黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第三章 コロシアム

第四十九話 優勝者

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 デカくなったゴーレムの光線によって腹を貫かれ、意識を失くしてしまった。
 このままではガスパに負ける……。
 俺の意識は暗い空間で眠るように横たわっていた……。

「ひょ……? ……ひょっひょっひょっ! 勝った、勝ったぞい! ワシの勝ちじゃあああ!!」

 ガスパは嬉しそうにピョンピョンと跳ね回っている。

「……ひょ? どうしたんじゃ? ワシは勝ったはずなのにゴーレムが元に戻らん……、バリアも消えぬ……」

 ゴーレムは倒れた俺に近づいている。
 まだ攻撃してくるつもりだ。
 ゴーレムが腕を振りかぶった時、俺は意識の無いまま立ち上がり、ゴーレムの拳を片手で受け止め、攻撃の重さがわかる程、俺の足は地面にめり込む。
 地面から足を抜き、剣のもとまで攻撃を回避しながら移動し剣を取る。
 腹に空いた穴も立ち所に治るとゴーレムへ斬り込む。

 何度も硬い体へ斬り込んでいたせいか、刀身にはヒビが入っていた。
 無意識の攻撃で剣は砕けてしまい魔導法術機ガルファーは外れて吹っ飛んだ。
 剣が砕けた事はお構い無しに殴りにいく。
 ゴーレムの光線や棘を躱し殴る。
 拳に魔力を纏わせながらひたすら殴る。
 そんな無茶苦茶な攻撃のせいで、俺の腕や体に負荷がかかり始め体に亀裂が入り出した。

「ご主人様! それ以上はダメです!!」

 レアが叫ぶが俺の攻撃は止まらない。

「レア、どう言う事?」
「ご主人様は今、意識が無く自己防衛機能で戦っています。 相手を倒すまで止まらないでしょう。 ただ今のご主人様じゃその力に体がついていきません! もしこのまま攻撃を続けていたらご主人様は……」
「どうなるんですか……?」
 
 ルルアは恐る恐る聞いてみる。

「ご主人様の体は砕けてしまいます……」
「「えっ!」」
「早く止めないといけません!」

 レアが闘技場へ降りようとすると、執事さんが止めた。

「今降りたらケンジ様の負けとなってしまいます。 そうなると天秤の契約が発動してしまいますよ」
「それじゃケンジはどうなるの?」
「見守るしか無いですな」
「そんな……」

 俺の攻撃ではゴーレムにヒビ一つ入らない。
 だが意識の無い俺は攻撃の手を休める事は無く、殴っている。
 ゴーレムも攻撃してくるが、俺は片手で止めぶん殴る。
 棘も飛ばしてくれば弾き、光線を打とうとすれば懐に入って攻撃されないようにする。
 動きは意識がある時より良く動く。
 尻尾を振り回してくるが、片手で掴み、ゴーレムをジャイアントスイングの様に振り回して投げた。
 投げつけられたゴーレムは壁だけでは無く、観客席まで破壊する。
 皆んながいる場所の反対方向に投げたようで皆んなは無事だが、次はどうなるか分からない。

 追い討ちをかけようと突進した時、ゴーレムは壁にめり込んだまま光線を放ってきた。
 その光線は俺の左腕を消し飛ばした。
 だが俺は止まらずそのままゴーレムの顔を殴りつけた。
 腕から体に更にヒビが入る。
 ゴーレムの顔は壁にめり込むが、やはり無傷だ。

 ゴーレムが壁から起き上がってくる頃、俺は剣から外れて落ちている魔導法術機ガルファーを拾い右手で握る。 すると、魔導法術機ガルファーが手の中に吸い込まれ、右手と一体化した。

 手の甲に宝玉の様な物が付き、指へと線が出ている。
 そこに魔力を込めてゴーレムに殴りかかる。
 ミスリルゴーレムも軽く砕ける。
 だが、少ない魔力を使い続けているためか、俺の体や顔にもヒビが入り少しずつ欠けて行く。

 ゴーレムの放つ光線も魔力のこもった右手で受け止めるが、ゴーレムは光線の出力を上げてきた。
 魔力を高め光線を受け止めながら前進し、ゴーレムの顔の前まで来ると、ゴーレムの顔にありったけの魔力を叩き込みぶん殴る。

 ゴーレムは頭部を貫き破壊され、倒れ塵となって行く。
 魔力が完全に枯渇すると右足、左脇腹が砕けてしまう。
 それでもまだガスパが残っている。
 あいつを倒さないと決着がつかない……。

 敵を倒した事で意識は少し戻ったが、体が言う事をきかない。
 体はガスパを敵と認識しているらしく勝手に這いつくばりながらガスパの元へ。
 ガスパの黄金のバリアは消え、手にしていた天秤も砕けていた。

「あわ、あわわわ……」

 ガスパはボロボロになりながらも這いつくばって近づいてくる俺に恐怖を感じたのか、下半身が濡れている。

 片足に力を込め、ガスパめがけて飛びかかり魔力も何も無いただのパンチをでっぷりとした腹に一撃当てる。 ガスパは くの字になって吹き飛び、泡を吹いて気絶した。

「勝者! ケンジーー!!」

 執事さんの声が響き渡り、俺の優勝が決まった。
 でも、俺は止まらず、ガスパに襲い掛かろうと、地面を這いつくばって向かっている。
 意識ではもうやめろ! と思っているのに、体が止まらない。
 勝手に動いているのだ!

「ご主人様ーー!!」

 レアが闘技場へ飛び込み俺に向かって走ってくる。
 ダメだレア! 体が勝ってに攻撃してしまう!
 レアは俺を抱きしめると、俺の動きが止まった。
 どうやらレアには攻撃しないようだ。
 良かった……。

 レアは俺を抱き抱えると、口をつけ魔力を俺に流し始めた。
 ん! レア! 何を.………。
 魔力が流れ込んで回復し出すと心地いい……。
 俺はしばらくレアに体を預けるのだった。
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