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5章.盗賊見習いと竜見習い
15.
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異変にはすぐに気が付いた。感じるであろうと思っていた大勢の人の気配が全く感じられなかったからだ。微かに血の匂いがしている気もした。そして、刺すような気配がひとつだけ感じられた。明らかな殺気だが、とても洗練されていて、刃物のように尖っている。怒り任せに発せられるような類の物では無い。それどころか、自分が人だったら、この気配に気づけただろうか、いや、恐らく気が付く事は出来なかっただろう。この殺意を向けられた瞬間に命を落としていたのではと言う気がしてくる。明らかにその場には相応しくない殺気だった。
それだけの者がいるのだろうか。さっきの人間を考えれば、到底信じられなかったが、リアリが感じた気配はそういうものだった。自分が人であったらと想像する事は、自分が人でないことを認めている証拠かもしれない。竜であるならば、その気配に対峙するべきなのだろうか。疑問に思いながらも、その気配の正体を探りたくなった。気になるのは、その気配がひとつだという事だ。そして、血の匂い。その二つで何が起こっているのかを推測する。
(自分より先にここを襲撃した者がいる?)
そうだとすれば、どうしたら良いのか。最善の手はさっさと逃げて、サントたちに状況を説明する事だろう。偵察の役目としては、それが一番だった。でもと少し思う。もし、さっきいなした人間がここに戻ってきたらどう思うだろうか。恐らくリアリが襲ったと思うはずだ。調べれば竜である自分がやった事ではないと気が付くだろうが、そう落ち着いて調べる事が出来るのかは疑問だ。短絡的に見えたあの人間がリアリのせいにするのは目に見えていた。それでも構わないと思いつつ、あらぬ疑いを掛けられるのも不愉快な気がした。それとも、この気配を持つ者にあっさりと殺されるのか、それならいいがと少し思う。
状況を確認するのかも迷うところだった。まだ、気配は消えていない。何者かがそこにいる可能性がある。この気配を漂わせる相手と戦う事になった場合、勝てるのだろうか。人であった頃の自分であれば、自分の実力は分かっているので、かなわなければさっさと逃げれば良い。でも、それが今の自分に出来るのかは分かっていなかった。
結局、迷ったのは一瞬だった。それはこのまま、中途半端に戻っても、偵察としての役割を果たせないと思ったからだ。何だかんだ言いながらも、サントたちは自分に期待しているところがある。それは、サントたちといるリアリにとって重要な理由だったようだ。
それだけの者がいるのだろうか。さっきの人間を考えれば、到底信じられなかったが、リアリが感じた気配はそういうものだった。自分が人であったらと想像する事は、自分が人でないことを認めている証拠かもしれない。竜であるならば、その気配に対峙するべきなのだろうか。疑問に思いながらも、その気配の正体を探りたくなった。気になるのは、その気配がひとつだという事だ。そして、血の匂い。その二つで何が起こっているのかを推測する。
(自分より先にここを襲撃した者がいる?)
そうだとすれば、どうしたら良いのか。最善の手はさっさと逃げて、サントたちに状況を説明する事だろう。偵察の役目としては、それが一番だった。でもと少し思う。もし、さっきいなした人間がここに戻ってきたらどう思うだろうか。恐らくリアリが襲ったと思うはずだ。調べれば竜である自分がやった事ではないと気が付くだろうが、そう落ち着いて調べる事が出来るのかは疑問だ。短絡的に見えたあの人間がリアリのせいにするのは目に見えていた。それでも構わないと思いつつ、あらぬ疑いを掛けられるのも不愉快な気がした。それとも、この気配を持つ者にあっさりと殺されるのか、それならいいがと少し思う。
状況を確認するのかも迷うところだった。まだ、気配は消えていない。何者かがそこにいる可能性がある。この気配を漂わせる相手と戦う事になった場合、勝てるのだろうか。人であった頃の自分であれば、自分の実力は分かっているので、かなわなければさっさと逃げれば良い。でも、それが今の自分に出来るのかは分かっていなかった。
結局、迷ったのは一瞬だった。それはこのまま、中途半端に戻っても、偵察としての役割を果たせないと思ったからだ。何だかんだ言いながらも、サントたちは自分に期待しているところがある。それは、サントたちといるリアリにとって重要な理由だったようだ。
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