黎明の錬金技工術師《アルケミスター》と終焉の魔導機操者《アーティファクター》

かなちょろ

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第二章 旅の行方

第二十四話 合流

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「無事じゃったか!」

 人攫いからルルアを助け出し、マブルさんの家に帰って来た。

「お爺ちゃん!」
 
 ルルアはマブルさんに抱きつき涙を流す。
 レアはそれを見て微笑んでいる。
 心配しただろうしな。

「お前さん方、ありがとうな」
 
 マブルさんも涙ぐんでお礼を言ってくる。

「無事に救出出来て良かったですよ」

 家に入り、ルルアの淹れてくれるお茶を飲みながら話しを始めた。

「ケンジと言ったかの。 お前さんも人造人間で合っておるか?」
「はい」
 
 マブルさんは気がついていたようだ。
 もう隠す必要も無いだろう。
 俺とエイルは出会いから今までの話しをマブルさんに話した。

「なるほどのぉ……」

 考え込むマブルさんは何か知っているのか?

「わしも話しだけじゃが、十年位前、その分野に天才的な夫婦がいたと聞いた事がある」
 
 もしかしてその夫婦なら俺の事がわかるかも知れないな。

「それならそのご夫婦を探せば、何かわかるんでしょうか?」
 
 マブルさんは顎ひげを触りながら残念そうに話す。

「残念じゃが、その夫婦は既に亡くなったと聞いておる」
「そうですか……」
 
 人造人間については分からず……か……。

「人攫いは何故小さな子を攫っていたのでしょう?」
 
 レアは台所にいるルルアを見ながら疑問に思って話す。

「それも分からんのう……、じゃが、ルルアだけ特別と言う話しじゃったようじゃな」
「そうなんです。 他の子とは別の場所に連れて行く予定だったそうです」
「別に連れて行ってどうするつもりじゃったのか……」
「わかりませんね」
「わからない事をあれこれ言っても仕方ない。 それで、三人はこれからどうするつもりなんじゃ?」
 
 マブルさんの問いにレアが答える。

「はい、ご主人様はこのままではシャッテに勝てないと思いますので、パワーアップを推奨します」
「パワーアップ? 俺が?」
「この帝国には古代の塔がありますよね?」
「確か帝都から南東に合ったはずじゃが、もう調べ尽くされとるぞ?」
「それはわかっています。 ですが……」
「そっか! 隠し部屋ですね!」
 
 エイルは手をポンと思い出したように叩いて立ち上がる。

「そうか、俺やレアが見つかったように、その塔にも隠し部屋があるかも知れないって事か!?」
「そうなると、新しい人造人間がいるって事ですかね?」
 
 確かに。
 エイルの考えはもっともだ。

「いえ、おそらく人造人間はご主人様と私だけでしょう」
「そうなのか? なら、塔に何かあるって事か?」
「もちろんです。 ご主人様がパワーアップ出来る物があるはずです」
 
 レアは何故そんな事を知っているのか? と、聞きたいがレアは俺をサポートするための答えになんとなく納得した。

「ほほー、それは興味深いの」
 
 マブルさんとルルアは目を輝かせてこちらを見ている。

「お二人は危ないので、連れて行けません」
「「そんなあ」」
 
 マブルさんもルルアも残念そうに顔を伏せてしまう。
 そうだ、マブルさんにはこれを頼もう。

「マブルさん、この剣なんですが.…」

 俺はサラマンダーとの戦いで折れてしまっている剣をマブルさんに直してもらおうと渡す。

「ほお、これは……」
「直りそうですか?」
 
 マブルさんは魔導法術機ガルファーをまじまじと見つめている。

「これは面白いの。 この魔導法術機ガルファーはなかなかどうして……ふむ……」

 マブルさんは研究者モードに入ってしまったようだ。

 マブルさんとルルアに剣の事を頼み、俺とレアは塔に向かって出発する。
 エイルは二人に万が一が無いように、護衛として付いていてもらう事にした。

 レアと東門に向かって歩いていると、一人の男性がこちらに走ってくる。

「すまないが、このくらいのせの低い女の子の獣人を見なかったか?」
 
 男は身振り手振りでレアに聞いている。

「いえ、見てないですが迷子ですか?」
「……そうか……、見てないならいい……」
 
 そう言うと黒いローブに身を包み、黒く広い鍔がついた帽子を身に着けていた男性はそのまま何処かに行ってしまった。

「なんだったんだ?」
「わかりませんが、人を探しているようでした」
「見つけたら保護しといてやるか」
「そうですね」

 やっと東門に着いた。
 帝都広すぎだろ。
 東門を出て南東に向かうと【ドナル】と言う町があるらしい。
 まずはそこを目指す。
 お金の無い俺は獣車や竜車に乗る事が出来ないので、歩いて向かう事に……。
 金欠は厳しい……。
 その間にレアにパワーアップについて詳しく聞く事にした。

「なあレア、パワーアップってどんな感じなんだ?」
 
 帝都では俺に引っ付く事なく歩いていたレアだが、門を出た途端に腕に引っ付いて来た。

「それはご主人様が強くなるってことだよ」
 
 なんか喋り方まで変わって無い?

「つ、強くなるってどう変わるんだ?」
「今のご主人様は簡単に言えばレベル1ですにゃ。 私達人造人間は普通の人間と違って鍛えて強くなるって感じじゃ無いだよ」
「そうなのか」
「そうなのです。 技術力は上がっても、力や素早さ、耐久値なんかはどんなに鍛えても変わらないにゃ」
「それで、塔に行けばその辺りのステータスも上がると?」
「そうですにゃ!」
 
 レアはルンルンになって腕に抱きついて歩きづらさが増す。

「なあレア」
「なんですか? ご主人様」
「喋り方変わって無い?」
「あ…………、バレては仕方ないですね。 前に話した事は嘘です。 ご主人様と二人きりになると変になるんですにゃ」
 
 めちゃめちゃ演技っぽいが、まあこの腕に触れる感触を自分から断る事も無いだろう。

 俺とレアは歩きに歩いて、【ドナル】の町に到着した。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 一方その頃……。
「ーーーーをこうしたらどうじゃ?」
「えー! ここはこっちじゃ無い?」
「なるほど、さすがわしの孫じゃ」
「えへへ~♪」
 
 マブルさんとルルアは二人でケンジから預かった魔導法術機ガルファーをあーでも無いこーでも無いと言い合っている。

「二人共楽しそうだな……、私もケンジ達に着いて行きたかったな~」
 
 そんな事を一人呟いているエイル。
 たが、そんな呟きは家の扉が蹴破られる音によって直ぐに消し飛ぶのだった……。
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