黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第二章 旅の行方

第三十三話 試合と修行

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 アームダレスの王様【キングダレス】様の依頼を受ける事になり、その為に王様と試合をしなくてはならない。
「強く無くては娘を助ける資格無し!」 と言う脳筋な王様だ。
 アームダレス城の一角には闘技場がある。
 そこで試合だ。

 豪華な食事が終わり、各自部屋を用意してくれたのでそこで就寝。
 朝はメイドさんに起こされ、闘技場へ案内される。
 王様は既に闘技場の真ん中で上半身裸で厳つい柄の袴姿で腕を組んで待っている。

「来たか! 待っていたぞ!」

 闘技場の真ん中から大きな声で俺を呼ぶ。

「好きな獲物を使え!」
 
 好きな武器か……、剣でも良いけど、王様は無手のようだし、俺も無手で行くか。

「ほう、ステゴロとはな。 ガッハッハ! 気に入ったぞ! やはり思った通りのおとこよな」
 
 どうやら褒められてる? ようだ。

「よし、始めるか。 遠慮は無用! 思いっきりこい!」
 
 腕を組んだまま動かない王様。

「ご主人様ー! やっちゃってくださいー!」
「ケンジ~! 負けるな~!」
「ケンジさん、頑張ってください~!」
 
 三人は闘技場にある観客席で応援をしてくれている。
 俺は三人に手を振って王様に向き直す。

 先手必勝!
 俺は地面を思いっきり蹴り、キングダレスの顔を目掛けて殴りかかる。
 一直線的な攻撃なので、ステップで楽に躱される。
 俺は止まらず突きを放つが余裕そうだ。

「速さはまぁまぁ、力はどうかな?」
 
 キングダレスが組み付いて来た。
 お互い手と手を組み、力比べが始まる。
 くっ! 強え!
 これでもパワーアップしているのだが、どんどん押されてしまう。

「まだまだこんなものでは無いだろう」
 
 組合い中にキングダレスがそう言うと、組み合ったまま俺を宙に放り投げた。

「なっ!」
 
 投げ飛ばされるとは思わなかった。
 軽々と投げ飛ばされ、体制を整え顔を上げた目の前には、既にキングダレスの拳が上げた顔にめがけて飛んできていた。

「くっ!」
 
 キングダレスの拳をギリギリで防いだが、防いだ腕が痺れてしまい動かない。
 この王様……、強すぎる!
 今追い討ちされたら……、あれ? 追い討ちしてこない?
 キングダレスは腕を組んで立ち止まっている。

「ふむ……」
 
 試合の最中に考え事とか、だいぶ舐められてるな……。

「よし、次の一撃を受け切れたのなら及第点としてやろう」
 
 受け切ったらだと?
 そう思った瞬間、俺の腹には鈍く骨が砕ける音と、ステージ外に吹っ飛ばれていた。

「ご主人様!」
「ケンジ!」
「ケンジさん!」
 
 皆んなが駆け寄って来ているのを意識が無くなりながら見つめていた。


 俺が目覚めたのは既に日も暮れた時間。
 目覚めた事に気がついたレアは飛びついて来てくる。

「ご主人様! 良かった……」
「ケンジ気がついたの!?」
 
 飛びついたレアを見たエイルも俺が寝ているベッドまで見に来てくれる。

「俺は……」
 
 そうだった、吹っ飛ばされて試合に負けたんだったな……。
 部屋の扉が開くと、ルルアが飲み物を持って入って来た。

「ケンジさん!」
 
 素早くテーブルに飲み物を置くと、ルルアも俺に抱きついて来た。

「あー、コホン……」
 
 皆んなにもみくちゃにされていた時、扉から入って来たのはキングダレスだった。

「どうやら気がついたようだな。 いやーすまん。 少しやり過ぎてしまったようだ。 妻に怒られてしまったよ」
 
 皆んなに抱きつかれている俺を見ながらガッハッハと笑っている。

「さすがは王様です。 とても勝てそうも無いです」
「まあ、ワシは王だからのう。 だが、あの一撃で死ななかったのは評価に値する」
 
 死ななかったって……。
 でもあの一撃は普通の打撃とは違う感じだった。

「それでどうだ? 少しワシと修行でもしてみんか?」
「修行ですか?」
 
 俺の体は技術以外は修行でも上がらない。

「うむ、ワシの技を習得するだけの物は持っているようだからな」
 
 こうして、王様との修行が始まる。

「まずはワシの事は王と思わず、ギオルグと呼んでくれ」
「わかりました」
 
 その方が話しやすい。

「ケンジは【闘気】を知っておるか?」
「闘気ですか? 簡単な事なら。 闘気は生命エネルギーみたいな物ですよね?」
「そうだ。 その闘気を拳や武器に纏わせて強度や攻撃力を上げて戦う者もいる。 だが闘気はあくまでも生命エネルギー。 限界はある。 だが、ワシの使う技は少し違ってな」
 
 ギオルグさんは手の平を前に出してくる。
 その手の平には何かの膜がうっすらと見える。

「これが闘気。 そしてこれが……」
 
 そのうっすらと見えていた膜が消え、代わりに薄紫色の何かが出てくる。

「これがワシの技、魔闘気まとうきだ」
「魔闘気?」
「闘気と魔力を融合させ、攻撃した相手に魔力と闘気を叩き込む荒技じゃ!」
「なんか……、凄いですね……」
「だろう。 この技は固い鎧も衝撃を通し、内部を破壊する技でな、生命体なら大抵は倒せるだろう」
「そんな凄い技を教えてしまって良いんですか?」
「ん? 構わんぞ。 習得出来るかはその者のセンスと努力次第だからな」
「わかりました。 ご指導お願いします」
「うむ」

 ギオルグさんの指導は簡単だった。
 元々魔力が高い俺は、闘気を扱えるように丸一日呼吸法とイメージトレーニングを繰り返した。
 五日もすれば闘気が扱えるようになって来た。
 それを魔力と同時に発動させて練り上げる。
 これは割とすんなり出来てしまい、ギオルグさんは驚き、背中をバンバン叩いてくると、ガハハと笑っていた。

「こんなに早く習得出来ると思わなかったぞ」
 
 玉座に座り、王様として話す。

「いえ、キングダレス様の教えが素晴らしかったからだと思います」
「謙遜はよい。 お前にはまだやってもらう事があるからな」
「姫の救出ですね」
「そうだ」
「それで、どこにいるかわかりますか?」
「どうやら、帝都ヴァルスケンにいるらしくてな」
 
 ヴァルスケン……、そこから逃げて来たんだけどな……。

「頼むぞ」
「任せてください」

 情報収集をしようとガル支部へ戻る事にした。
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