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第三章 コロシアム

第五十五話 アームダレスへ到着

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 安宿で一泊した俺達はアームダレス王国のライガー砦へ向かう為に準備していた。

「まずはフォグ村だな」

 前に野菜泥棒の獣人、サンドライトと出会った村だ。
 ヴァルスケン帝都から約二日かかる。
 だが今回はお姫様を連れて行かなくてはいけないので、少し早めに向かおう。

「ライアさ~ん、これも買いませんか?」
「そんなに食糧は必要ありませんよ」
「ライア様を呼び捨てにするなんて……」
「マリル、私はかまいませんよ」

 エイルは沢山の食糧を持ってライアさんに手を振っている。

「やあケンジ君」
 
 声をかけて来たのはラヴィンさん。

「あれ? まだライア様も一緒にいるのかい?」
「そうですね、これからアームダレスに向かう予定ですけど?」
「ふむ……、ライア様、少し宜しいですか?」

 ライアさんとマリルさんに声をかけ、何やら話しをしている。

「……では、決まりですね。 ……ケンジ君!」

 ラヴィンさんに呼ばれ話した内容を聞くと、ライアさんとマリルさん、ラヴィンさんは先にアームダレスに向かうとの事。
 それなら俺達が連れて行く必要は無くなる。
 でもラヴィンさんに任せて大丈夫なのか?
 強いし、良い人ではあるけど……?

「おや? 僕じゃ役不足かな?」
「ケンジ様ご安心を。 ではお先に戻って準備しておきます」
「準備?」
「さあ、ラヴィン、マリル、早く行きましょう!」

 三人は竜車に乗り、さっさと行ってしまった……。

「ご主人様……、どうしますか?」

 レアはラヴィンさん達があまりに早く行ってしまったので、この後のどうするか聞いてきている。

「そうだな……、まずはアームダレスに向かってちゃんとライアさんが城に到着しているか確認と、ガル支部で依頼完了の報告と報酬でも貰いに行くか」
「そうですね」

 とりあえずこれから向かう先はアームダレスだ。
 とは言ってもジルが無い俺達では竜車で向かう事は出来ない。
 仕方ない……、また徒歩で行くか……。
 その事をルルアとエイルに伝える。

 ルルアは突然行ってしまったライアとマリルにまた会える事に喜び、エイルはライアの奢りで買えると思っていたようで、大量の食糧を泣く泣く戻す。

「うう~……、私のご飯がぁ……」
 
 ……エイルのでは無いぞ……。

 俺達はフォグ村までやって来ると、前に野菜泥棒を追っ払ったお礼にと、食事と一泊の宿を無料にしてくれた。
 そして次の日、村長さんにお礼を言って、フォグ村を後にする。

「またこの山道かあ~……」
 
 エイルはライガー砦へと向かう山道を見るや否や、レアをチラッチラッと見ている。

「……乗せませんよ……」

 エイルのそんな目に気がついたのか、バッサリと言い切った。

「そんなぁ~、乗せてよレア~! この服歩きにくいんだよ~!」

 エイルはレアにしがみついてお願いしている……。
 確かになれない服では山道は厳しいと思うけど……。

「離しなさい! エイルさんも守護盾ガルでしょう! 自分の足で歩かないと、体力落ちますよ! それに最近肉付きが良くなった様に見えますけど?」

 レアにもっともな意見を言われると、ショックを受けた様でお腹をさすったり二の腕をぷにぷにしている。
 でも肉付きが良くなったのはそこじゃ無い。
 服の胸元がキツそうになっている事は見ていてわかる。

「エイルさん、もう少しです! 頑張りましょう!」

 ルルアに背中を押されながら、やっとの事でライガー砦に到着する。
 今回は魔生獣のニルドバードには襲われずにすんだ。

「おや? 君達は前に来た事があるよね?」

 砦の兵士さんはフォグ村を助けた時のノノルさんの息子さんで、俺達の事を覚えていてくれたようだ。

「またアームダレスへ行くのかい?」
「はい」
「そうか、なら気をつけてな」

 前に来た時はそこそこ高いジルを息子さんのツテで安くしてもらい払って通ったが、今回はもうジルは受け取っているとの事で、無料で通してくれた。

「無料ですか? 誰が支払いを?」
「たしか……、女性二人を連れたキザな男だったよ」

 ラヴィンさんか。
 兵士さんに通してもらい、アームダレスへ。

「お、やっと来やしたね」

 声をかけてくれたのは法被はっぴを着た獣人の熊吉ゆうきちさんだ。

「お久しぶりです」
「ケンジさんがここを通るって聞いてやしてね待ってやした」

 これもラヴィンさんのおかげか?

「助かりますが……、ちょ~っと手持ちが少なくて……」
「それなら心配する必要ねえでさ。 ちゃんと受け取ってやすから」
「そ、そうなの?」

 きっとラヴィンさんなんだろうな。 後でお礼を言わないと……。

「……そういやヴァルスケンでは結構なご活躍だったそうで」

 獣力車を走らせながら熊吉ゆうきちさんは武術大会の事を知っている様に話してきた。

「俺は大した事はしてないですよ」
「またまたご謙遜を! 今度詳しく聞かせてくだせえ。 おっと、そろそろ日も暮れちまう、飛ばしますぜ」
「飛ばす? い、いや、ちょっと待ってええぇぇーー!!」

 日が落ちる頃、アームダレスの宿に着くと、熊吉ゆうきちさんに挨拶して全員直ぐにベッドにぶっ倒れた。
 そしてそのまま静かに眠った……。

 ……今度から……飛ばすのは無しと……先に……言っておこう……。
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