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第一章 魔導機《アーティファクト》
第二話 異世界
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エイルと【緋燭の塔】を出た俺達は、この辺りに生息しているガウラットを何匹か倒し、塔の南にある町【ガッドレージ】を目指している。
「しかし、魔生獣っての多いな」
「この辺りはガウラットの生息地ですからね。 そう少し行くと魔生獣も出なくなりますよ」
町は安全と言ってたけど、本当に大丈夫なんだろうか?
「見えました。 あそこが【ガッドレージ】です」
あの白い壁で囲まれた町が【ガッドレージ】か。
「町に着いたら食事にしましょ。 ケンジのお陰で魔石も稼げましたし」
魔石、魔生獣の体の中にある宝石のような石か。
町の入口には昼間なのに、外灯が点灯している。
「あの外灯は昼でも点いてるの?」
「この外灯の光りは魔生獣が嫌うので、侵入を防いでくれるんです」
なるほどな。 だから入口には誰もいないのか。
一人位見張り居ても良いと思うけど。
「着きました。 まずは魔石を換金してくるので、待ってて下さい」
エイルは走って行ってしまった。
町の様子を見ると、思いっきり中世ファンタジーでは無く、ちゃんと文明が発達してる事がわかる。
車は走っていないが代わりに馬車? が走っている。
馬では無くでっかい四つ足のトカゲの様な魔生獣だけど……。
地球にいた時程では無いが、綺麗な町並みだ。
本当に異世界に来ちゃったんだな……。
「お待たせしました。 さ、行きましょう!」
「ちょ、ちょっと待って」
「なんですか?」
「俺……、まだ裸なんだけど……」
ローブの下はスッポンポン。
「あ! 忘れてました! まずは服を買いに行かないと!」
服屋で服を見繕ってもらう。
冒険者風の服装だけど、こっちの世界ではこの服が一般的のようだ。
こんな服装少し憧れてたんだよね。
エイルが服代を支払いしてくれたので、代金は後で必ず返す約束をした。
「別に良いですよ」 と言われたけどね。
太っ腹だな。
「では食事に行きましょう!」
よっぽどお腹空いてたようだ。 俺の服を選んでいる時もきゅる~と可愛い音が聞こえてたし。
「ここです! ここのご飯が美味しいんですよ! 早速入りましょう!」
ガッドレージの料理店【ガウピ】
店主が【ガウピッガー】の料理が得意なのでこのような店名となった話しを、エイルが注文した料理をウキウキと待ちながらしながら話してくれた。
【ガウピッガー】とは豚や猪に似た魔生獣らしい。
魔生獣食べられるのか……。
運ばれて来た料理は【ガウピッガーの香草焼き】厚さが3㎝はあるだろうサイズ。
そして黒パンが3つ、2人前はあるサラダ、芋のスープまでを1人で食べている。
そして俺にも同じ量がやって来た。
「これちょっと多くない……?」
「ふぉうれふか?」
勢いよく食べるエイルは食べきれず残していた俺の分も綺麗に平らげた。
「あ~美味しかった! 満足満足」
膨らんだお腹をさすって満足そうにこっちの世界のビールである【レベール】と言う飲み物を飲んでいる。
エイルは未成年じゃ無いの? と聞いてみたが、この世界では15歳から成人なので16歳のエイルは飲んでも良いらしい。
「さて、ケンジは聞きたい事があるんだよね?」
「そうだな。 まずはこの世界について教えてくれ」
聞きたい事は沢山ある。
「そうですね。 この世界全体は【ヴァーラシア】と言いますね」
「ヴァーラシア。 それであの塔や俺は何者なんだ?」
「私も専門外なんで、あんまり詳しくは無いですが、あの緋燭の塔は古代に存在していた超文明の遺産です。 今の技術力では全く理解出来ない超技術なんですよ」
急に前のめりなり小声で話して来た。
「その古代の超技術が作り上げたのが【人造人間】のケンジさんだと思います」
俺って人造人間なのか……。
「人造人間って何が出来るんだ?」
見た目はその辺の人と変わらないように見えるが……。
「人造人間は普通の人より力や魔力が強いんじゃ無いかって聞いた事がありますが、実際に人造人間を発見したと言う記録は見た事ありませんね」
「俺の他にいないのか」
「う~ん……、いるって言うのは聞いた事無いですね。 ただ古代にはそう言う研究がされていたかもって話しです」
人造人間は俺だけなのか……。
「さっき魔力って言ってたけど、魔法ってあるの? 俺も使えたりする?」
異世界と言えば魔法だよね。
「人造人間はどうなのかわかりませんけど、私は簡単な魔術なら使えますよ。 この【魔導法術機】があればですけど」
出して来たのは手袋の甲の部分にレンズの様な半球体の透明な物。 レンズの中には何やら幾何学模様の様な物が書いてある。 そして手首部分に何か長方形の物をはめ込む場所が三つある。
「この部分に、魔石を精製した【魔導石】をはめ込んで、魔力を通すと魔術が使えます」
「なんで塔では使わなかったの?」
「えーと……、実はお金無くて魔導石買えなかったんです」
……食事でお金使い過ぎなんじゃ無いかな?
「本格的に魔法を学んでいる人は魔導法術機が無くても使えますよ」
「魔術と魔法は違うの?」
「はい。 魔術は魔導法術機に魔導石の魔力を借りて微力な魔力を流して使いますが、魔法は自分の魔力のみで使えます」
そんな違いがあるのか。
どっちでもいいから使ってみたいぞ。
「エイルは錬金技巧術師って言ってたよね?」
「はい。 私は【フルスレイグ】で錬金術を学んだんです」
フルスレイグ? そこがエイルの故郷なのかな?
「錬金術って鉄を金に変えたりとかするやつ?」
「鉄を金にですか? う~ん……、出来る人はいるかわかりませんね。 私の錬金術は魔石を【魔導石】にするのが得意なんです」
「ガウラットの魔石も錬金術で魔導石に出来たんじゃ無い?」
「ガウラットの魔石だと純度が低過ぎて錬金術してもお金にならないんです。 材料費の方がかかっちゃいます」
錬金には材料もかかるのか。 そして純度が低いと錬金しても無駄ってことね。
「他に錬金って出来ないのか?」
「簡単な物なら出来ますよ。 この小型爆弾とかですね」
「それってたしか、ガウラットと戦った時にとんでもない所に投げた爆弾?」
「あははー、作るのは出来るんですが投げるのは苦手なんですよ~」
エイルはレベールを飲みながら頭をかいている。
確かに投げるのは下手だったな。
「その魔導法術機は何処で手に入れられる? 俺も欲しい」
「魔導技工士のお店、通称魔技士のお店で売ってますけど、高いですよ」
「そうなの!?」
一文なしの俺には変えない……。
欲しかったんだけどな~。
「もし欲しいのでしたら、私と同じ【守護盾】をやってみませんか?」
「ガルガード?」
「はい、ちょっと詳しく語っちゃいますよ!」
エイルはレベールをごくごく飲むと、頬を染めた顔で話し始める。
「詳しく説明しますと、150年前の戦争で国境近くにある町をたった一人で守った元帝国の英雄の名前【レグリナント・ガルフィール】から取って、民間を守護する者として【守護盾】通称【ガル】が出来たんです」
「そのガルガードって何をするの?」
「守護盾は運送の護衛や魔生獣討伐など民間の依頼を受けて解決するお仕事です」
「儲かる?」
「依頼内容によりますね。 それに守護盾にはランクもあります。 ランクは【ブロンズ】【アイアン】【シルバー】【ゴールド】【プラチナ】【ミスリル】【オリハルコン】の七段階あります。 最初はブロンズからですね」
「エイルのランクは?」
「私はアイアンになったばかりなんです」
と、エイルはレベールを既に二杯もおかわりをしている。
エイルに借りた洋服代、食事代を返すには、守護盾をやって返すしか無いか。 この世界でお金を稼ぐ方法なんて知っているわけじゃ無いし。
「わかった。 俺もやってみるよ」
「なら、ガル支部に案内しますね」
二人合わせて銅貨50枚を支払い店を出る。
「今の種の模様が入ってる銅貨ってどの位の価値になるの?」
「シードコインですか? ん~、そうですね、今食べた食事が一人辺りシードコイン25枚ですね」
「そのシードコイン以外にも別のコインがあったりする?」
「コインの種類は、銅貨【シードコイン】 銀貨【リーフコイン】 金貨【クローバーコイン】の三種類です。 お金の単位は【ジル】ですね。この世界で幅広く使われていて、他の地域でもコインの価値も殆ど変わりません」
「この服はコイン何枚?」
「全部で370ジルです」
合計で395ジルの借りか。
「働いて返すよ」
「かまいませんよ。 私にはケンジがいますから」
「俺がいる?」
「そうですよ。 一緒に守護盾として働けば稼げますし、そ・れ・に、ケンジがレリックだったら値段なんてつけられないですから!」
「そ、そうか……」
エイルの勢いに押されるが、ジルを返す為と生活の為に、まずは守護盾にならないとな。
エイルがこの町で御厄介になっている宿【サニプ】に案内され、受付をする。
優しそうな宿のおばちゃんが裏から出てきた。
「あらエイルちゃん、この方は?」
「あ、えーと……、塔で拾って……じゃ無くて、今度守護盾を一緒にやるパートナーです」
「あら、エイルちゃんも良い男を捕まえるようになったわね」
「そんなこと無いですよ~」
なんだか二人で盛り上がってるな。
「別々の部屋にするかい? それとも……、一緒の部屋にしちゃうかい?」
このおばちゃんノリノリだな。
「お金有れば別々なんですが……、お金無いので、一緒で構いません」
「あら! そうかい~。 じゃあ、サービスしちまおうかね」
「ありがとうサニーさん」
部屋の鍵を受け取ると、エイルに「着いて来て」と部屋まで案内される。
「ここが私が借りている部屋になります」
部屋のなかは素朴な感じだが、布団もふかふかそうだ。
観葉植物もあるなんてなかなか良い部屋だ。
「私はシャワー浴びてくるけど、絶対覗かないでね」
「わかってるよ」
シャワー室に入って行くエイルを見送り、クッションのある椅子に座る。
この世界は俺のいた世界とは違う。
俺はこの世界で人造人間として生まれ変わったようだけど、この世界で何をすれば良いのか?
生きて行く為にはお金が必要だ。
守護盾の仕事をして、余生を過ごすか。
せっかくの異世界だ。
いろんな場所に行って世界を楽しもう。
幸いこの体は頑丈に出来ているようだしな。
エイルを瓦礫から庇った傷は直ぐに癒えたんだよな。 人造人間は少し位の傷なら自然治癒をするのかも知れない。
この身体の事も色々知って行かないとな。
それと、明日からはエイルの手伝いをして、早く守護盾の仕事に慣れないと。
そんな事を考えている間にウトウトと眠ってしまっていた。
エイルが俺の事を忘れて上半身裸でシャワーから出て来ている事も知らずに……。
「しかし、魔生獣っての多いな」
「この辺りはガウラットの生息地ですからね。 そう少し行くと魔生獣も出なくなりますよ」
町は安全と言ってたけど、本当に大丈夫なんだろうか?
「見えました。 あそこが【ガッドレージ】です」
あの白い壁で囲まれた町が【ガッドレージ】か。
「町に着いたら食事にしましょ。 ケンジのお陰で魔石も稼げましたし」
魔石、魔生獣の体の中にある宝石のような石か。
町の入口には昼間なのに、外灯が点灯している。
「あの外灯は昼でも点いてるの?」
「この外灯の光りは魔生獣が嫌うので、侵入を防いでくれるんです」
なるほどな。 だから入口には誰もいないのか。
一人位見張り居ても良いと思うけど。
「着きました。 まずは魔石を換金してくるので、待ってて下さい」
エイルは走って行ってしまった。
町の様子を見ると、思いっきり中世ファンタジーでは無く、ちゃんと文明が発達してる事がわかる。
車は走っていないが代わりに馬車? が走っている。
馬では無くでっかい四つ足のトカゲの様な魔生獣だけど……。
地球にいた時程では無いが、綺麗な町並みだ。
本当に異世界に来ちゃったんだな……。
「お待たせしました。 さ、行きましょう!」
「ちょ、ちょっと待って」
「なんですか?」
「俺……、まだ裸なんだけど……」
ローブの下はスッポンポン。
「あ! 忘れてました! まずは服を買いに行かないと!」
服屋で服を見繕ってもらう。
冒険者風の服装だけど、こっちの世界ではこの服が一般的のようだ。
こんな服装少し憧れてたんだよね。
エイルが服代を支払いしてくれたので、代金は後で必ず返す約束をした。
「別に良いですよ」 と言われたけどね。
太っ腹だな。
「では食事に行きましょう!」
よっぽどお腹空いてたようだ。 俺の服を選んでいる時もきゅる~と可愛い音が聞こえてたし。
「ここです! ここのご飯が美味しいんですよ! 早速入りましょう!」
ガッドレージの料理店【ガウピ】
店主が【ガウピッガー】の料理が得意なのでこのような店名となった話しを、エイルが注文した料理をウキウキと待ちながらしながら話してくれた。
【ガウピッガー】とは豚や猪に似た魔生獣らしい。
魔生獣食べられるのか……。
運ばれて来た料理は【ガウピッガーの香草焼き】厚さが3㎝はあるだろうサイズ。
そして黒パンが3つ、2人前はあるサラダ、芋のスープまでを1人で食べている。
そして俺にも同じ量がやって来た。
「これちょっと多くない……?」
「ふぉうれふか?」
勢いよく食べるエイルは食べきれず残していた俺の分も綺麗に平らげた。
「あ~美味しかった! 満足満足」
膨らんだお腹をさすって満足そうにこっちの世界のビールである【レベール】と言う飲み物を飲んでいる。
エイルは未成年じゃ無いの? と聞いてみたが、この世界では15歳から成人なので16歳のエイルは飲んでも良いらしい。
「さて、ケンジは聞きたい事があるんだよね?」
「そうだな。 まずはこの世界について教えてくれ」
聞きたい事は沢山ある。
「そうですね。 この世界全体は【ヴァーラシア】と言いますね」
「ヴァーラシア。 それであの塔や俺は何者なんだ?」
「私も専門外なんで、あんまり詳しくは無いですが、あの緋燭の塔は古代に存在していた超文明の遺産です。 今の技術力では全く理解出来ない超技術なんですよ」
急に前のめりなり小声で話して来た。
「その古代の超技術が作り上げたのが【人造人間】のケンジさんだと思います」
俺って人造人間なのか……。
「人造人間って何が出来るんだ?」
見た目はその辺の人と変わらないように見えるが……。
「人造人間は普通の人より力や魔力が強いんじゃ無いかって聞いた事がありますが、実際に人造人間を発見したと言う記録は見た事ありませんね」
「俺の他にいないのか」
「う~ん……、いるって言うのは聞いた事無いですね。 ただ古代にはそう言う研究がされていたかもって話しです」
人造人間は俺だけなのか……。
「さっき魔力って言ってたけど、魔法ってあるの? 俺も使えたりする?」
異世界と言えば魔法だよね。
「人造人間はどうなのかわかりませんけど、私は簡単な魔術なら使えますよ。 この【魔導法術機】があればですけど」
出して来たのは手袋の甲の部分にレンズの様な半球体の透明な物。 レンズの中には何やら幾何学模様の様な物が書いてある。 そして手首部分に何か長方形の物をはめ込む場所が三つある。
「この部分に、魔石を精製した【魔導石】をはめ込んで、魔力を通すと魔術が使えます」
「なんで塔では使わなかったの?」
「えーと……、実はお金無くて魔導石買えなかったんです」
……食事でお金使い過ぎなんじゃ無いかな?
「本格的に魔法を学んでいる人は魔導法術機が無くても使えますよ」
「魔術と魔法は違うの?」
「はい。 魔術は魔導法術機に魔導石の魔力を借りて微力な魔力を流して使いますが、魔法は自分の魔力のみで使えます」
そんな違いがあるのか。
どっちでもいいから使ってみたいぞ。
「エイルは錬金技巧術師って言ってたよね?」
「はい。 私は【フルスレイグ】で錬金術を学んだんです」
フルスレイグ? そこがエイルの故郷なのかな?
「錬金術って鉄を金に変えたりとかするやつ?」
「鉄を金にですか? う~ん……、出来る人はいるかわかりませんね。 私の錬金術は魔石を【魔導石】にするのが得意なんです」
「ガウラットの魔石も錬金術で魔導石に出来たんじゃ無い?」
「ガウラットの魔石だと純度が低過ぎて錬金術してもお金にならないんです。 材料費の方がかかっちゃいます」
錬金には材料もかかるのか。 そして純度が低いと錬金しても無駄ってことね。
「他に錬金って出来ないのか?」
「簡単な物なら出来ますよ。 この小型爆弾とかですね」
「それってたしか、ガウラットと戦った時にとんでもない所に投げた爆弾?」
「あははー、作るのは出来るんですが投げるのは苦手なんですよ~」
エイルはレベールを飲みながら頭をかいている。
確かに投げるのは下手だったな。
「その魔導法術機は何処で手に入れられる? 俺も欲しい」
「魔導技工士のお店、通称魔技士のお店で売ってますけど、高いですよ」
「そうなの!?」
一文なしの俺には変えない……。
欲しかったんだけどな~。
「もし欲しいのでしたら、私と同じ【守護盾】をやってみませんか?」
「ガルガード?」
「はい、ちょっと詳しく語っちゃいますよ!」
エイルはレベールをごくごく飲むと、頬を染めた顔で話し始める。
「詳しく説明しますと、150年前の戦争で国境近くにある町をたった一人で守った元帝国の英雄の名前【レグリナント・ガルフィール】から取って、民間を守護する者として【守護盾】通称【ガル】が出来たんです」
「そのガルガードって何をするの?」
「守護盾は運送の護衛や魔生獣討伐など民間の依頼を受けて解決するお仕事です」
「儲かる?」
「依頼内容によりますね。 それに守護盾にはランクもあります。 ランクは【ブロンズ】【アイアン】【シルバー】【ゴールド】【プラチナ】【ミスリル】【オリハルコン】の七段階あります。 最初はブロンズからですね」
「エイルのランクは?」
「私はアイアンになったばかりなんです」
と、エイルはレベールを既に二杯もおかわりをしている。
エイルに借りた洋服代、食事代を返すには、守護盾をやって返すしか無いか。 この世界でお金を稼ぐ方法なんて知っているわけじゃ無いし。
「わかった。 俺もやってみるよ」
「なら、ガル支部に案内しますね」
二人合わせて銅貨50枚を支払い店を出る。
「今の種の模様が入ってる銅貨ってどの位の価値になるの?」
「シードコインですか? ん~、そうですね、今食べた食事が一人辺りシードコイン25枚ですね」
「そのシードコイン以外にも別のコインがあったりする?」
「コインの種類は、銅貨【シードコイン】 銀貨【リーフコイン】 金貨【クローバーコイン】の三種類です。 お金の単位は【ジル】ですね。この世界で幅広く使われていて、他の地域でもコインの価値も殆ど変わりません」
「この服はコイン何枚?」
「全部で370ジルです」
合計で395ジルの借りか。
「働いて返すよ」
「かまいませんよ。 私にはケンジがいますから」
「俺がいる?」
「そうですよ。 一緒に守護盾として働けば稼げますし、そ・れ・に、ケンジがレリックだったら値段なんてつけられないですから!」
「そ、そうか……」
エイルの勢いに押されるが、ジルを返す為と生活の為に、まずは守護盾にならないとな。
エイルがこの町で御厄介になっている宿【サニプ】に案内され、受付をする。
優しそうな宿のおばちゃんが裏から出てきた。
「あらエイルちゃん、この方は?」
「あ、えーと……、塔で拾って……じゃ無くて、今度守護盾を一緒にやるパートナーです」
「あら、エイルちゃんも良い男を捕まえるようになったわね」
「そんなこと無いですよ~」
なんだか二人で盛り上がってるな。
「別々の部屋にするかい? それとも……、一緒の部屋にしちゃうかい?」
このおばちゃんノリノリだな。
「お金有れば別々なんですが……、お金無いので、一緒で構いません」
「あら! そうかい~。 じゃあ、サービスしちまおうかね」
「ありがとうサニーさん」
部屋の鍵を受け取ると、エイルに「着いて来て」と部屋まで案内される。
「ここが私が借りている部屋になります」
部屋のなかは素朴な感じだが、布団もふかふかそうだ。
観葉植物もあるなんてなかなか良い部屋だ。
「私はシャワー浴びてくるけど、絶対覗かないでね」
「わかってるよ」
シャワー室に入って行くエイルを見送り、クッションのある椅子に座る。
この世界は俺のいた世界とは違う。
俺はこの世界で人造人間として生まれ変わったようだけど、この世界で何をすれば良いのか?
生きて行く為にはお金が必要だ。
守護盾の仕事をして、余生を過ごすか。
せっかくの異世界だ。
いろんな場所に行って世界を楽しもう。
幸いこの体は頑丈に出来ているようだしな。
エイルを瓦礫から庇った傷は直ぐに癒えたんだよな。 人造人間は少し位の傷なら自然治癒をするのかも知れない。
この身体の事も色々知って行かないとな。
それと、明日からはエイルの手伝いをして、早く守護盾の仕事に慣れないと。
そんな事を考えている間にウトウトと眠ってしまっていた。
エイルが俺の事を忘れて上半身裸でシャワーから出て来ている事も知らずに……。
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