黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

文字の大きさ
上 下
64 / 151
第四章 砂漠の遺跡

第六十四話 不思議な子供

しおりを挟む
 ガル支部の受付であるリューリさんに暑さ対策の出来る道具の事を聞き、支部を出ると一人の子供から声をかけられた。

「お兄ちゃん!」

 声をかけてきた子は、背丈はルルアと同じ位、肉付きはルルアより無いかも知れない。
 そして腰まである水色の髪、瞳は大きく切長で澄んだ青い目をしている。
 首にはなんだか首輪のような物を着けている。
 着ている服は布一枚とショートパンツ。 だいぶ汚れているが、肌は白く透き通るような白さ。
 このヘイトルーガの子では無いのだろう。
 その可愛い顔立ちと肌の白さはまるで雪や氷の精霊のようだ。
 うん、俺は何を言っているのだろう……。

「俺に何か用かな?」
 
 しゃがんで顔の高さを合わせて見ると、可愛いと綺麗の半々な感じだ。

「さっき受付の人との話しを聞いちゃったんだけど、お兄ちゃんはガスパをやっつけた守護盾ガルガードの人なの?」

 結構大きい声で話す為、町を歩く人がこっちを見ている。

「しー! しー! それは内緒で頼むよ」
「そうなの?」

 怪しい奴や変な奴にガスパの件を聞かれても困るからな。

「ん~と、それじゃこっち来て」

 その子に連れられて細く人通りの無い通りに連れ込まれた。
 まずいな。 もしかしてこの子ガスパ関係の子か?
 通路の一番奥まで手を引っ張って連れて来られる。
 その子はそこに置いてある木箱に座ると足をパタパタさせて俺の答えを待っている。

「一応ガスパを倒したのは俺だけど、さっき俺を探していた子かな?」
「うん! どうしても僕お礼を言いたくて」

 僕っ子? それは良いとして、俺にお礼?

「お礼?」

 これについては全く身に覚えがない。

「あ、もしかしてガスパに捉えられていた人の知り合いかな?」
「違うよ。 僕もう少しでガスパに売られちゃう所だったんだ。 僕、可愛いからね」
「そ、そうか……、それでガスパを倒した俺を探していたと?」
「うん。 どんな人か見てみたくて」
「でもどうやってガスパが倒された事を知ったの?」
「ここじゃ有名だよ。 ヘイトルーガには奴隷商人がいるからね。 お得意様が無くなったって言ってる」

 この子も奴隷として売買されそうだったのだろう。 また幼いけど、将来有望な容姿してるからな。

「それでお兄ちゃんに一つお願いがあるんだ」
「何かな?」
「僕を買ってよ」
「へ? ……い、いやいやいや……」
 
 何を言ってるんだこの子は!?

「だって僕このままじゃ別の所に売られちゃうからさ、お兄ちゃんに買って欲しいなって」

 俺が奴隷を買う? いや、そんな事は出来ない。
 これでもガルだ。 危険な事も沢山ある。
 俺が断ろうとすると、その子は木箱から降りて来て腕に絡みついてくる。

「お願いだよ~……、それに僕まだ真っさらだし、お兄ちゃんになら何でもしてあげるからさ……」

 切長の綺麗な青い瞳で俺を見上げ、手を絡めてくる。
 この子……、幼そうなのに随分色気あるな……。

「まてまて、君はいくつなんだ?」
「僕? 僕は……え~と……、十歳だよ」

 十歳! ルルアより年下じゃないか!

「俺はガルだから無理だよ。 それに君は奴隷商人から逃げてここにいるんじゃないのかい?」
「違うよ。 この首輪は逃亡防止と何処の奴隷商人の物かがわかるようになってるんだ」
「外せないのか?」
「無理に外したり、逃げたりすると小型の魔導法術機ガルファーが発動して顔が焼かれて死んじゃうから……、僕、可愛いのに顔焼かれちゃうの嫌だし」
「それじゃ無理に外せないな。 それじゃ何でここにいるの?」
「自分を売り込むためさ。 買ってくれそうな人は自分で見つける事が出来るんだ」
「だから自由なのか……」
「この町の中だけだけどね」

 こんな小さい子が奴隷……、可愛そうではあるが、そう言っていたらキリが無いのも事実……。
 でも俺の手の届く範囲の人位は助けたい。

「俺には他に仲間がいるんだ。 その仲間と話し合って来て良いか?」
「わかった! それじゃ待ってる! でも三日以内にお願いね。 僕もう買い手がついてるから」
 
 買い手がいるのか……。

「そうだ、君の名前は!?」
 
 走って戻って行く後ろ姿に声をかける。

「僕は【フラン】って言うんだ! 忘れないでよ~!」
 
 手を振りながら走って行ってしまった。

 さてと……、どうしたもんかな~……、皆んなになんて説明しよう……。

「奴隷を買いたいんだ!」
「ケンジってそういう趣味……」
「ケンジさん不潔です!」
「ご主人様! 私がいますのに!」

 こんな感じになるだろう。
 詳しく言った所で……。

「十歳の可愛い奴隷を買おうと思う!」
「ケンジってロリコンだったの!?」
「ケンジさん! 軽蔑します!」
「ご主人様が、変態になってしまうなんて……」

 結局こうなるだろうな……。
 説明が難しい。
 武器屋でアイスローブを人数分買い宿屋に戻る。

「お帰りなさい」
「暑かったでしょ?」
「ご主人様、ご苦労様です」

 ルルアは風を送ってくれるように煽ってくれ、エイルは汗を拭いてくれ、レアは飲み物を持って来てくれる。
 説明しづらい……。

「皆んなありがとう」
 
 そして、皆んなにアイスローブを渡すと、フランの説明に入る。

「ご主人様、それはやめた方が良いと思います」
「そうだね、私達はマブルさんを探さないといけないし」
「でも、その子可愛そうじゃ無いですか?」

 ガル支部に着いて、フランに合ってからの説明を一からすると、いきなり否定せずに意外と皆んな考えてくれる。

「そもそもご主人様、その子を買った後はどうするおつもりですか?」
「連れて行くのは難しいから、ガル支部に預けて後は任せようかと思ってる」
「確かにガル支部ならなんとかしてくれるかも知れないけど……、買い手がついてるのよね?」
「そうらしい」
「ならそのままが良いかも知れないわよ。 買い手の人が悪人とは限らないでしょ?」
「それはそうだけど……」

  なかなか話しがまとまらない。

「明日、その子に皆さんで会って見るのはどうでしょうか?」

 ルルアの提案に賛成として、明日会いに行くことにした。
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 6

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...