174 / 275
重い荷物を背負っている夢
6.
しおりを挟む
「基本的にさ、楽して生きたいんだよね。俺は…」
三戸さんがそう呟いたのは、今日の分の配送を終えて、会社に戻る道の途中だった。その後の配送は順調だった。道の案内は僕がしたけど、それ以外はいつもとは違いテキパキとした動きで、本当にこれが三戸さんなんだろうかと思ってしまった。そんな中で呟いた言葉だった。
「だから、何事にも手を抜きたいんだ。分かる?」
分かるような気もするけど、分かるとは言いたくない気もして、
「はぁ」
と答えた。
「まあ、大概、これ言うと、怒られるんだけど、ははは」
それはそうだろうと思う。
「一生懸命頑張っている人を見てると、凄いと思うんだけど、自分には出来ないんだよね」
どこか悟ったように言った。
「…でも、出来ますよね?」
僕は今日の三戸さんの仕事のやり方を見ていった。
「こういうと、更に怒られるんだけど、意外と何でも出来ちゃうんだよ、俺は…」
何か分かった気がする。三戸さんに感じたイライラと言うのが。この人、意外と何でも器用にこなせるタイプなんだと思う。それを何となく周りに感じさせるんだ。だから、出来るのにやらないと思わせるから、手を抜いているように見えて、周りを苛立たせるんだと思った。
「器用貧乏って奴だよ」
そう言った時にはちょっと苦々しい表情になった。
「…何でやらないんですか?」
あんまり深い事を聞かない方が良いんだろうか。でも、聞きたくなってしまう。
「うーん。何でだろう。…、何かね。すぐに分かっちゃうんだよね。自分が出来る限界みたいなのが…」
「…」
「…、まあ、そんなの言い訳、ただの面倒くさがり、性格がいい加減とか言われると、それまで何だけど…」
「…」
どう言っていいかわからず、言葉を発せられなかった。
「まあ、俺みたく人生、半分ドロップアウトしているような人間に言われたくないと思うけど、楽して生きようとするのも、結構、大変なんだよ」
「楽したいのに大変なんですか?」
「おー、何か難しい哲学だね」
茶化すように言われて、ちょっとむっとしたけど、何だかムキになって恥ずかしいとも思ってしまう。
「まあ、俺みたいな、いい加減の人間の言う事がだから気にしないで、ははは」
どこか誤魔化すようにも聞こえた。
僕は三戸さんの言っていた言葉の意味を考えて黙ってしまった。そんな僕を見て、三戸さんは何かニヤニヤしているようにも思えた。悩める若者を見守っているみたいな雰囲気を醸し出そうとして、でも、その悩める若者を見てるのが可笑しくってしょうがないという感じだった。
何だか、馬鹿らしくなったので、ちょっと目を閉じた。疲れていますという感じで、寝たふりをする事にした。
三戸さんがそう呟いたのは、今日の分の配送を終えて、会社に戻る道の途中だった。その後の配送は順調だった。道の案内は僕がしたけど、それ以外はいつもとは違いテキパキとした動きで、本当にこれが三戸さんなんだろうかと思ってしまった。そんな中で呟いた言葉だった。
「だから、何事にも手を抜きたいんだ。分かる?」
分かるような気もするけど、分かるとは言いたくない気もして、
「はぁ」
と答えた。
「まあ、大概、これ言うと、怒られるんだけど、ははは」
それはそうだろうと思う。
「一生懸命頑張っている人を見てると、凄いと思うんだけど、自分には出来ないんだよね」
どこか悟ったように言った。
「…でも、出来ますよね?」
僕は今日の三戸さんの仕事のやり方を見ていった。
「こういうと、更に怒られるんだけど、意外と何でも出来ちゃうんだよ、俺は…」
何か分かった気がする。三戸さんに感じたイライラと言うのが。この人、意外と何でも器用にこなせるタイプなんだと思う。それを何となく周りに感じさせるんだ。だから、出来るのにやらないと思わせるから、手を抜いているように見えて、周りを苛立たせるんだと思った。
「器用貧乏って奴だよ」
そう言った時にはちょっと苦々しい表情になった。
「…何でやらないんですか?」
あんまり深い事を聞かない方が良いんだろうか。でも、聞きたくなってしまう。
「うーん。何でだろう。…、何かね。すぐに分かっちゃうんだよね。自分が出来る限界みたいなのが…」
「…」
「…、まあ、そんなの言い訳、ただの面倒くさがり、性格がいい加減とか言われると、それまで何だけど…」
「…」
どう言っていいかわからず、言葉を発せられなかった。
「まあ、俺みたく人生、半分ドロップアウトしているような人間に言われたくないと思うけど、楽して生きようとするのも、結構、大変なんだよ」
「楽したいのに大変なんですか?」
「おー、何か難しい哲学だね」
茶化すように言われて、ちょっとむっとしたけど、何だかムキになって恥ずかしいとも思ってしまう。
「まあ、俺みたいな、いい加減の人間の言う事がだから気にしないで、ははは」
どこか誤魔化すようにも聞こえた。
僕は三戸さんの言っていた言葉の意味を考えて黙ってしまった。そんな僕を見て、三戸さんは何かニヤニヤしているようにも思えた。悩める若者を見守っているみたいな雰囲気を醸し出そうとして、でも、その悩める若者を見てるのが可笑しくってしょうがないという感じだった。
何だか、馬鹿らしくなったので、ちょっと目を閉じた。疲れていますという感じで、寝たふりをする事にした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
パパー!紳士服売り場にいた家族の男性は夫だった…子供を抱きかかえて幸せそう…なら、こちらも幸せになりましょう
白崎アイド
大衆娯楽
夫のシャツを買いに紳士服売り場で買い物をしていた私。
ネクタイも揃えてあげようと売り場へと向かえば、仲良く買い物をする男女の姿があった。
微笑ましく思うその姿を見ていると、振り向いた男性は夫だった…
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【ショートショート】雨のおはなし
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる