立ちません。 針には毒がありますから注意が必要ですよ」
「かなり厄介そうね」
「でも弱点もあります」
「弱点? なにそれ! 早く教えて!」
「わ、わかりましたから落ち着いて下さい」

 エイルは受付の人を揺さぶって弱点を聞き出そうとする。

「弱点ですが、サンドスコーピオンは低温に弱いですね。 水も苦手です。 ですから水で牽制して氷で攻撃するのがおすすめですよ」
「氷ね、わかったわ。 ありがとう」

 部屋に戻り、皆んなに説明する。

「一匹ずつ戦えばなんとかなりそうですね」
「氷……、氷か……」
「フランどうしたの?」

 考え事をしているフランにエイルが訪ねる。

「い、いえ、なんでもないです」
「そう? それなら良いけど。 作戦としてはこの中で一番素早いアンがサンドスコーピオンを誘き寄せて、私が氷魔法を使ったエイルキラキラ魔導銃まどうがんで攻撃するってどうかな?」
「エイルさん、私はどうすれば良いですか?」
「ルルアはフランを守ってあげて」
「僕なら大丈夫だよ」
「ダメよ。 本当は連れて行くのもダメなんだからね」
「……、……わかった」
「アンもこの作戦で良い?」
「……問題無い……」

 こうしてサンドスコーピオン討伐の準備を始め、お昼過ぎには砂漠に向かった。

「ローブ着てても暑いわねぇ……」
「仕方ないですよ」
「僕暑いの苦手~……」
「……私は慣れてる……」

 岩場と砂漠が交差しているこの場所は砂に埋まる事がない場所だ。
 そう言う場所にサンドスコーピオンはいるって聞いていた。

「この辺りでしょうか?」
「そうね。 気をつけて進みましょう」

 出来るだけ日陰に入りつつ進む。

「……いる……」

 アンがスライムを槍状にして構える。
 そして皆んなも武器を構える。

「フランは私の後ろにいてね」

 ルルアがフランの前に立つと、リュックからマジックハンドが出てくる。

「来たわよ!」

 砂の中からサンドスコーピオンが這い出してきた。

「アン! お願い!」

 アンは槍でサンドスコーピオンに突き刺すが、外骨格が硬く刃が通っていない。
 そのままアンを追って来る。

「くらえーー!」

 エイルは魔導銃まどうがんでサンドスコーピオンに氷の魔法を飛ばす。
 サンドスコーピオンは二本の爪でそれを防ぐが、爪ごと氷る。

「やったあ!」

 エイルが次の魔法を撃とうとするが、サンドスコーピオンは力で氷を砕き、エイルに襲いかかってくる。

「きゃああ!」

 近づき過ぎたエイルにサンドスコーピオンの爪が襲い掛かる!

「エイルさん!」

 ルルアがマジックハンドで爪を受け止めると、エイルがサンドスコーピオンの顔を目掛けて魔導銃まどうがんを撃つ。
 そしてアンの槍がサンドスコーピオンの背中にある急所を捉え、サンドスコーピオンは倒れた。

「エイルさん! やりましたね!」
「やったね! それよりアン!」
「……なに?」
「その槍、サンドスコーピオンの外骨格も貫けるの?」
「外骨格の隙間から……、急所を狙っただけ……」
「倒せるなら初めから倒してくれれば良いのにー!」
「……それだと、エイルの出番が無くなる……」
「そんな気を使わなくて良いの!」
「……そう……、難しいのね……」
「と、とにかく倒せたんですから、針を取っておきましょう」
「そうね、よし! 後二匹!」

 アンに外骨格の隙間を剣で切ってもらい針を取り出す。

「針は依頼用だけど、他は売ってジルにしよっと」

 一匹目の解体が終わると、次を探す。

「なかなかいないわね」
「そうですね……」
「サンドスコーピオンは砂の中にいるのよね?」
「そうですよ」
「それなら、無理矢理引きずり出せばいいわよね?」
「え?」

 エイルは小型爆弾コロボムを取り出すと、無造作に投げる。

「ちょ、ちょっとエイルさん!」

 あちこちで爆発する。
 すると、爆発した場所から十数体のサンドスコーピオンがワラワラと湧き出して来た。

「あ……、ちょっとやり過ぎちゃったかも……」

 その全てがエイル達に狙いを定め、襲いかかって来る。

「エイルさ~ん!!」
「……これは……無理……」

 エイルがフランを抱き抱え、アンがルルアを抱き抱えると、全速力で逃げる。
 その後を追うサンドスコーピオン。

「エイルさん、どうするんですか~!」
「わかんないよ~!」

 ドドドドッと地響きを上げてサンドスコーピオンの群れが襲いかかってくる。

「やれやれ、しょうがないなぁ……」

 抱き抱えられていたフランがエイルの腕から降りると、向かって来るサンドスコーピオンの前に立ち塞がる。

「フランなにやってるの!」
「早く逃げて!」
「……間に合わない……」

 もう駄目だと思った時、サンドスコーピオンの群れは一瞬で氷の彫像と化していた。

「「えっ!! ええっーー!!」」

 フランが何かやったのだろうか?
 あまりに一瞬で、皆んな驚き以外の声が出ない。
 そのフランは砂の上にパタリと倒れてしまった。
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