黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第二章 旅の行方

第三十二話 アームダレスの王

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 アームダレスのガル支部でホランさんから頼まれた依頼を受け、アームダレスの城に案内された。
 そして俺は何故か豪華でひっろい風呂に入っている。
 しかも良い匂いの木の風呂だ。 こう言う所は和風なんだな。
 風呂は久しぶりだから嬉しい。

「ふ~~……、良い湯だ……」
 
このままハ~ビバノンノンと歌いたい所だけど、誰かが入って来た。

「お、先客か? 人族とは珍しいな」
 
入って来たのはデカい虎だ!
 顔は虎そのものだが、立って歩いている獣人だ。
 タオルを肩にかけ、素っ裸で入って来た。
 体もデカいが下もデカい!

「あ、すいません」
 
 湯船から上がろうとしたが、「かまわん、かまわん」 とそのまま入っていてくれとジェスチャーされた。
 それにしても……、凄い威圧感がある。
 誰なんだこの獣人は……。
 考えていると、その獣人は体を洗い終え、湯船に入ってくる。

「ふ~~、一日の仕事の後の風呂はたまらんな」
 
 虎の獣人は頭にタオルを乗せて気持ち良さそうにしている。
 でもその気持ちはわかる。

「それで、お前さんは誰なんだ?」
「俺ですか? 俺は━━」
 
 俺が名前を言う前に、虎の獣人が話し始めた。

「いやすまん。 名を聞くならワシが先だな。 ワシの名は【ギオルグ】だ」
「俺はケンジと言います。 守護盾ガルガードです」
「ガルか。 この国に来た理由は?」
 
 理由か、ルルアの為とは話せない。

「観光ですよ」
「なるほど観光か。 この国はどうだ?」
「まだ着いたばかりですが、良い国ですね。町の人を見てるとわかります」
「さすがガルだな。 よく見ておる。この国は最高だろう!」
 
 ガハハと笑う姿は本当に嬉しそうだ。

「しかしガルでここにいると言う事は依頼を受けたのだろう?」
 
 なんでこのギオルグさんは依頼の事を知っている?

「内容はまだわからないですけど、守護盾ガルガード支部のホランさんの紹介です」
「なるほど、ホランの紹介か。 しかし、内容も知らずに依頼を受けるとはな」
「ははは……」
 
 ルルアの安全を確保出来たら、今度はマブルさんを迎えに行かないと行けないからな。 先立つものが無いのは辛い。

「ギオルグさんはこの城の人ですか?」
「ん? ワシか? ふふ、そうだな……、さて、ワシは先に上がらせてもらうよ」
 
 ギオルグさんは先に風呂から上がって行った。
 体の動き一つみてもあの人強いな。
 さて、俺も上がるか。 あんまり長く入ってると、エイルが死んでしまうかも知れないからな。

 風呂から上がり、着替えを済ませて部屋に戻る。
 部屋には既に風呂から上がっている三人がいる。
 部屋の中は風呂上がりのいい匂いが立ち込めている。

「ケンジ遅いですよ~、お腹空き過ぎました~」
「ごめんごめん」
 
 全員揃った所で、獣人のメイドさんが案内してくれる。

 王宮の食堂は広く、テーブルは長い。
 執事さんとメイドさんが椅子を引いてくれて、豪華な椅子に座る。
 食事を待っていると、豪華な衣装とマントに身を包み、王冠を被った虎顔のデカい獣人、同じく品のある女性の虎の獣人が入って来て、椅子に座る。
 アームダレスの王様とお妃様だ。
 …………あの獣人は風呂で会った!?

「待たせたな」
 
 王様が手を叩くと、料理が次々と運ばれてくる。
 キュルル~。
 並べられて行く料理の美味しそうな匂いにエイルのお腹が鳴る。

「はーっはっは! 自由に食べてくれ」
 
 俺を含めて全員、こんな場所でのマナーなど知らない。
 知っている限りの知識でスプーンとフォークを使うが、難しい。

「マナーは国によって違う。 気にせず食べてくれ」
 
 そう言って王様は手掴みで肉を取り、豪快に食らいつく。
 お妃様はシルバーのカトラリーを使い、品のある食べ方をしている。
 それをルルアは真似て食べているのをお妃様は見て微笑んでいる。

「食べながらで良いから聞いてくれ。 お前達は依頼を受けにここに来たのだな?」
「はい、そうです」
「その依頼を出したのはワシでな」
 
 ブッ!!
 料理を吐き出しそうになった。
 まさか王様からガルに直々の依頼なんて……。

「驚いたかも知れんが、ワシの娘が行方不明になってしまってな」
 
 娘……、王様の娘って言うと、お姫様じゃないか!!

「もしかして、獣人攫いですか?」
「ワシの娘はそんな輩に負けるほど弱くは無い。 だが、娘の侍女が行方不明になってな。 探しに行ってしまったのだよ」
 
 お姫様が侍女を探しに行くなんて、良いお姫様じゃないか。

「それで、お姫様を探す事が私達の依頼ですか?」
「そうなる。 だが!」
 
 王様は先を立ち上がり、俺に向かって話す。

「ワシの娘より弱い奴には要はない! だから明日、ワシと戦ってもらう!」
「え!?」
 
 俺が王様と戦う?

「ワシに勝てば依頼を任せる」
 
 王様と戦ったりして大丈夫なのだろうか?

「大丈夫ですよ。 我々獣人族の王は戦いに強く無いと王にはなれませんから」
 
 俺の心配に気がついたのか、お妃様が説明してくれた。

「そう! ワシはこれまで負けた事は無い。 だから王なのだ。 今もこれからもな」
 
 自信満々に肉を掴んで笑っている。

 最初に通された部屋に戻ると、お腹を膨らませたエイルがソファーに横たわり、満足そうにしている。

「パワーアップしたご主人様は負けませんよ」
 
 確かにパワーアップしたし、良い勝負出来るはずだ。

「王様を倒したら、ケンジが王様になるのかしら?」

 それは遠慮したいな。

「でもあの王様、とっても強そうでしたよ」
 
 ルルアは心配してくれている。

「頑張るよ」
 
 少し心配もあるが、王様にはパワーアップした俺を見せてやろう。
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