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第四章 砂漠の遺跡

第六十五話 フランの値段

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 ガル支部前で出会った子供をどうするか?
 それを決める為に皆んなで会ってみようと言う事になった。

「ここですね……」

 そこは結構大きな店構えで、立派な建物だ。

「いらっしゃいませ。 本日はどのような奴隷をお探しでしょうか?」
 
 扉を開けて入ると、身なりの良い男性が声をかけて来た。

「ええと……、ここにフランって子いますか?」
「フランですか? ……只今お呼びします。 そちらのお連れ様もそちらの部屋でお待ちください」

 豪華な調度品に囲まれた部屋に通され、首輪をした女性がお茶を淹れてくれる。

「ねえ、ルルアには教育上良く無いんじゃ無い?」
「今更だろ?」
「私はもう子供じゃ無いです!」
 
 この部屋には変な物も無いし、大丈夫だろう。

「お待たせいたしました」
 
 部屋の扉が開くと、男性の隣にフランがいる。

「お兄ちゃん! 来てくれたんだね!」
 
 嬉しそうに笑顔を向けてくる。

「あの子がフランちゃん?」
「可愛い~」
「……なるほど……」
 
 三人はフランをジロジロと見つめている。

「それでは、フランもこちらに」
 
 フランは男性と俺達の間に立ち、男性との話しが始まる。

「さて、まずは自己紹介させて頂きます。 私はこの店の責任者をしております【ラーゼ】と申します。 お客様はフランをお買い求めしたいとの事でよろしいですか?」

 俺は三人の顔を見て確認する。

「その気持ちはありますが、一度フランと話しをさせて頂いても?」
「……かしこまりました。 それでは十分後に……」
 
 ラーゼさんは部屋を出てフランだけ残った。

「お兄ちゃん来てくれたんだね」
「まだ君を買うとは言ってないよ。 まずは三人と話しをしてもらう。 決めるのはそれからだ」
「わかった」

 まずはエイルから話しを始めた。

「フランちゃんは元々何処の出身?」
「僕はフルスレイグ出身なんだ」
「どうしてここに?」
「よく覚えて無いんだよ。 気がついたらここに売られてた」
「そう……、ご両親は?」
「多分いないよ」
「多分? 亡くなったって事かな? それで攫われてここに連れて来られたって感じかな?」

 次はレアが質問だ。

「私達はこれから大事な用があります。 危険な場所にも行くかも知れませんし、魔生獣に襲われる事もあるでしょう。 それでも付いて来ますか?」
「うん! お兄ちゃんがいれば大丈夫だよ」
「ご主人様は貴方を守る人ではありません。 自分の事は自分で守る。 出来ますか?」
「大丈夫。 任せてよ」
「ならば良いです」

 最後はルルア。

「えと、フランちゃんの歳はいくつ?」
「十歳」
「私は十一歳でもうすぐ十二歳になるから私がお姉ちゃんだね」
「うん、よろしくねお姉ちゃん!」
「お姉ちゃん……」
 
 ジーンと感動している所悪いが、そろそろ時間になる。
 皆んなの意見は一致した。

「決まりましたかな?」
「はい、フランを買わせて頂きます」
「では、フランの値段ですが、このようになります」
 
 提示された金額は……。

「八百万ジル!!」
 おいおいおい……、高過ぎだろ!
「これは……、ちょっと高く無いですか?」
 
 ははは……とラーゼさんを見る。

「おや? フランから聞いておりませんか? フランは既に買い手が付いていると」
「それは聞いてますが……」
「フランの買い手の方は娼館の方でしてね。 フランが一年で稼ぐであろう代金を上乗せさせて頂いております」

 確かに……、既に買い手が付いていたのを横取りする形になるからな……。

「いかが致しますか?」
 
 フランを買ったら手持ちのジルは殆ど無くなる……。
 けど、娼館には行かせられない。

「わかりました。 ジルは明日持ってきます」
「かしこまりました。 こちらも準備させて頂きます。 即決でしたので、前金は結構でございます」
「はい、よろしくお願いします」

 そして俺達はガル支部へ行くと、明日全財産をおろす事を受付のリューリさんに告げ、フランの事情を話しお願いをしておいた。 そして皆んなで【ベノムドランク】と言う酒場に向かった。

「フランを買ったらジルがすっからかんになるな」
「ねえレア」
「エイルさんなんですか?」
「フランの事はガル支部に任せるんだから、危険は無いはずだよね?」
「まあそうですね」
「それじゃ何で危ない事あるよ~、なんて事を?」
「そうですね、ガル支部に預ければ心配は無いでしょう。 ただ、ガル支部に居ればですが……」
「どう言う事?」
「いえ、なんでもありません。 気のせいかも知れませんし……」

 俺も何故レアはあんな事を言ったのだろうと気になっていた。
 レアにも何か考えがあるのかも知れないな。

「ここが【ベノムドランク】か」

 中に入ると既にガル支部で見た人達が盛り上がっている。

「お! 今日の主役が来たぞ!」
「お仲間さんもそっち座って! ほら酒持って来てくれ! ジュースも頼むぜ!」
 定員に勝手に注文すると、一気に十杯分の酒がテーブルに並べられた。

「今日は遠慮なく飲んでくれ! さあ皆んな! 飲みやがれーー!!」
「おおおーー!!」

 その日はどうやってガスパを倒したとか、今までガスパのやってきた事などの愚痴、何処のガル支部の受付が可愛いなどの話しで大いに盛り上がっていた。

 散々お酒も食事もご馳走になり、夜も更けたのでお酒の飲み過ぎと食べすぎでダウンしているエイルに肩を貸して、既にウトウトしているルルアをレアがおんぶして、宿に戻った。
 そして、二日酔いで動けないエイルの看病を二人に任せて、ガル支部へ立ち寄りジルを受け取りフランのもとへ。

「━━はい、ではこれで手続きも完了しました」
 
 手続きを終え、ジルを払い、フランの首輪を外してもらう。

「本当に首輪を外してしまって宜しいのですか?」
「ええ、構いません」
「では……」
 
 何かの呪文を唱えると、フランの首輪は外れ、俺と手を繋いで店を後にした。

「これからガル支部へ行ってフランをお願いする。 リューリさんにはもう話しはしてあるから、何処かの孤児院にでも入れるはずだ」
「えー! 僕、お兄ちゃんと一緒が良いよ!」
「それは危険だから駄目だ」
「でも、僕可愛いからまた連れ去られちゃうかも知れないよ?」
「そうならないように、気をつけなさい」
 
 フランはブツブツと不満そうにして歩いていた。

「リューリさん、それではお願いします」

 フランの事を預け、次はマブルさんを探しにヘイトルーガ王国へ向かう。
 ただし、ジルが無い。
 アイスローブ四着と、フランにかかったジル代、この砂漠の町は何処も高く既にピンチになっている。

「ご主人様、エイルさんもこんなですから、ガルの依頼を少し受けてみてはどうですか?」
「そうだな、そうしよう」
 
 ガル支部で依頼を探しに向かうと、リューリさんが宿まで走って来た。

「ケンジさん!」
「リューリさん、どうしました?」
「それが……」

「え! 本当ですか!?」
 
 どうやらフランが孤児院に行く途中で逃げ出したようだ……。

「どうしますか?」
「まだ町の中にいるかも知れないので、探してみます」
「ごめんなさい。 よろしくお願いします」
 
 人攫いに会って無いと良いが……、さて、何処から探すか……。
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