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第18章
「みんな」で作り上げる仕事のゴールを再び求めてー第18の課題:「いい作品」の定義ー
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慣れない仕事が続けば
人の心と体に大きな負荷がかかる。
魔王の会社に入ってからというものの
ほぼ全ての仕事が初めての体験だったこともあって
ストレス溜まってきているのは自覚していた。
その分、ストレス解消にも気を遣ってはいたし
工場での勤務で体力をつけていたこともあって
若さである程度カバー出来る部分も大きかった。
それでも、限界はやってくる。
僕の心と体は、積み重なっていた重みに
気づかないうちに危険信号を発していたらしい。
たとえば、仕事の凡ミスが増えた。
クリエイターさんとのやりとりで、伝え方に配慮が足りないと
メインディレクターの執事さんからお叱り頂くことも相次いだ。
夜の眠りも浅くなった。
疲れも取れないまま出社して、またミスをする。
何もかもにイライラした。
気遣ってくれるゲーテさんの言葉にすら苛立った。
そんな自分が嫌でたまらなかった。
仕事が自分の許容量を超えつつある。それだけのことだ。
けれど、休みをとることもできなかった。
全ては僕の力不足によるものだ。
それなのに今休んでしまったら、今までがんばって
築いてきたものが全て崩れてしまいそうだ。
立ち止まるのが、ひどく怖い。
おそらく僕の状態を、ある程度周りも察しているのだろう。
急用の案件以外は、携帯に入ってくる仕事の連絡も少なくなった。
「ちょっと仕事のペース落としなよ」と数日前
ゲーテさんに言われたのを思い出す。
もしかすると僕の仕事をいくらか肩代わりして
下さっているのかもしれない。
ありがたいことのはずだ。
けれど、その配慮すら僕の落ち込みを助長した。
「あいつからも、メール、来てないな」
親友からのメールも最近は届かなくなった。
どこか煩わしさも感じていたのに
いざ連絡が来なくなると妙に気になってしまう。
少し寂しくて
少し孤独だ。
それでもきっと、親友とのやりとりがないのは
お互いにとってよいことだと思う。
弱った心で縋り付いたところで、何一つ
よい結果を生まないだろう。
「いい結果、いい作品、いいものを作る…」
今の僕が抱えている仕事の中で、最も負荷が大きいものは
間違いなくディレクション業務だった。
他の業務はまだ、自分一人で完結できるか
もしくはゲーテさんなど社内の先輩たち相手だから
まだコントロールがしやすい。
けれど、ディレクションはそうはいかない。
自分ではコントロールできない多くの社外の人が関わってくるし
それぞれ仕事に対するこだわりが強い分、衝突も多い。
いい作品を作りたい。
それはきっと、関わる人全てに共通する想いなのに
どうしてこんなにぶつかってしまうのか。
「そもそも、いい作品ってなんだ?」
ずっと抱えていた問いを
そうっと言葉にして吐き出した。
どうやら僕は仕事のゴールを
見失ってしまっていたらしい。
「いい作品なんて、どうやったら作れる…?」
万人に好かれる作品は、ありえない。
どんな人気作品であっても、必ずアンチは生まれる。
僕たちディレクターは、そしてクリエイターさん達は
『いい作品』を作っていくために力を合わせている。
でも、『いい作品』は誰がどう決めるのだろう?
=====
<第18の課題>
Q. 「いい作品」の定義とは、どんな基準で決めればいいのだろう?
=====
「答えはきっと、自分で考えて、見つけなきゃダメなんだろうな」
オフィスで一人、ため息を深く吐き出した。
仕事量が減らされる前、僕が感じていたのは
仕事の質の変化だった。
ゲーテさんや執事さんからの具体的な指示が減り
僕の裁量に任される部分がどんどん増えていった。
ストレスが増えた原因の一つではあったけれど
僕の成長を見込んでくださっているという期待を感じて
うれしかったのも確かだ。
はやく元の仕事量に戻したい。
そのためにも、仕事のゴールをあらためて見出したい。
僕は思い切ってゲーテさんに相談してみることにした。
「まず、休むのは悪いことじゃないからね。
時に休息をとりながら、長期で続けていく方が大事」
開口一番、ゲーテさんから投げかけられたのは
僕への労りの言葉だった。
その上で、僕の疑問に対しては執事さんに
くわしく話を聞くことを勧められた。
「執事さんはメインディレクターでしょ。
サブとしてキミがどれだけがんばってきたかを
誰より知ってるのは執事さんだから」
それに、とゲーテさんはさらに言葉を続ける。
「執事さんは、魔王様に次いで数多くの作品づくりに
関わってる方だからさ。いろいろと話を聞いてみるといいよ」
ゲーテさんはその場で執事さんに連絡をとってくれた。
「今夜20時に一緒に夜ご飯食べようって。
多めに時間を取って下さるそうだから、しっかり話しておいで」
今日も執事さんのスケジュールはアポイントメントだらけだったはずだ。
けれど、わざわざ僕のために時間を調整してくれたということだ。
ゲーテさんに僕は深く一礼した。
ただただ、感謝しかなかった。
そして、夜が訪れる。
=====
<第18の課題のヒント>
今回の質問に、正しい答えは存在しない。
立場によっても「よい作品」の基準は異なる。
ぜひ、想像力を働かせて考えてみよう。
=====
人の心と体に大きな負荷がかかる。
魔王の会社に入ってからというものの
ほぼ全ての仕事が初めての体験だったこともあって
ストレス溜まってきているのは自覚していた。
その分、ストレス解消にも気を遣ってはいたし
工場での勤務で体力をつけていたこともあって
若さである程度カバー出来る部分も大きかった。
それでも、限界はやってくる。
僕の心と体は、積み重なっていた重みに
気づかないうちに危険信号を発していたらしい。
たとえば、仕事の凡ミスが増えた。
クリエイターさんとのやりとりで、伝え方に配慮が足りないと
メインディレクターの執事さんからお叱り頂くことも相次いだ。
夜の眠りも浅くなった。
疲れも取れないまま出社して、またミスをする。
何もかもにイライラした。
気遣ってくれるゲーテさんの言葉にすら苛立った。
そんな自分が嫌でたまらなかった。
仕事が自分の許容量を超えつつある。それだけのことだ。
けれど、休みをとることもできなかった。
全ては僕の力不足によるものだ。
それなのに今休んでしまったら、今までがんばって
築いてきたものが全て崩れてしまいそうだ。
立ち止まるのが、ひどく怖い。
おそらく僕の状態を、ある程度周りも察しているのだろう。
急用の案件以外は、携帯に入ってくる仕事の連絡も少なくなった。
「ちょっと仕事のペース落としなよ」と数日前
ゲーテさんに言われたのを思い出す。
もしかすると僕の仕事をいくらか肩代わりして
下さっているのかもしれない。
ありがたいことのはずだ。
けれど、その配慮すら僕の落ち込みを助長した。
「あいつからも、メール、来てないな」
親友からのメールも最近は届かなくなった。
どこか煩わしさも感じていたのに
いざ連絡が来なくなると妙に気になってしまう。
少し寂しくて
少し孤独だ。
それでもきっと、親友とのやりとりがないのは
お互いにとってよいことだと思う。
弱った心で縋り付いたところで、何一つ
よい結果を生まないだろう。
「いい結果、いい作品、いいものを作る…」
今の僕が抱えている仕事の中で、最も負荷が大きいものは
間違いなくディレクション業務だった。
他の業務はまだ、自分一人で完結できるか
もしくはゲーテさんなど社内の先輩たち相手だから
まだコントロールがしやすい。
けれど、ディレクションはそうはいかない。
自分ではコントロールできない多くの社外の人が関わってくるし
それぞれ仕事に対するこだわりが強い分、衝突も多い。
いい作品を作りたい。
それはきっと、関わる人全てに共通する想いなのに
どうしてこんなにぶつかってしまうのか。
「そもそも、いい作品ってなんだ?」
ずっと抱えていた問いを
そうっと言葉にして吐き出した。
どうやら僕は仕事のゴールを
見失ってしまっていたらしい。
「いい作品なんて、どうやったら作れる…?」
万人に好かれる作品は、ありえない。
どんな人気作品であっても、必ずアンチは生まれる。
僕たちディレクターは、そしてクリエイターさん達は
『いい作品』を作っていくために力を合わせている。
でも、『いい作品』は誰がどう決めるのだろう?
=====
<第18の課題>
Q. 「いい作品」の定義とは、どんな基準で決めればいいのだろう?
=====
「答えはきっと、自分で考えて、見つけなきゃダメなんだろうな」
オフィスで一人、ため息を深く吐き出した。
仕事量が減らされる前、僕が感じていたのは
仕事の質の変化だった。
ゲーテさんや執事さんからの具体的な指示が減り
僕の裁量に任される部分がどんどん増えていった。
ストレスが増えた原因の一つではあったけれど
僕の成長を見込んでくださっているという期待を感じて
うれしかったのも確かだ。
はやく元の仕事量に戻したい。
そのためにも、仕事のゴールをあらためて見出したい。
僕は思い切ってゲーテさんに相談してみることにした。
「まず、休むのは悪いことじゃないからね。
時に休息をとりながら、長期で続けていく方が大事」
開口一番、ゲーテさんから投げかけられたのは
僕への労りの言葉だった。
その上で、僕の疑問に対しては執事さんに
くわしく話を聞くことを勧められた。
「執事さんはメインディレクターでしょ。
サブとしてキミがどれだけがんばってきたかを
誰より知ってるのは執事さんだから」
それに、とゲーテさんはさらに言葉を続ける。
「執事さんは、魔王様に次いで数多くの作品づくりに
関わってる方だからさ。いろいろと話を聞いてみるといいよ」
ゲーテさんはその場で執事さんに連絡をとってくれた。
「今夜20時に一緒に夜ご飯食べようって。
多めに時間を取って下さるそうだから、しっかり話しておいで」
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ゲーテさんに僕は深く一礼した。
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お読み頂き、ありがとうございます。毎日20時頃に更新していきます。
「面白い!」「続きが気になる…」と思われた方はぜひ、「お気に入り登録」頂ければうれしいです。
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