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エピソード9

マモンの誘惑

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薄汚れた路地裏、崩れかけた建物の影に身を潜めるベルギオットは、追っ手から逃れた安堵よりも、焦燥感に駆られていた。リリスの執拗な追跡、そして底知れない魔力。このままでは、いつまでも逃げ続けることしかできない。
「どうすれば…奴の追跡を振り切れるんだ…?」
ベルギオットは、不安と焦りで、思考がまとまらなかった。彼は、魔導書を開き、解決の糸口を探ろうとする。しかし、ページをめくる指は震え、古代文字がぼやけて見える。
その時、ベルギオットの鋭い聴覚が、路地裏の奥から聞こえる奇妙な音をとらえた。それは、金貨がジャラジャラと音を立てる音、そして、誰かが卑しい声で呟く声だった。
警戒しながら音のする方へ近づくと、薄暗い路地の行き止まりに、異様な光景が広がっていた。山のように積み上げられた金貨や宝石の山。その前で、肥満体の醜い悪魔が、恍惚とした表情で財宝を愛でている。
「我が麗しき財宝よ…さらに、さらに我が元へ集え…」
悪魔は、宝石を指に嵌めながら、陶酔したように呟いていた。ベルギオットは、この悪魔に見覚えがあった。アヴェルヌスの上級悪魔、強欲の化身マモンだ。
マモンは、ベルギオットの存在に気づくと、顔を上げた。
「誰だ? そこにいるのは…!」
鋭い眼光がベルギオットを捉える。ベルギオットは、一瞬たじろいだが、すぐに冷静さを取り戻した。
「私は、ベルギオットスワン。貴様は、マモンだな?」
「ほう…よくぞ我の名を知っていた。貴様、一体何者だ? なぜ、こんな場所に…?」
マモンは、警戒心を露わにしながらも、ベルギオットに興味を示した。ベルギオットは、マモンの好奇心を利用できると直感した。
「私は、アヴェルヌスの頂点を目指す者だ。貴様の力が必要だ」
ベルギオットは、大胆にも、マモンに協力を持ちかけた。マモンは、驚き、そして面白そうに笑った。
「クックック…面白い。貴様のような小僧が、アヴェルヌスの頂点だと? しかし…貴様の目は、嘘をついていない。そして、貴様からは、興味深い魔力を感じる…」
マモンは、ベルギオットの持つ魔導書の力を感じ取っていた。
「我に力を貸せだと? なぜ、我は貴様のような小僧に協力せねばならんのだ?」
「貴様は、強欲の悪魔マモン。私は、貴様に莫大な富と権力を提供しよう。リリスの追っ手から私を守り、私をアヴェルヌスの頂点に導いてくれれば、貴様は、今まで見たこともないほどの財宝を手に入れることができるだろう」
ベルギオットは、マモンの欲望を刺激する言葉を巧みに並べた。マモンは、目を輝かせ、ベルギオットの言葉に耳を傾けた。
「ほう…莫大な富と権力だと…? 具体的に、どのようなものを提供してくれるのだ?」
「私は、魔導書の力を使って、貴様の想像をはるかに超える財宝を生み出すことができる。さらに、貴様の影響力をアヴェルヌス全土に広げ、貴様を、ルシファーに次ぐ権力者にすることも可能だ」
ベルギオットは、自信満々に宣言した。マモンは、ますます興味を深めた。彼は、ベルギオットの言葉が真実かどうか、見極めようとしていた。
「貴様の言葉が本当なら、我は貴様に協力してもよい。しかし、もし貴様が我を欺こうとしたならば…貴様は、想像を絶する苦しみを味わうことになるだろう」
マモンは、鋭い眼光でベルギオットを睨みつけた。ベルギオットは、怯むことなく、マモンの視線に応えた。
「もちろんだ。私は、貴様を裏切るつもりはない。私は、貴様の力が必要なのだ」
ベルギオットは、マモンと手を結び、リリスに対抗することを決意した。彼は、マモンの強欲を利用し、自らの野望を達成するための足掛かりにしようと考えていた。
しかし、ベルギオットは、まだ知らなかった。マモンとの危険な取引が、彼を新たな苦境へと導くことを…

次回予告:
マモンとの取引によって、ベルギオットは、新たな力を手に入れることができるのか? そして、リリスの追っ手は、ベルギオットを見つけ出すことができるのか…?
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