1 / 77
第一章 魔導機《アーティファクト》
第一話 出会い
しおりを挟む
どの位眠ったのだろうか……?
コポコポと水の中から空気が出ている音だけが聞こえる……。
四肢は動かない……。
覚えているのは駅構内で暴れていた男性から女性を守った時に刃物で刺された記憶があるだけだ。
でも今は痛くも無い。
死んで天国にでもいるのか?
なんかこのままでいるのも良いかもな……。
「……きゃ………ぁ……ぁ……ぁぁあああーーーー!!」
ゴロゴロゴロゴロ……。
ズッシーン!!
何かが激しく壊れる音が聞こえてくる。
「いった~……、もう、なんなのよ!」
……女性の声か?
「え!? 何ここ……? 見た事無い魔導機ばかりじゃない……。 私ってやっぱり運が良いかも!」
結構近くにいる?
「何これ! 人? もしかして人形……。 こんなに綺麗に残っているなんて」
コンコン。
どうやら声の主が俺の所で何かを叩いているみたいだ。
「なんだかわからないわね……。 こっちはどうかな?」
バキンッ!
バチバチ。
ボンッ! ボンッ!
「え! なになに!? あ! あっちの魔導機から火が! もしかして私がぶつかったせいー!?」
爆発音があちこちから聞こえてる。
「あ~ん! ごめんなさ~い! 止まって~!!」
ポチっ!
……ゴボーーーー!!
ふわふわしていた俺の体に重力が感じられ始めた。
「わー! どうしよ! 起動しちゃったよう!!」
だんだんと意識がハッキリしてくる。
「私、魔技士じゃないから全然わかんないよー!」
朦朧としていた意識が次第にハッキリとしだし、目の前の状況が見え始めた。
誰かが機械をバンバン叩いてるな……。
一歩踏み出すと目の前の硝子が開く。
同時に機械を叩いていた女性が振り向いた。
「君は……?」
「あ……、う……うし……」
「うし?」
「後ろ! 燃えてます!!」
振り向くと俺の後ろがゴウゴウと燃えている。
「うおおおお!!」
炎にびびって女性に駆け寄る。
「きゃああああ!!」
女性も叫び声を上げて逃げ出す。
「うおおおお!!」
「きゃああああ!!」
部屋中を2人で駆け回る。
「は、裸でこっち来ないでくださ~い!! それ以上近寄ったら小型爆弾を投げますよ!」
「え! いや、ちょっと待って……」
「きゃああああ!!」
その爆弾の威力はそんなに無かったが、投げた方向が良く無かった。
正面にいる俺の遥か右手側に爆弾が飛んで行く。
爆弾の爆発で機械から更に火の手が上がり、爆発音と共に部屋の天井が崩落して来る。
「あぶなっ!!」
爆発で天井が崩落した時、軽く感じる身体を素早く動かし、女性に覆いかぶさると瓦礫から守る事ができた。
「いたた~」
「大丈夫ですか?」
瓦礫をどかし、女性の手を引き座らせる。
「あ、ありがとう……ござ……、きゃああああ!!」
「ぐふぅっ!!」
女性に突き飛ばされ、瓦礫に激突。
頭からピューっと血が噴き出し、俺はもう一度死んでしまうのか?
「ごめんなさい、ごめんなさい、大丈夫ですか?」
女性が近寄って鞄から何か取り出している。
布をかけられ頭から顔全てに包帯がグルグル巻きされる。
「モガ……モガ……」
「ああ、ごめんなさい、ごめんなさい、私、包帯巻くの下手なんです」
自力で顔の部分だけ包帯を剥がすと、やっと女性の顔がハッキリ見えた。
「ふうー……、君は?」
「あ、自己紹介がまだでしたね。 私は錬金技工術師の【マキルド・エイル】と言います。 エイルと呼んでください」
「エイルさんですね」
「はい」
笑顔で返事をしてくる。 笑顔は可愛いのだが、この現状がいまいち飲み込めない。
俺はなんでこんな所に? 錬金技工術師ってなんだ?
「俺は……」
自己紹介をしようとした時、嫌な音がし始め、部屋が崩れ出した。
「大変! 早くこっちへ! 壁を爆破します!」
エイルさんは鞄からから爆弾を取り出すと壁に向かって……、あさっての方向へ投げた。
もちろん壁はノーダメージ。 別の機械が更に爆発する。
もうだめだ! と思った時、投球フォームの姿勢を崩し俺ごと転がり壁に激突するも、壁をすり抜けた。
すり抜けた壁の奥からは部屋が崩れている轟音が鳴り響く。
「助かりました~……」
「本当にな」
「いったいこの壁どうなっているのでしょう?」
エイルさんは壁をペタペタ触っている。
そのエイルさんの姿を見ると、俺のいた日本では見ない不思議な格好をしている。
白い羽が付いた赤いベレー帽、髪は赤いロングヘア、瞳はうっすらとした赤い色、紺のベストっぽい服装に赤いショートパンツで太腿は出ていて
背中には小さな赤いマントなんかも身に付けているようだ。
そしてヘソ出しで谷間が見える服装な為に気になってしまう……。
で、俺は……。
自分の体を改めて見ると、筋骨隆々で、腹筋もシックスパックに割れている。
いい身体だ。
ムスコさんは前よりデカくなってないか?
ん? ムスコさんが見える……?
「うわーー!!」
俺は急いで持っていた布で下半身を隠した。
部屋の中では薄暗くてわからなかったが、裸で女性を追い回してたのか……。
そりゃ逃げる訳だ……。
エイルさんは俺の声にびっくりしたのか、俺から距離を置いている。
当たり前か。
「あ、あの、貴方は?」
耳を赤らめながら顔を背けている。
そりゃそうか。
「あ、ああ……、俺は……獅堂 賢治」
俺が覚えているのは自分の名前と自分が殺された瞬間だけだ。
「シドウ ケンジ? この辺りでは聞かない名前ですね。 とりあえず、何か羽織る物が必要ですよね」
エイルさんは小さい鞄から、どう見ても入るはずの無い大きな黒いローブを取り出した。
「これでも羽織っていて下さい」
「このローブは?」
結構使い古した感じのローブだな。
「私の使っているローブで申し訳ありませんが……」
エイルさんはそっと渡してくる。
裸よりは助かるな。
「ありがとうございます。 お借りします」
ローブに身を包む。
丈が合っていなく、膝までしか無いが元々ダボっとしているローブなので、肩幅は丁度良い。
意外にもローブの前ボタンは止める事が出来たので、前を開きっぱなしにして、人に見せる事は無さそうだ。
「それで、ここは何処なんですか?」
「ここですか? ここは【エルメリオン王国】の西に位置する【緋燭の塔】の中です」
「緋燭の塔?」
エルメリオン王国と言う国も聞いた事がない。
「はい。 古代に造られた塔の中ですが、覚えて無いんですか?」
「記憶は……無いなあ……、それより古代の塔って!?」
「説明は塔を降りてから話しますよ」
エイルさんは塔の中を案内して進んで行く。
歩きながら考える。
俺は一度死んだ。
生まれ変わったのだろうか?
良くある転生? とか言うやつだろうか?
まだ良くわからない。
エイルさんに詳しく聞いてみないとな。
塔を下って行くと、奥の通路に何かモゾモゾと何かが動いている。
「気をつけて下さい! 魔生獣【ガウラット】です!」
「魔生獣?」
モゾモゾと動いていたのは、二匹のネズミ。
見た目こそネズミだが、大きさが大型犬位あり、額には小さな赤い宝石の様な物が付いている。
「私に任せて下さい。 私のこの小型爆弾が有ればあんな魔生獣イチコロです!」
エイルさんは得意げに小型爆弾を鞄から出し【ガウラット】に狙いを定めた。
「ちょっ! まっ……!」
「先手必勝! とう!」
俺が発した言葉よりエイルさんの動きの方が早く、投げた小さな樽型の小型爆弾は、やはり見当違いの方向へ飛んでいき、転がり爆発する。
「あ、あははーー……」
関係の無いので場所で爆発した爆発音に気がついたネズミの魔生獣【ガウラット】はこちらに気がついたようで、走って向かってくる。
「こうなったら仕方ありません。 戦います!」
エイルさんは鞄から短剣を取り出し構える。
何も持っていない俺は拳を構える。
あんな獣に勝てるのか? 内心超ビビってる。
尖っている歯がよく見える程口を開き直線的に突っ込んでくるガウラットを上手く躱して頭に肘を叩き込む。
床にめり込むように倒れ、ガウラットを倒した。
エイルさんの方は……。
ガウラットの歯を短剣で防いでいるが、力負けしている様子。
「見てないで助けてくださーーい!」
おっといけない、いけない。
俺はサッカーボールキックでガウラットの横腹を蹴り上げるとガウラットは壁まで飛び、生き絶えた。
「危なかったです。 助けてくれてありがとうございます」
「いや、でもあんな生物がいるんだ……」
地球では考えられないな。
「魔生獣はそこらじゅうにいますよ。 凶暴な魔生獣から大人しい魔生獣まで沢山です」
「へ~……」
この世界で生きていく事になるなら、色々勉強しとかないとな。
「それにしても、私って運が良いな~。 既に調べ尽くされちゃってると思ってたのに」
「そう言えばなんでエイルさんは……」
「エイル。 エイルで良いですよ。 私もケンジって呼ばせてもらいますから」
呼び方に不満があったのか正された。
いきなり呼び捨てで良いのか?
「わかった。 なんでエイルはこの塔に?」
「いや~、実は路銀が底をつきかけちゃいまして、何か残って無いかな~って思いまして。 はは……」
頭をかきながら照れてるけど、照れてる場合じゃないぞ。
「でも、ケンジを見つけられてラッキーだわ」
「俺を見つけられるとラッキーなのか?」
「だって、ケンジは古代技術の結晶なんですよ! もしかしたらレリックかも知れません!」
「レリック?」
「そうですね。 古代の超技術で作られ、今の技術ではとても再現する事は出来無い物を言います」
「俺は……、作られたのか?」
自分の手を開いて閉じるを繰り返してみる。
とても作られた体とは思えないが。
「あ……、ご、ごめんなさい。 作られたなんて……、失礼でしたね……」
エイルはペコペコと謝ってくる。
「いいよ、気にしてないから」
こっちは一度死んでるんだし。
「ケンジの価値は凄い高いはずなんですよ。 いくらの価値になるのか……」
エイルは舐めるようにジロジロと見てくるけど、売ったりしないよな……?
「それにケンジってお強いんですね」
「いや、まあ……」
地球では護身術程度の武術は学んでいたけど、多分この体の身体能力が高いのだろう。
「少しは心得が……」
きゅるる~~。
急に変な音が聞こえた。
「あ……。 な、なんでもないですよ。 そ、そうだ、魔石取って置かなきゃ」
エイルは倒したガウラットにナイフを突き立て、額にあった綺麗な宝石のような物を取り出した。
「それは?」
「これは魔石です。 魔生獣にはそれぞれ特徴のある魔石があります。 魔石は売れますし、錬金術の素材にもなりますから、忘れずに取って置かないと」
魔石を小さな鞄にしまったいる。
しかしこの世界は錬金術がある世界なのか?
もしかして魔法もあるのか?
「なあエイル、魔法も……」
きゅるる~~。
またしても何かの音が聞こえる。
「は、早く塔を出ましょう。 この塔を出て南に行けば【ガッドレージの町】です」
エイルはお腹を押さえて顔を赤らめている。
「もしかして、お腹空いた?」
「そんな事ありません! 昨日から何も食べて無くても平気です! そんな事より早く行きましょう」
急かされて、腹減りエイルの後を着いて行く。
ガッドレージの町に着いたら色々聞かないとな。
コポコポと水の中から空気が出ている音だけが聞こえる……。
四肢は動かない……。
覚えているのは駅構内で暴れていた男性から女性を守った時に刃物で刺された記憶があるだけだ。
でも今は痛くも無い。
死んで天国にでもいるのか?
なんかこのままでいるのも良いかもな……。
「……きゃ………ぁ……ぁ……ぁぁあああーーーー!!」
ゴロゴロゴロゴロ……。
ズッシーン!!
何かが激しく壊れる音が聞こえてくる。
「いった~……、もう、なんなのよ!」
……女性の声か?
「え!? 何ここ……? 見た事無い魔導機ばかりじゃない……。 私ってやっぱり運が良いかも!」
結構近くにいる?
「何これ! 人? もしかして人形……。 こんなに綺麗に残っているなんて」
コンコン。
どうやら声の主が俺の所で何かを叩いているみたいだ。
「なんだかわからないわね……。 こっちはどうかな?」
バキンッ!
バチバチ。
ボンッ! ボンッ!
「え! なになに!? あ! あっちの魔導機から火が! もしかして私がぶつかったせいー!?」
爆発音があちこちから聞こえてる。
「あ~ん! ごめんなさ~い! 止まって~!!」
ポチっ!
……ゴボーーーー!!
ふわふわしていた俺の体に重力が感じられ始めた。
「わー! どうしよ! 起動しちゃったよう!!」
だんだんと意識がハッキリしてくる。
「私、魔技士じゃないから全然わかんないよー!」
朦朧としていた意識が次第にハッキリとしだし、目の前の状況が見え始めた。
誰かが機械をバンバン叩いてるな……。
一歩踏み出すと目の前の硝子が開く。
同時に機械を叩いていた女性が振り向いた。
「君は……?」
「あ……、う……うし……」
「うし?」
「後ろ! 燃えてます!!」
振り向くと俺の後ろがゴウゴウと燃えている。
「うおおおお!!」
炎にびびって女性に駆け寄る。
「きゃああああ!!」
女性も叫び声を上げて逃げ出す。
「うおおおお!!」
「きゃああああ!!」
部屋中を2人で駆け回る。
「は、裸でこっち来ないでくださ~い!! それ以上近寄ったら小型爆弾を投げますよ!」
「え! いや、ちょっと待って……」
「きゃああああ!!」
その爆弾の威力はそんなに無かったが、投げた方向が良く無かった。
正面にいる俺の遥か右手側に爆弾が飛んで行く。
爆弾の爆発で機械から更に火の手が上がり、爆発音と共に部屋の天井が崩落して来る。
「あぶなっ!!」
爆発で天井が崩落した時、軽く感じる身体を素早く動かし、女性に覆いかぶさると瓦礫から守る事ができた。
「いたた~」
「大丈夫ですか?」
瓦礫をどかし、女性の手を引き座らせる。
「あ、ありがとう……ござ……、きゃああああ!!」
「ぐふぅっ!!」
女性に突き飛ばされ、瓦礫に激突。
頭からピューっと血が噴き出し、俺はもう一度死んでしまうのか?
「ごめんなさい、ごめんなさい、大丈夫ですか?」
女性が近寄って鞄から何か取り出している。
布をかけられ頭から顔全てに包帯がグルグル巻きされる。
「モガ……モガ……」
「ああ、ごめんなさい、ごめんなさい、私、包帯巻くの下手なんです」
自力で顔の部分だけ包帯を剥がすと、やっと女性の顔がハッキリ見えた。
「ふうー……、君は?」
「あ、自己紹介がまだでしたね。 私は錬金技工術師の【マキルド・エイル】と言います。 エイルと呼んでください」
「エイルさんですね」
「はい」
笑顔で返事をしてくる。 笑顔は可愛いのだが、この現状がいまいち飲み込めない。
俺はなんでこんな所に? 錬金技工術師ってなんだ?
「俺は……」
自己紹介をしようとした時、嫌な音がし始め、部屋が崩れ出した。
「大変! 早くこっちへ! 壁を爆破します!」
エイルさんは鞄からから爆弾を取り出すと壁に向かって……、あさっての方向へ投げた。
もちろん壁はノーダメージ。 別の機械が更に爆発する。
もうだめだ! と思った時、投球フォームの姿勢を崩し俺ごと転がり壁に激突するも、壁をすり抜けた。
すり抜けた壁の奥からは部屋が崩れている轟音が鳴り響く。
「助かりました~……」
「本当にな」
「いったいこの壁どうなっているのでしょう?」
エイルさんは壁をペタペタ触っている。
そのエイルさんの姿を見ると、俺のいた日本では見ない不思議な格好をしている。
白い羽が付いた赤いベレー帽、髪は赤いロングヘア、瞳はうっすらとした赤い色、紺のベストっぽい服装に赤いショートパンツで太腿は出ていて
背中には小さな赤いマントなんかも身に付けているようだ。
そしてヘソ出しで谷間が見える服装な為に気になってしまう……。
で、俺は……。
自分の体を改めて見ると、筋骨隆々で、腹筋もシックスパックに割れている。
いい身体だ。
ムスコさんは前よりデカくなってないか?
ん? ムスコさんが見える……?
「うわーー!!」
俺は急いで持っていた布で下半身を隠した。
部屋の中では薄暗くてわからなかったが、裸で女性を追い回してたのか……。
そりゃ逃げる訳だ……。
エイルさんは俺の声にびっくりしたのか、俺から距離を置いている。
当たり前か。
「あ、あの、貴方は?」
耳を赤らめながら顔を背けている。
そりゃそうか。
「あ、ああ……、俺は……獅堂 賢治」
俺が覚えているのは自分の名前と自分が殺された瞬間だけだ。
「シドウ ケンジ? この辺りでは聞かない名前ですね。 とりあえず、何か羽織る物が必要ですよね」
エイルさんは小さい鞄から、どう見ても入るはずの無い大きな黒いローブを取り出した。
「これでも羽織っていて下さい」
「このローブは?」
結構使い古した感じのローブだな。
「私の使っているローブで申し訳ありませんが……」
エイルさんはそっと渡してくる。
裸よりは助かるな。
「ありがとうございます。 お借りします」
ローブに身を包む。
丈が合っていなく、膝までしか無いが元々ダボっとしているローブなので、肩幅は丁度良い。
意外にもローブの前ボタンは止める事が出来たので、前を開きっぱなしにして、人に見せる事は無さそうだ。
「それで、ここは何処なんですか?」
「ここですか? ここは【エルメリオン王国】の西に位置する【緋燭の塔】の中です」
「緋燭の塔?」
エルメリオン王国と言う国も聞いた事がない。
「はい。 古代に造られた塔の中ですが、覚えて無いんですか?」
「記憶は……無いなあ……、それより古代の塔って!?」
「説明は塔を降りてから話しますよ」
エイルさんは塔の中を案内して進んで行く。
歩きながら考える。
俺は一度死んだ。
生まれ変わったのだろうか?
良くある転生? とか言うやつだろうか?
まだ良くわからない。
エイルさんに詳しく聞いてみないとな。
塔を下って行くと、奥の通路に何かモゾモゾと何かが動いている。
「気をつけて下さい! 魔生獣【ガウラット】です!」
「魔生獣?」
モゾモゾと動いていたのは、二匹のネズミ。
見た目こそネズミだが、大きさが大型犬位あり、額には小さな赤い宝石の様な物が付いている。
「私に任せて下さい。 私のこの小型爆弾が有ればあんな魔生獣イチコロです!」
エイルさんは得意げに小型爆弾を鞄から出し【ガウラット】に狙いを定めた。
「ちょっ! まっ……!」
「先手必勝! とう!」
俺が発した言葉よりエイルさんの動きの方が早く、投げた小さな樽型の小型爆弾は、やはり見当違いの方向へ飛んでいき、転がり爆発する。
「あ、あははーー……」
関係の無いので場所で爆発した爆発音に気がついたネズミの魔生獣【ガウラット】はこちらに気がついたようで、走って向かってくる。
「こうなったら仕方ありません。 戦います!」
エイルさんは鞄から短剣を取り出し構える。
何も持っていない俺は拳を構える。
あんな獣に勝てるのか? 内心超ビビってる。
尖っている歯がよく見える程口を開き直線的に突っ込んでくるガウラットを上手く躱して頭に肘を叩き込む。
床にめり込むように倒れ、ガウラットを倒した。
エイルさんの方は……。
ガウラットの歯を短剣で防いでいるが、力負けしている様子。
「見てないで助けてくださーーい!」
おっといけない、いけない。
俺はサッカーボールキックでガウラットの横腹を蹴り上げるとガウラットは壁まで飛び、生き絶えた。
「危なかったです。 助けてくれてありがとうございます」
「いや、でもあんな生物がいるんだ……」
地球では考えられないな。
「魔生獣はそこらじゅうにいますよ。 凶暴な魔生獣から大人しい魔生獣まで沢山です」
「へ~……」
この世界で生きていく事になるなら、色々勉強しとかないとな。
「それにしても、私って運が良いな~。 既に調べ尽くされちゃってると思ってたのに」
「そう言えばなんでエイルさんは……」
「エイル。 エイルで良いですよ。 私もケンジって呼ばせてもらいますから」
呼び方に不満があったのか正された。
いきなり呼び捨てで良いのか?
「わかった。 なんでエイルはこの塔に?」
「いや~、実は路銀が底をつきかけちゃいまして、何か残って無いかな~って思いまして。 はは……」
頭をかきながら照れてるけど、照れてる場合じゃないぞ。
「でも、ケンジを見つけられてラッキーだわ」
「俺を見つけられるとラッキーなのか?」
「だって、ケンジは古代技術の結晶なんですよ! もしかしたらレリックかも知れません!」
「レリック?」
「そうですね。 古代の超技術で作られ、今の技術ではとても再現する事は出来無い物を言います」
「俺は……、作られたのか?」
自分の手を開いて閉じるを繰り返してみる。
とても作られた体とは思えないが。
「あ……、ご、ごめんなさい。 作られたなんて……、失礼でしたね……」
エイルはペコペコと謝ってくる。
「いいよ、気にしてないから」
こっちは一度死んでるんだし。
「ケンジの価値は凄い高いはずなんですよ。 いくらの価値になるのか……」
エイルは舐めるようにジロジロと見てくるけど、売ったりしないよな……?
「それにケンジってお強いんですね」
「いや、まあ……」
地球では護身術程度の武術は学んでいたけど、多分この体の身体能力が高いのだろう。
「少しは心得が……」
きゅるる~~。
急に変な音が聞こえた。
「あ……。 な、なんでもないですよ。 そ、そうだ、魔石取って置かなきゃ」
エイルは倒したガウラットにナイフを突き立て、額にあった綺麗な宝石のような物を取り出した。
「それは?」
「これは魔石です。 魔生獣にはそれぞれ特徴のある魔石があります。 魔石は売れますし、錬金術の素材にもなりますから、忘れずに取って置かないと」
魔石を小さな鞄にしまったいる。
しかしこの世界は錬金術がある世界なのか?
もしかして魔法もあるのか?
「なあエイル、魔法も……」
きゅるる~~。
またしても何かの音が聞こえる。
「は、早く塔を出ましょう。 この塔を出て南に行けば【ガッドレージの町】です」
エイルはお腹を押さえて顔を赤らめている。
「もしかして、お腹空いた?」
「そんな事ありません! 昨日から何も食べて無くても平気です! そんな事より早く行きましょう」
急かされて、腹減りエイルの後を着いて行く。
ガッドレージの町に着いたら色々聞かないとな。
1
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる