夢ノコリ

hachijam

文字の大きさ
上 下
41 / 275
踏切を待つ夢

7.

しおりを挟む
家に帰って、ふと自分が学校で作ったオルゴールがどこにあるかなと気になった。僕自身は、あまり自分が作ったものにこだわりがないのだが、母親は子供が作ったのを大事にするタイプなので、どっかにあった気がする。一度、そういうのをまとめて捨てようとして怒られた記憶があるから、捨てなかったと思う。

何となくどういう物だったのかを思い出しながら探していた。あれを作ったのは、中学時代だった気がする。そう考えたら、少し思い出してきた。卒業制作みたいな形で作ったのだった。たぶん、高校受験が一通り終わり、卒業までの期間に作るみたいな感じだった。だから、結構、自由な形で作るのが許されていた。面倒だと思っていた人はただ組み立てるだけで終わっていたし、物凄く凝って、複雑な絵を掘っていた人もいた。

僕はと言うと、三角とか四角とかを組み合わせた単純なものだったが、結構、細かく掘っていた気がする。幾何学模様と言うほど立派な物では無いと思うけど、そういう雰囲気の物を作ろうとしていたなと思い出した。

すぐに見つかるかなと思っていたけど、意外と時間が掛かった。とりあえず、目につくところを調べたが、その範囲には無かった。やっぱり、どっかにしまったのかなと思い、いくつか心当りがある段ボールの中を探してみた。オルゴールとは別の懐かしい子供時代に描いた絵とかが見つかった。懐かしいなと思いながらも、これではないと探していたら、中学時代の物が見つかった。そろそろ見つかりそうだと思っていたら、そのオルゴールはそこにあった。

当たり前かもしれないけど、僕の記憶の中にオルゴールと一緒だった。ちゃんと模様が刻まれている。段ボールの中に入っていたからなのか、埃が積もる事も無く綺麗だった。手に取ってみると、ずっしりと重さを感じた。

開けようとして、カギが付いている事に気が付いた。カギなんて付けていたかなと思う。細かいところまでは覚えていないなと思ってしまう。どこかにカギがあるかなと思っていたら、見当たらなかった。これじゃ、開けられない。ふと、あの倉庫で見つけたカギの事を思い出した。そんな事ある訳ないけど、あのカギがこのオルゴールのカギなのではと一瞬、思ってしまった。

でも、すぐに間違いである事に気づく。オルゴールを良く調べたら、裏側にテープでカギが張り付けられていたからだ。きっと失くしては困ると思って、そんな風にしていたのだろう。テープに張り付けられていたのは小さなカギで金色では無かった。そして、オルゴールのゼンマイを回す部品も一緒に張り付けられていた。裏側にはその部品を差し込む小さな穴もあった。

とりあえず、僕はその小さなカギでオルゴールの蓋を開けた。中には特別な物は何も入っていなかった。当然、音もならない。まだなるのかなと思い、箱の後ろの穴に部品を差し込み、ゼンマイを回した。それが当たり前のように、オルゴールからメロディが流れてきた。普通になる物なんだなと妙に感心する。一瞬、何の曲だったか分からなかったけど、すぐにそれが校歌だった事を思い出す。懐かしいなと思わず口ずさんでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

パパー!紳士服売り場にいた家族の男性は夫だった…子供を抱きかかえて幸せそう…なら、こちらも幸せになりましょう

白崎アイド
大衆娯楽
夫のシャツを買いに紳士服売り場で買い物をしていた私。 ネクタイも揃えてあげようと売り場へと向かえば、仲良く買い物をする男女の姿があった。 微笑ましく思うその姿を見ていると、振り向いた男性は夫だった…

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【ショートショート】雨のおはなし

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

カジュアルセックスチェンジ

フロイライン
恋愛
一流企業に勤める吉岡智は、ふとした事からニューハーフとして生きることとなり、順風満帆だった人生が大幅に狂い出す。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

処理中です...