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第19章
クリエイターを取り巻く業界の希望と現実ー第19の課題:クリエイターの収入ー
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魔王様や執事さんたちは、僕にとってずっと
目指すべき目標であり、憧れだった。
あんな風になりたい、と願ったから
僕はこの会社に飛び込んで、働けている。
けれど、憧れはときに思考停止につながる。
魔王様や執事さんが絶対正しいわけでもない。
僕は、どんなにがんばったって彼らと同じにはなれない。
僕にはきっと僕なりのよさがあり、強みがあり
そして目指すべきゴールがあるはずだ。
「もっと自分の心と、向き合っていかないと…」
自分の答えは、誰も与えてくれない。
結局、様々な経験をしながら、自分の内側に
見出していくしかないのだ。
執事さんとの夜の散歩をした日から
これまで書いてきた気づきノートを僕は何度も見返すようになった。
自分が感じてきたことや学んできたことが
これからの僕を定める手がかりになる。
そう思ったからだ。
とはいえ仕事の忙しさは何も変わらないし
振り返りの時間だって、けっして多くはとれない。
疲れ切った夜は、朝まで泥のように眠ってしまうか
悪夢に叩き起こされるかのどちらかだ。
あれから、仕事関係のメールは以前と同じくらいに戻ったが
親友からのメールは相変わらず届いていない。
少しだけ悔やむ気持ちと
そして安堵に似た気持ちが混じる。
「考えても、仕方ないか」
携帯を強く握りしめる。
どれだけ考えても、時間は待ってくれない。
なら、少なくとも今はプライベートについて
考えるのをやめようと思った。
この先もずっと魔王の会社で働いていけるとは限らない。
いつ何があるかは、誰にもわからない。
なら、未来を不安がるよりも、今置かれている環境を活かして
最大限の学びを身につけることにだけ力を注ぎたい。
今日もオフィスで仕事を進めていく。
外を見れば、少し紫がかった夕焼け空が広がっていた。
少し換気がてら窓を開けて
外の酸素を胸いっぱいに吸い込む。
「少し、休憩するか」
パソコンをいったんスリープに落としてから
疲れた目の周りを軽くもんだ。
目尻にじんわりと涙がにじむ。
ディスプレイに映りこんだ僕の顔は
やたらとくたびれて見えた。
乾いた笑いが口から漏れた。
思っていたよりずっと、疲れをためこんでいたらしい。
「ふむ、目の隈がだいぶひどいの」
背後からいきなり声がかかる。
けれど、僕は驚かなかった。
実はディスプレイの画面にその人の姿も
映り込んでいたのだ。
「お久しぶりです、魔王様」
僕は軽く会釈を返した。
「よかったら」と横のデスクの椅子を引いて
魔王様に座るよう促す。
確かに僕もずいぶんと疲れているのは間違いない。
でも、よく見ると魔王様のほうが
随分と疲弊しているように見えたのだ。
「ありがとう…まあ、我も少々疲れた」
普段は見せない魔王様の本音なのかもしれない。
僕は何も言わずに、ただ耳を傾ける。
「現実とは、残酷なものよな」
魔王様は、小さな笑いをこぼした。
自らの無力に嘆くような、力のない笑みだった。
話を聞いていくと、どうやら魔王の会社で手掛けていた
あるアニメーション作品のやり取りの中で、業界の現状について
様々な思いを持たれたらしい。
たとえばアニメーション制作会社には
数多くのクリエイターが所属している。
夢を持って努力し、才能に悩み
それでも作品作りをやめないクリエイター。
単独では限界があるからこそ
チームでよりよい作品を創り上げていければ
きっと一番よいのだろう。
けれど、現実はうまくいかない。
優れたクリエイターほど会社から独立してしまうし
過去の繋がりから仕事を得ていく。
逆に経験の浅いクリエイターにはなかなか仕事は回らない。
チャンスは決して平等ではない。
そして利益配分についても関係者が多くなればなるほど
作品づくりよりもお金のことでもめるケースが多いらしい。
確かに詳しく話を伺うと、なかなか世知辛い業界だとは思う。
きらきらした夢や冒険の作品の裏で
多くの関係者が今も涙を流している。
「そういえば『左ききのエレン』はもう読んだな?」
僕はこくりと頷いた。
「左ききのエレン」は、魔王の会社で
必読とされているマンガだ
クラウドファンディングの漫画系プロジェクトで
日本1位の5000万以上のお金を集めたという、とんでもない作品でもある。
読んでみると、ワクワクする反面
胸がギュッと潰れそうな厳しい内容も多い。
シビアな現実をそのまま落とし込みながらも
エンタメ的に仕上げた作品の代表格だと僕は思っている。
僕の見解を聞いて、魔王様も頷きを返した。
「うむ。クリエイターの現実と渇望、業界の様相といった
リアルをあれほど見事に描いた作品は中々ない」
魔王様が天井を見上げ、大きく息を吐く。
「『好きな事で生きていく』、美しく甘い言葉じゃな。
多くのクリエイターたちが夢を見る、が現実は…」
魔王様は、いったん言葉を止めた。
そして僕に向き直って、こう告げる。
「のう、世の中のクリエイターの平均年収を知っておるか?」
「当てずっぽうでもいいから当ててみろ」と魔王様は
まるで謎掛けのように唐突に僕に問うた。
=====
<第19の課題>
Q.クリエイターの平均年収はどの程度だろう?
=====
クリエイターと言われても幅広いが
僕が思いついたのはイラストレーター、漫画家、小説家の
3種類のクリエイティブだった。
僕の仕事で関わるクリエイターさんも
概ね、この3種類のどれかに当てはまる。
ディレクション業務のなかで目にしたやり取りをもとに
僕は、頭の中でそろばんを叩く。
おそらく、僕の予想が正しければ
厳しい現実をそのまま表す数字になるのだろう。
「さあ、答えは出たか?」
目指すべき目標であり、憧れだった。
あんな風になりたい、と願ったから
僕はこの会社に飛び込んで、働けている。
けれど、憧れはときに思考停止につながる。
魔王様や執事さんが絶対正しいわけでもない。
僕は、どんなにがんばったって彼らと同じにはなれない。
僕にはきっと僕なりのよさがあり、強みがあり
そして目指すべきゴールがあるはずだ。
「もっと自分の心と、向き合っていかないと…」
自分の答えは、誰も与えてくれない。
結局、様々な経験をしながら、自分の内側に
見出していくしかないのだ。
執事さんとの夜の散歩をした日から
これまで書いてきた気づきノートを僕は何度も見返すようになった。
自分が感じてきたことや学んできたことが
これからの僕を定める手がかりになる。
そう思ったからだ。
とはいえ仕事の忙しさは何も変わらないし
振り返りの時間だって、けっして多くはとれない。
疲れ切った夜は、朝まで泥のように眠ってしまうか
悪夢に叩き起こされるかのどちらかだ。
あれから、仕事関係のメールは以前と同じくらいに戻ったが
親友からのメールは相変わらず届いていない。
少しだけ悔やむ気持ちと
そして安堵に似た気持ちが混じる。
「考えても、仕方ないか」
携帯を強く握りしめる。
どれだけ考えても、時間は待ってくれない。
なら、少なくとも今はプライベートについて
考えるのをやめようと思った。
この先もずっと魔王の会社で働いていけるとは限らない。
いつ何があるかは、誰にもわからない。
なら、未来を不安がるよりも、今置かれている環境を活かして
最大限の学びを身につけることにだけ力を注ぎたい。
今日もオフィスで仕事を進めていく。
外を見れば、少し紫がかった夕焼け空が広がっていた。
少し換気がてら窓を開けて
外の酸素を胸いっぱいに吸い込む。
「少し、休憩するか」
パソコンをいったんスリープに落としてから
疲れた目の周りを軽くもんだ。
目尻にじんわりと涙がにじむ。
ディスプレイに映りこんだ僕の顔は
やたらとくたびれて見えた。
乾いた笑いが口から漏れた。
思っていたよりずっと、疲れをためこんでいたらしい。
「ふむ、目の隈がだいぶひどいの」
背後からいきなり声がかかる。
けれど、僕は驚かなかった。
実はディスプレイの画面にその人の姿も
映り込んでいたのだ。
「お久しぶりです、魔王様」
僕は軽く会釈を返した。
「よかったら」と横のデスクの椅子を引いて
魔王様に座るよう促す。
確かに僕もずいぶんと疲れているのは間違いない。
でも、よく見ると魔王様のほうが
随分と疲弊しているように見えたのだ。
「ありがとう…まあ、我も少々疲れた」
普段は見せない魔王様の本音なのかもしれない。
僕は何も言わずに、ただ耳を傾ける。
「現実とは、残酷なものよな」
魔王様は、小さな笑いをこぼした。
自らの無力に嘆くような、力のない笑みだった。
話を聞いていくと、どうやら魔王の会社で手掛けていた
あるアニメーション作品のやり取りの中で、業界の現状について
様々な思いを持たれたらしい。
たとえばアニメーション制作会社には
数多くのクリエイターが所属している。
夢を持って努力し、才能に悩み
それでも作品作りをやめないクリエイター。
単独では限界があるからこそ
チームでよりよい作品を創り上げていければ
きっと一番よいのだろう。
けれど、現実はうまくいかない。
優れたクリエイターほど会社から独立してしまうし
過去の繋がりから仕事を得ていく。
逆に経験の浅いクリエイターにはなかなか仕事は回らない。
チャンスは決して平等ではない。
そして利益配分についても関係者が多くなればなるほど
作品づくりよりもお金のことでもめるケースが多いらしい。
確かに詳しく話を伺うと、なかなか世知辛い業界だとは思う。
きらきらした夢や冒険の作品の裏で
多くの関係者が今も涙を流している。
「そういえば『左ききのエレン』はもう読んだな?」
僕はこくりと頷いた。
「左ききのエレン」は、魔王の会社で
必読とされているマンガだ
クラウドファンディングの漫画系プロジェクトで
日本1位の5000万以上のお金を集めたという、とんでもない作品でもある。
読んでみると、ワクワクする反面
胸がギュッと潰れそうな厳しい内容も多い。
シビアな現実をそのまま落とし込みながらも
エンタメ的に仕上げた作品の代表格だと僕は思っている。
僕の見解を聞いて、魔王様も頷きを返した。
「うむ。クリエイターの現実と渇望、業界の様相といった
リアルをあれほど見事に描いた作品は中々ない」
魔王様が天井を見上げ、大きく息を吐く。
「『好きな事で生きていく』、美しく甘い言葉じゃな。
多くのクリエイターたちが夢を見る、が現実は…」
魔王様は、いったん言葉を止めた。
そして僕に向き直って、こう告げる。
「のう、世の中のクリエイターの平均年収を知っておるか?」
「当てずっぽうでもいいから当ててみろ」と魔王様は
まるで謎掛けのように唐突に僕に問うた。
=====
<第19の課題>
Q.クリエイターの平均年収はどの程度だろう?
=====
クリエイターと言われても幅広いが
僕が思いついたのはイラストレーター、漫画家、小説家の
3種類のクリエイティブだった。
僕の仕事で関わるクリエイターさんも
概ね、この3種類のどれかに当てはまる。
ディレクション業務のなかで目にしたやり取りをもとに
僕は、頭の中でそろばんを叩く。
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「さあ、答えは出たか?」
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☆第12回ドリーム小説大賞エントリー中☆
お読み頂き、ありがとうございます。毎日20時頃に更新していきます。
「面白い!」「続きが気になる…」と思われた方はぜひ、「お気に入り登録」頂ければうれしいです。
感想頂けた方には必ずお返事をさせて頂きます!
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