竜探しのお話

hachijam

文字の大きさ
上 下
145 / 155
6章.隠された都市

32.

しおりを挟む
「それでどこが怪しいと思った」

ファムがそう聞いた。サントは今まで見た来たところを思い出す。でも、一目見て、どこが怪しいというのは浮かばなかった。どこも変わり映えしない気がした。逆に怪しいと思って見てしまうと、どこも怪しいと感じてしまう。

「分からない」

下手に理屈を付けて答えるよりも、直感的に答えた方が良いと思い、そう答えた。

「そうだよな」

とファムが言った。その表情はそれが正解だと言っている気がする。

「もう少し、ひとつひとつ調べてみるか、それとも山を張っていくかどっちか」

その時、前日にリラが言っていた事を思い出した。でも、そこで特徴的な事は何もなかったとサントは思った。ファムも何も言わないという事は、そういう事なんだろう。確実に行くとなれば、ひとつひとつ丁寧に探る事だと思う。しかし、気になるのは二つある。ひとつは、時間が掛かれば掛かるほど、相手に気が付かれる恐れがあるという事だ。それだと、目的を果たす事が出来ない。もうひとつは、次の襲撃がいつになるのかというところだった。この間の襲撃で全てが終わったとは思えなかった。その次の襲撃に間に合わなければ意味が無い。

今日は一度引き上げるべきか。様子見はしたが、何も収穫が無い状態で良いのかと言うのがサントには気になっていた。ファムがどう思っているのかは定かでは無かったが、自分なりには決断しないといけないと考えていた。

「もう一度、リラが言っていたところを見に行こう」

それがサントが出した結論だった。結論を先延ばししただけと言えなくもなかったが、リラが感じていた何かが分かるかもしれないと思った。

「そうか」

ファムはそうとだけ言った。



コトは頼まれたリラに頼まれた事の意味を正確には理解していなかった。出来るだけ、急いでと言われて、やってきたのだが、それでいいのだろうか。リラに頼まれた事を断る事は出来なかった。そんな事をしたら、他の団員の冷たい視線にさらされる。やっぱり、自分よりもリラの方が地位が高いのではと思ってしまうのだが、そういうところで反論してしまうと、更に自分の地位を下げる事になってしまう。だから、堂々とその話を聞いた。仕方ないという風に余裕を見せた方が良いと思った。

でも、実際にここまで来て、本当に大丈夫なのか、急に不安に思った。今は自分ひとりだ。何かあったらどうするんだ。守ってくれるはずのサントやファムもいない。リアリだっていないのだ。

でも仕方ない、これが団長の務めだ。そう覚悟を決めると、その家のドアを叩いた。

「すいません」

小さく声を掛ける。でも、返事が無い。帰ろうかと思ったけど、それでリラに失望されるのは嫌だと思った。覚悟を決めて、思いっきりドアを叩いて

「すいませーん」

と大きな声を上げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。 花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。 だけどレティシアの力には秘密があって……? せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……! レティシアの力を巡って動き出す陰謀……? 色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい! 毎日2〜3回更新予定 だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

処理中です...