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第三章 コロシアム
第四十話 武術大会開催
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屋敷に泊まって大会までの三日間、部屋で待機となる。
初日には暗殺者と名乗る小柄な女性が部屋に押しかけて来たが特に何も無く三日が過ぎた。
その間に、何故俺が選ばれたのか執事さんに確認してみたところ、あの洞窟は大会の選手を決める為の場所でもあったようだ。
あのスライムを倒したとなると、参加するに相応しい人物と言う事らしい。
手紙を持って来た小柄な暗殺者は俺に目星を付けて後を付けていたそうだ。
そして大会当日。
扉がノックされ屋敷のメイドが呼びに来た。
「ご案内致します。 こちらに」
部屋から出ると既にレアとルルアが待っていた。
「ケンジさん!」
「ご主人様、異常は無いですか?」
「俺は大丈夫だけど……二人共大丈夫だったか?」
「はい。 私達は問題ありません」
「私達? そう言えばエイルは?」
エイルの姿がさっきから見えない。
「エイルさんでしたら……あちらに」
レアは部屋の中を指差す。
中にはエイルの背中が見える。
「……え……と……」
ルルアも何か言いにくそうにしてるな。
「エイル、どうした? 具合でも悪いのか?」
「…………ケンジ、先に行ってて下さい」
背中を向けたままエイルの声が聞こえて来る。
「どうしたんだ?」
「………………」
返事が無い。
「ケンジさん、その、エイルさんなんですが……」
「え?」
ルルアが何かボソボソ喋って良く聞こえない。
「ルルア、エイルさんのタメです。 ハッキリ言ってあげましょう」
「そうかもだけど……」
なんだなんだ?
「エイルさんは━━」
「まってーー!! レア! それ以上は!!」
エイルの叫び声が聞こえる。
「エイルさん、諦めて下さい」
レアに言われ渋々出て来たエイル。
その姿はこの三日間で栄養のある物を沢山食べたんだろうな~、と言う感じで全体的にむっちりと肥えていた。
「ケンジ、これは違うんです! 違うんですーー!!」
エイルは両手をぶんぶんと振っているが、何が違うのか良くわからない。
「ケンジさん、エイルさんはちょっと料理が美味しかっただけなんです。 この三日間、日増しに食べる料理の量が増えていて、勿体ないから全部食べてたらちょっと体重が増えただけなんです!」
ルルア…………、それじゃあまり擁護出来てないぞ……。
「……そうなんです。 何故か日増しに料理の量が増えていて、残すの勿体ないし……」
「そ、そうか……」
「それについては私からご説明致します」
俺を迎えに来ていたメイドさんが理由を話してくれるそうだ。
とは言え、理由は至極簡単だった。
毎日多めの料理が綺麗さっぱりと食べ尽くされていたので、お屋敷の料理長が喜んでしまい、日に日に量を増やしていったと言う訳だ。
執事さんが言ったように、手厚く扱ってくれたようだな。
エイルの事も問題なかった? ので、大会に出る俺と皆んなは、もう一人来たメイドさんに別に案内され、別々に屋敷の地下へと続く階段を降る。
随分と長い螺旋階段だな、結構深くまで降りて来たぞ。
階段の下には大きな扉の前に降り立った。
「この先でございます」
「地下にこんな広い場所があるとは……」
扉が開くと、そこには巨大な闘技場が現れた。
闘技場には既に選手とおぼしき人が十数人いる。
そして観客席には俺の仲間のエイル、レア、ルルアと他に数人しかいない。
てっきり何処ぞの金持ち連中でもいて、賭けの対象にでもなっているもんだと思っていたよ。
「皆さま、ようこそ! ガスパ闘技場へ!」
執事さんが司会なのか、進行役をしている。
「今回お集まりくださいました皆様には、ここで闘って頂きトーナメントを勝ち進んで頂きます。 死合いのルールは簡単でございます。 相手が死ぬか、戦闘不能、降参すれば死合い終了となります。 最後まで勝ち進んだ選手の方は、最後にこちらのガスパ様と闘って頂き、勝てば望む物を手に入れられます」
「ワシに勝てば地位も名誉も女も金も思いのままじゃ!」
金色の服に身を包み、宝石をいくつもはめたデップリとしたバーコード髪のおっさんが出てきた。
どうやらあの人がこの屋敷の主人で大会の主催者なんだろう。
最後は楽勝じゃ無いか?
「それでは皆様! 是非最後まで勝ち進んで頂き、望みを叶えたいかーー!!」
「「おおおーー!!」」
執事さんの一声で会場からは大きなどよめきが響き渡る。
「それでは選手の方はこちらの対戦のクジを引いて下さい」
小さい箱に番号の書いてある札で対戦相手が決まるようだ。
「俺が最後だな」
引いた番号は八番。
そしてトーナメント表が出る。
全部で十六名の参加か。 その内の七番の人と戦う事になる。
待っている間は控え室で待っていても良いし、試合を観戦していても良い。
まずは観戦かな。 この大会に参加している人の実力が気になるし。
参加選手がアームダレスの王様程の実力者だったら勝ち目は無いだろうな。
一回戦が始まった。
対戦者は上半身裸の筋肉マッチョメン対あの小柄なローブの暗殺者の女性だ。
「死合い開始!」
「ガハハ! 俺様の相手がこんなチビとはな!」
ハゲた筋肉マッチョメンは大きな斧を振り回し、ローブの女性に思いっきり叩きつける。
無茶苦茶なルールとは思っていたが、女性相手にも容赦無いな。
ローブの女性は難なく躱して、懐から二本の短剣を取り出し、筋肉マッチョメンを切り付けていく。
時々俺をチラッと見ながら戦っている。
素早い身のこなしで相手の攻撃を躱して結構余裕そうだ。
「ちょこまかしやがって! 動くんじゃねえ!」
「……うっさい……。 即死ね」
ローブの女性は懐に二本の短剣をしまうと、今度は長剣を取り出してカウンターで筋肉マッチョメンの腹を一突きし、相手は倒れて決着した。
殺し……た……?
一瞬そう思ったが、相手はどうやら息はあるようだ。
担架で運ばれて行ったので、治療を受ければ助かるだろう。
しかし……、本当に相手を再起不能にするか、降参させるかの試合になるのか……。
勝ったローブの女性は控え室に戻る前にまたも俺を見て戻って行く。
なんで俺を狙うんだよ!?
初日には暗殺者と名乗る小柄な女性が部屋に押しかけて来たが特に何も無く三日が過ぎた。
その間に、何故俺が選ばれたのか執事さんに確認してみたところ、あの洞窟は大会の選手を決める為の場所でもあったようだ。
あのスライムを倒したとなると、参加するに相応しい人物と言う事らしい。
手紙を持って来た小柄な暗殺者は俺に目星を付けて後を付けていたそうだ。
そして大会当日。
扉がノックされ屋敷のメイドが呼びに来た。
「ご案内致します。 こちらに」
部屋から出ると既にレアとルルアが待っていた。
「ケンジさん!」
「ご主人様、異常は無いですか?」
「俺は大丈夫だけど……二人共大丈夫だったか?」
「はい。 私達は問題ありません」
「私達? そう言えばエイルは?」
エイルの姿がさっきから見えない。
「エイルさんでしたら……あちらに」
レアは部屋の中を指差す。
中にはエイルの背中が見える。
「……え……と……」
ルルアも何か言いにくそうにしてるな。
「エイル、どうした? 具合でも悪いのか?」
「…………ケンジ、先に行ってて下さい」
背中を向けたままエイルの声が聞こえて来る。
「どうしたんだ?」
「………………」
返事が無い。
「ケンジさん、その、エイルさんなんですが……」
「え?」
ルルアが何かボソボソ喋って良く聞こえない。
「ルルア、エイルさんのタメです。 ハッキリ言ってあげましょう」
「そうかもだけど……」
なんだなんだ?
「エイルさんは━━」
「まってーー!! レア! それ以上は!!」
エイルの叫び声が聞こえる。
「エイルさん、諦めて下さい」
レアに言われ渋々出て来たエイル。
その姿はこの三日間で栄養のある物を沢山食べたんだろうな~、と言う感じで全体的にむっちりと肥えていた。
「ケンジ、これは違うんです! 違うんですーー!!」
エイルは両手をぶんぶんと振っているが、何が違うのか良くわからない。
「ケンジさん、エイルさんはちょっと料理が美味しかっただけなんです。 この三日間、日増しに食べる料理の量が増えていて、勿体ないから全部食べてたらちょっと体重が増えただけなんです!」
ルルア…………、それじゃあまり擁護出来てないぞ……。
「……そうなんです。 何故か日増しに料理の量が増えていて、残すの勿体ないし……」
「そ、そうか……」
「それについては私からご説明致します」
俺を迎えに来ていたメイドさんが理由を話してくれるそうだ。
とは言え、理由は至極簡単だった。
毎日多めの料理が綺麗さっぱりと食べ尽くされていたので、お屋敷の料理長が喜んでしまい、日に日に量を増やしていったと言う訳だ。
執事さんが言ったように、手厚く扱ってくれたようだな。
エイルの事も問題なかった? ので、大会に出る俺と皆んなは、もう一人来たメイドさんに別に案内され、別々に屋敷の地下へと続く階段を降る。
随分と長い螺旋階段だな、結構深くまで降りて来たぞ。
階段の下には大きな扉の前に降り立った。
「この先でございます」
「地下にこんな広い場所があるとは……」
扉が開くと、そこには巨大な闘技場が現れた。
闘技場には既に選手とおぼしき人が十数人いる。
そして観客席には俺の仲間のエイル、レア、ルルアと他に数人しかいない。
てっきり何処ぞの金持ち連中でもいて、賭けの対象にでもなっているもんだと思っていたよ。
「皆さま、ようこそ! ガスパ闘技場へ!」
執事さんが司会なのか、進行役をしている。
「今回お集まりくださいました皆様には、ここで闘って頂きトーナメントを勝ち進んで頂きます。 死合いのルールは簡単でございます。 相手が死ぬか、戦闘不能、降参すれば死合い終了となります。 最後まで勝ち進んだ選手の方は、最後にこちらのガスパ様と闘って頂き、勝てば望む物を手に入れられます」
「ワシに勝てば地位も名誉も女も金も思いのままじゃ!」
金色の服に身を包み、宝石をいくつもはめたデップリとしたバーコード髪のおっさんが出てきた。
どうやらあの人がこの屋敷の主人で大会の主催者なんだろう。
最後は楽勝じゃ無いか?
「それでは皆様! 是非最後まで勝ち進んで頂き、望みを叶えたいかーー!!」
「「おおおーー!!」」
執事さんの一声で会場からは大きなどよめきが響き渡る。
「それでは選手の方はこちらの対戦のクジを引いて下さい」
小さい箱に番号の書いてある札で対戦相手が決まるようだ。
「俺が最後だな」
引いた番号は八番。
そしてトーナメント表が出る。
全部で十六名の参加か。 その内の七番の人と戦う事になる。
待っている間は控え室で待っていても良いし、試合を観戦していても良い。
まずは観戦かな。 この大会に参加している人の実力が気になるし。
参加選手がアームダレスの王様程の実力者だったら勝ち目は無いだろうな。
一回戦が始まった。
対戦者は上半身裸の筋肉マッチョメン対あの小柄なローブの暗殺者の女性だ。
「死合い開始!」
「ガハハ! 俺様の相手がこんなチビとはな!」
ハゲた筋肉マッチョメンは大きな斧を振り回し、ローブの女性に思いっきり叩きつける。
無茶苦茶なルールとは思っていたが、女性相手にも容赦無いな。
ローブの女性は難なく躱して、懐から二本の短剣を取り出し、筋肉マッチョメンを切り付けていく。
時々俺をチラッと見ながら戦っている。
素早い身のこなしで相手の攻撃を躱して結構余裕そうだ。
「ちょこまかしやがって! 動くんじゃねえ!」
「……うっさい……。 即死ね」
ローブの女性は懐に二本の短剣をしまうと、今度は長剣を取り出してカウンターで筋肉マッチョメンの腹を一突きし、相手は倒れて決着した。
殺し……た……?
一瞬そう思ったが、相手はどうやら息はあるようだ。
担架で運ばれて行ったので、治療を受ければ助かるだろう。
しかし……、本当に相手を再起不能にするか、降参させるかの試合になるのか……。
勝ったローブの女性は控え室に戻る前にまたも俺を見て戻って行く。
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