syn...

hachijam

文字の大きさ
4 / 38

3.

しおりを挟む
誰それが卒業式に先輩に告白して付き合っているなんて、噂が聞こえてきたのが、三月の半ば、春休みの直前だった。私も人並みにそういう話に興味がある。数人の仲の良い友達との話の流れで誰が好きなんて話になり、誰々が良いとか、格好良いのはいないとか、好き勝手に言っている中で、私の話になった。

私はそういう人いないよとか、誤魔化していたけど、あいつとかどうと、彼の名前が突然出てきた。ドキッとして会話が止まってしまった。多分、ありそうにない人の名前を上げて、からかおうとしたのだと思うけど、突然、出てきた名前に上手く対処出来なかった。もっと格好良いのが良いとか、興味ないとか言っておけば、無難だったんだろうけど、そう言ってしまうのも何か嫌だなと思ってしまった。結果、私が気になっている事がばれてしまった。

そうなると、急に盛り上がる。クラスの中では地味な方で、目立たない。そういう存在だから、ライバル視する子もいなくて、余計に盛り上がってしまった。でも、優しそうだよね。私をフォローするつもりなのか、そう言っている子がいた。でもって何だろうと思ったけど、うんと頷いた。彼に関しては、浮いた話を聞いた事が無いというのが、その場にいた子たちの一致した意見だ。そんな事、私の方が知っていると思いながら、そうなんだと言ってみる。

これは告白するべきだよ。大丈夫、お似合いだよと言われて、何が大丈夫で、何がお似合いなんだろうと思うのは、意地悪いだろうか。でも、彼の隣に立っている自分を少し想像したら、自然と笑みがこぼれてきたのも事実だった。すぐに私が告白する事が決まった。私はその気はなかったけど、私の意見は無視された。何でだろう。

今すぐにでもと言う強硬派の意見も出たけど、さすがにそれは却下された。どうせなら、劇的なシチュエーションを作ろうなんて張り切り出す人もいたけど、それもご遠慮いただいた。そして、春休みに入る前に告白して、素敵な春休み、新学期を迎えるのが良いと決まった。でも、それは実現しなかった。

その話で盛り上がった翌日には、少しみんな落ち着いてしまったからだ。無責任に煽ってごめんねと言われた。私の方が戸惑ってしまった。どうやって告白するんだろう、やっぱり出来ないと前の日の夜、眠れなくて考えていたなんて気づかれないように、大丈夫、冗談だと思っていたからなんて言っていたけど、ほんの少しだけ、その気になっていた私はちょっとがっかりしてしまった。

でも、そこでこの話は終わりにならずに、新学期が始まったその日、新しく三年生になったその日に私は告白する事になる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...