黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第四章 砂漠の遺跡

第七十話 襲撃

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 砂漠嵐《デザートストーム》が去り、俺達は部屋で眠りについていた。

「ご主人様、ご主人様……」

 レアが肉球で顔を押して来る。

「……ん……、どうしたレア?」
「何者かが船に乗って来ています」
「本当か!?」
「間違いありません」
「どう言う奴らかわかるか?」
「いえ……、ただ、客室を一つ一つ調べているようです」
「この部屋にも来そうか?」
「恐らく……」

 マブルさんを起こして誰かが来ていると簡単に説明し、レアは人型へと変身し、短剣ダガーを構えてマブルさんの前に。
 俺はドアの横で待つ。
 デザートシップが動いている音だけが静かに聞こえる。
 部屋の扉が音も無くゆっくりと開く。
 黒い影がスゥっと扉から出て来た時、下から突き上げた俺のアッパーカットが炸裂した。

「ガフッ!」

 黒いローブを着た奴は通路にひっくり返ると、伸びてしまい通路にいた他の影がこっちに向かって来た!
 その数五人程だ!
 一人が扉から入ろうとすると、そこにレアの投げた短剣ダガーが黒い影に突き刺さる。

「ぐあっ!」

 一人が倒れてもお構い無しに残りのメンバーが入って来た。
 レアの投げた短剣ダガーを弾き、狭い部屋の中で対峙する。

「お前ら何者だ!?」
「…………そこのマブルを渡せ……」

 狙いはマブルさんか……。

「渡すわけ無いだろ!」
「……ならば……力ずくで奪うまでだ!」

 四人は湾曲した刀シミターを構え、広がってジリジリと近づいてくる。

 一人が飛びかかって湾曲した刀シミターを突いて来たのを避け、ローブを持って床に叩きつける。
 他の二人も左右から俺に攻撃して来た。

 一人の湾曲した刀シミターで切り付けて来たのは叩きつけた奴を盾にしたが、もう一人の湾曲した刀シミターが脇腹に刺さる。

「っ!」

 盾にした奴を蹴り、二人飛ばす。 突き刺して来た奴のローブと腕を掴み床に叩きつけた後、膝を腹に落とすと、そいつは血を吐いて白目を剥いた。
 その間にもう一人は壁を駆け上がりレアの元へ。

「レア!」

 レアは黒いローブの湾曲した刀シミター短剣ダガーで受け止めている。
 そいつが少し離れ、俺が加勢に行こうとしたが、一人に掴まれた。

「がっ!」

 レアに向かって行った奴が倒れた。
 その体には無数の短剣ダガーが刺さっている。
 最後の一人は状況を見て、「チッ!」 と捨て台詞を吐いて退散して行った。

「ご主人様、追いますか?」
「いや、他に仲間がいると厄介だ。 マブルさんが目的ならこの狭い部屋の方が良い」
「わかりました」

 どうやら追っては来ないようだ。

「マブルさん大丈夫ですか?」
「わしは大丈夫じゃ。 それより二人は無事かの?」
「俺達も大丈夫ですよ。 しかし、こいつらはなんでマブルさんを狙ったのでしょうか?」
「わからん……、じゃが、思いつくのは、わしの技術力が目的じゃろうな」
「ルルア達は大丈夫でしょうか?」
「エイルもアンもいるから大丈夫だとは思うよ」

 遺跡調査も早めに切り上げた方が良さそうだな。

「大丈夫ですか!」

 物音を聞きつけ、客室乗務員がやって来た。
 いきなり襲われたと説明すると、俺達も別室に連れて行かれて色々と聞かれた。
 マブルさんの事を話すと、知っている船員がいたのか、恐らくマブルさんを狙った人攫いだろうと言う事になった。
 一人まだ息は合ったのだが、毒薬か何かで自害してしまったので、理由はわからない。

 部屋に戻った俺とレアはマブルさんにあの黒いローブの奴らと前に会った事を話した。

「……と言う事は、襲って来た連中は【ヴァルスケルハイト】の手の者と言うわけじゃな」
「恐らくそうでしょう」
「これからは注意しながら遺跡に向かいましょう」
「そうじゃな」

「そういやレア、いつの間にあんなに短剣ダガーを?」
「前にルルアと買い物をした時に、短剣ダガーを二十本程買いまして、私のリュックに入れておきました」

 あの小さなリュックは短剣ダガーを入れだったか。

 
 その日はレアにマブルさんを任せ、また奴らが来るかも知れないので俺は部屋の扉前で寝ずに座っていた。
 幸い再襲撃は無く、一日遅れの三日目にファブルの町に到着した。

「この町からまた乗り換えじゃ」
「またデザートシップですか?」
「ここからは、わしのサンドフィッチャーと同じサイズの船じゃな。 遺跡までは岩場が多く大きい船では行けないのじゃよ」
「確か遺跡までは一日程でしたよね?」
「何も無ければじゃな」

 何も無ければ……、……絶対何かありそうだ……。

「ここから先はヴァルスケルハイトの襲撃は無いじゃろう」
「何故ですか?」
「ここから先は砂漠の魔生獣が多く出没するのでな。 追ってきたら奴らも襲われるじゃろうよ」

 だからファブルの町に着く前に襲って来たのか。

「まずは遺跡を見たと言う人に会いに行くぞい」
「わかりました」

 ファブルの町はハバルの町に比べて人が少ない。
 この町にはガル支部は無いらしく、魔生獣に襲われる時は町の人達で守っているらしい。
 その為、屈強な人を多く見る。

「ここじゃ、ここじゃ」

 石造りの平家。 ここに遺跡を見た人がいるらしい。

「モンド! おるかー!?」
「誰だ!?」

 家の扉を少し開け、覗いてくる人影がある。
 あの人がモンドさん?

「わしじゃ。 マブルじゃ」
「おお! マブルか! 久しいな」

 扉を開けて出てきたモンドさんは……、白髪だけど、怒髪天のように髪の毛が逆立っている。
 眼鏡のレンズもだいぶ分厚い。
 そして白衣を着ている。

 家の中に入れてもらい遺跡の話しを聞く。

「ここから更に西に行くと、岩場が多くある。 ワシは船も使えない場所で【サンドスコーピオン】に襲われてな。 夢中で逃げた場所で砂に飲まれたのだが、その先が洞窟になっておって、進んでみると見た事の無い遺跡があったのだよ」
「遺跡は調べたんじゃろ?」
「勿論だ。 だが、この辺りにある遺跡とあまり変わりが無くてな。 レリックなども無かった。 だが……」
「だが?」
「大きな壁画があった。 その壁画には船の様な物が描かれておったよ」
「船? 他には何か無かったのかの?」
「他には筒に入った人らしい絵だけだな」
「やはり……」
「なんだ? おぬしは何か知っておるのか?」
「いや……、まだ憶測じゃ」
「そうか、まあ、行くなら魔生獣には気をつけて行く事だ。 何かわかったらワシにも教えてくれよ」
「もちろんじゃ」

 モンドさんに簡単な地図を書いてもらい、遺跡に向かう準備を始める。

 因みにモンドさんが無事に戻って来れたのは、洞窟にあった川に落ちてしまうと、町の井戸と繋がっていたらしく助かったようだ。
 かなり無茶な事してるな。

 モンドさんが岩場の近くまで行ってくれる船を手配してくれ、それに乗って向かう事になった。
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