黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第三章 コロシアム

第三十八話 エイルの武器

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 洞窟では巨大なスライムを倒しただけで収穫は無かった。
 俺とエイルの服が溶かされただけだな……。
 洞窟を出た所で、小柄なローブを着た人に一通の手紙を渡され、服を買いに帝都に戻る事にした。

 帝都までの帰り道、いくら人通りが少ないとはいえ、タオル一枚は流石に恥ずかしい。

「あの……、ケンジ」
「なに?」
「あんまり近寄らないでね……」

 …………他の人から見たら変態だしな…………。

 俺はコソコソと石畳みの通路を進む。
 エイルも俺の影に隠れて進む。
 時間をかけて帝都に到着して俺達はレア達との待ち合わせで決めておいた宿に向かった。

「いらっしゃ…………、どうしました?」
 
 宿の主人は俺とエイルの格好を見て、驚きを隠せない様子。

「いやぁ……ちょっと……」
「そ、そうですか……、ケンジ様とエイル様……と。 確認出来ました。 既にお部屋でお連れ様がお待ちですので、どうぞ」
 
 宿代は既に支払われているようで、すんなりと通してくれた。
 宿の部屋に入るとルルアが猫になっているレアをモフモフしてご機嫌だ。

「ネコさんモフモフ~♪」
 
 仲良きことは美しき事だな。

「あ! ケンジさん!」
「ご主人様!」
 
 いつもなら宿に近づいただけで俺に気がつくレアがルルアにモフモフされてて気が付かなかったようだ。

「え? ケンジさん、エイルさん……?」
 
 まあこんな格好を見たら驚くよな。

「ご主人様! エイルさんとなにを……。 まさか!?」
 
 レアは俺達の格好を見て、直ぐに人に変身すると俺に詰め寄って来た。

「いやいや、変な事はしてないぞ!」
「そ、そうです! 誤解しないで下さい!」
 
 レアが落ち着くように洞窟で合った事の説明を二人にする。

「とりあえずお二人の服を用意しないとですね。 私買って来ます」
「そのお金が無いんだけど……」
「大丈夫です! 私に任せて下さい! レアさん一緒に行きましょう!」
「そうですね、ご主人様の服は私が用意します。 お二人は部屋でジッとしていて下さい。 エイルさんはくれぐれもご主人様に近づかないようにしてください」
「近づかないよー!」
 
 二人が服を買いに行っている間、俺とエイルは部屋で大人しく待つ事にした。

「ただいまー!」
「戻りました」
 
 既に夕暮れとなり、二人は買い物を楽しんで来たようだ。
 二人の買ってきた服を着る。

「ケンジさんもエイルさんもお似合いです」
 
 俺の服はあまり変わらないが、エイルの服は色は変わりなかったが、レアの服に似ている。
 新しい服に身を包み、宿の一階にある食堂で食事をしながら手紙の事を話す。

「怪しいですね」
「手紙読んでみまひょうよ」
 
 レアはテーブルに置いた手紙をジッと見つめ、エイルは食べながらも気にはなっているようだ。

「それじゃ読んでみるよ」
 
 蝋で封をされている封書を開き、中の手紙を読む。

【この手紙を読まれている御仁へ。 貴方様は当家の武術大会への参加資格を得ました。 武術大会優勝者には当家よりお好きな物を差し上げます。 是非ご参加お待ちしております。 ギラファラ・ガスパ】

「武術大会……?」
「なんでも貰えるの?」
「サンドライトが言っていたアームダレスのお姫様もここにいるかも知れません」
 
 確かに兎美さんの手紙にもあったし、この名前は帝都の人に良く聞く大富豪の名前だ。

「行ってみるか」
 
 罠かも知れないけど、他に情報も無いしな。

 ルルアのへそくりで食事をご馳走になり、部屋に戻ると、ルルアが俺達三人を椅子に座らせ、風呂敷から何か出してきた。

「ジャジャーン! これを見て下さい! 私が作り上げたエイルさん専用の武器です!」
「私専用の武器ですか?」
 
 ルルアが出してきたのは銃の様な形をした武器だ。
 これを作りに戻っていたのか。
「エイルさん、魔導法術機ガルファー貸してもらえませんか?」
「私の魔導法術機ガルファーを?」
「はい。 エイルさんの魔導法術機ガルファーを手袋から外してこの武器に取り付けて……と…………。 よし、これで完成です」
 
 少し大きめの銃で砲身は大きめだ。

「これどうやって使うの?」
 
 エイルは武器を手に取り眺めている。

「これはこの持つ部分に魔導石を入れれば、魔法を飛ばす事が出来る優れ物です! しかもエイルさんの魔力で威力も増します!」
「凄いよ! ルルアありがとう!!」
 
 エイルはルルアに抱きつきほっぺたにスリついている。

「エイルさん苦しいです」
 
 エイルはレアに剥がされると席に戻る。

「早速明日試すね」
「はい!」
 
 エイルとルルアはベッドに入り、レアは小さい猫になりベッドへ入る。
 俺は椅子に座って眠る。
 明日は富豪の家に向かう事になるな。

 次の日、ルルアに宿代を払ってもらう。
 うう……ルルアありがとな。
 頑張って稼いで返すからね……。
 年下の女の子にご飯代、宿代を払ってもらうと言う情けない事になったが、これから頑張ろう。

 富豪の家に向かう前にルルアがエイルの為に作った【エイルキラキラ魔導銃】を試す為に寄り道をしている。

「ね、ねえ、ルルア……」
「なんですか?」
「その【エイルキラキラ魔導銃】って言う名前なんだけど……?」
「どうです? 良い名前でしょ? 自分の使う武器にはやっぱり自分の名前をつけた方が愛着が湧きますからね」
「そ、そうね……」
 
 ルルアに作ってもらった手前エイルも嫌とは言えないようだな。
 そう言えばルルアのマジックハンドも【ルルアーハンド】って名前だったな……。

「魔生獣がいました!」
 
 レアの探索で魔生獣の場所を確認する。

「よーし、この……」
「エイルキラキラ魔導銃です」
「え、えと……」
「エイルキラキラ魔導銃です!」
「エ、エイルキラキラ魔導銃で狙って……、撃つ!」
 
 砲身の前に小さな魔法陣が出現すると、火の玉が発射され、魔生獣【ガウラット】に命中し、黒焦げとなり倒した。

「やったあ!」
「上手いじゃないか!」
「私にかかればこんなもんよ!」
 
 エイルは得意げに腰に手を当てている。

「さすがルルアの作った武器ですね」
 
 レアはルルアを撫でて誉めている。

「私も褒めてよ~」

 エイルは投げる物のコントロールは駄目だけど、どうやら射撃は得意なようだな。
 新しい武器を手に入れ、大富豪の家を目指す。
 ここの武術大会にお姫様が本当にいるのだろうか?
 逆に捕まってたりしないだろうな?
 そんな事を思いながら俺達は大富豪の家に向かった。
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