78 / 155
4章.竜の研究者
38.
しおりを挟む
ファムはバナの家にたどり着くとバナに状況を説明した。リアリの行動が信じられないという思いを抱いていたバナだったが、目の前にある状況を考えると、のんびりと考えている暇はないと考えた。ファムと共にロットフートの洞窟の洞窟に向かうため、準備をする。
なかなか、準備が整わないバナに苛立ちを覚えながら、現状がどうなっているのかを冷静に考えようとした。まず一番大事なのは、リラの身柄を確保する事だった。それさえできれば、ファムにとっては実験がどうなろうがあまり興味が無かった。自分はそれだけに集中すれば良いと考える事にした。ようやく準備が整ったバナと共にロットフートの洞窟へと向かった。
「何だこいつらは」
隠し通路から奥へと進んだサント、ラテア、ドレロの前に立ちはだかったのは、マナウルフの群れだった。
「前のと同じだ、普通じゃない」
サントは気配だけでそう感じた。あの時と同じ様な存在に感じる。しかも、数は一匹、二匹では無い、見えているだけでも十匹以上、更に奥からもうなり声が聞こえてきていた。
「私が引き受けます。とにかく、奥へ進んで所長を止めてください」
ドレロはそういうと、襲い掛かってくるマナウルフの群れに向かって火球の呪文を唱える。
「でも…」
「良いから早く。間に合わなかったら意味が無いです」
ドレロは火球の呪文を連発する。
「行こう」
躊躇するラテアに向かってサントが言う。このまま、ここにいても時間が取られてしまう。それでは意味がないと判断した。
「…はい」
ラテアもしぶしぶ納得する。ドレロは注意を引きつけるように、ひとつ巨大な火球でマナウルフたちをけん制した。それによって、生じた隙を狙って、サントとラテアは先に進んだ。追ってくるマナウルフを払いのけるようにして前に進む。
後ろでドレロが唱えている呪文の声が響いていた。
リラはそこで意識を取り戻した。はっと目を覚まし、自分がどこにいるのか分からなかった。心なしか体が重い気がする。何があったんだっけ、そう思いながら体を起こそうとして、動かない事に気が付いた。
(あれっ)
まだ、はっきりとしない意識の中で、少しずつ記憶がよみがえってくる。
(確か、ファムさんと、ホウミさんと町に出かけて、帰る途中、ホウミさんと二人きりになって、それから…)
不思議な眠気が襲ってきて、そこで自分の記憶が途切れている事を思い出した。そう言えば、ホウミが申し訳なさそうな顔をしていたなとぼんやりと思った。
なかなか、準備が整わないバナに苛立ちを覚えながら、現状がどうなっているのかを冷静に考えようとした。まず一番大事なのは、リラの身柄を確保する事だった。それさえできれば、ファムにとっては実験がどうなろうがあまり興味が無かった。自分はそれだけに集中すれば良いと考える事にした。ようやく準備が整ったバナと共にロットフートの洞窟へと向かった。
「何だこいつらは」
隠し通路から奥へと進んだサント、ラテア、ドレロの前に立ちはだかったのは、マナウルフの群れだった。
「前のと同じだ、普通じゃない」
サントは気配だけでそう感じた。あの時と同じ様な存在に感じる。しかも、数は一匹、二匹では無い、見えているだけでも十匹以上、更に奥からもうなり声が聞こえてきていた。
「私が引き受けます。とにかく、奥へ進んで所長を止めてください」
ドレロはそういうと、襲い掛かってくるマナウルフの群れに向かって火球の呪文を唱える。
「でも…」
「良いから早く。間に合わなかったら意味が無いです」
ドレロは火球の呪文を連発する。
「行こう」
躊躇するラテアに向かってサントが言う。このまま、ここにいても時間が取られてしまう。それでは意味がないと判断した。
「…はい」
ラテアもしぶしぶ納得する。ドレロは注意を引きつけるように、ひとつ巨大な火球でマナウルフたちをけん制した。それによって、生じた隙を狙って、サントとラテアは先に進んだ。追ってくるマナウルフを払いのけるようにして前に進む。
後ろでドレロが唱えている呪文の声が響いていた。
リラはそこで意識を取り戻した。はっと目を覚まし、自分がどこにいるのか分からなかった。心なしか体が重い気がする。何があったんだっけ、そう思いながら体を起こそうとして、動かない事に気が付いた。
(あれっ)
まだ、はっきりとしない意識の中で、少しずつ記憶がよみがえってくる。
(確か、ファムさんと、ホウミさんと町に出かけて、帰る途中、ホウミさんと二人きりになって、それから…)
不思議な眠気が襲ってきて、そこで自分の記憶が途切れている事を思い出した。そう言えば、ホウミが申し訳なさそうな顔をしていたなとぼんやりと思った。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる