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第15章
相手と電話して話すときの「コスト」と「メリット」とはー第15の課題:テレアポー
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伝えたいはずの思いが
ねじまがって、誤解を生んでしまったり
ささいな言葉の食い違いが
大きなトラブルにつながってしまったり
ゲーテさんに相談した後も、ディレクション業務の中で
僕は何度も失敗を繰り返した。
メインディレクターである執事さんがその都度
フォローをしてくれたおかげで、大事には至っていない。
それでも、自分のコミュニケーション能力は
こんなにも低いのかと落ち込まずにはいられなかった。
きちんと人と向き合って
誠実に付き合っていきたい。
お互いにとってより良い形で
信頼を作っていきたい。
言葉でいうのはとても簡単で
けれど実践するのは途方もなく難しい。
それは、仕事だけではなく
プライベートにだっていえることだった。
親友からのメールを
僕はいまだに持て余している。
「日本語って、こんなに難しかったっけ」
いつも使っているはずの言語なのに
誰かとやりとりする言葉を選ぶのにこんなにも苦労する。
それこそ文章で伝えるのが難しいのなら
いっそ直接話せたら何か変わるのだろうか。
今でも打ち合わせで電話やテレビ会議を使うことはあるけれど
もっと声で話す機会を設けたほうがいいのかもしれない。
そんな思いつきを得た僕は、
思い切って執事さんにも提案してみることにした。
返ってきたのは、意外な返事だった。
「電話の方が伝わりやすいのは確かやな。目の付け所は悪くない。
ただ…ちょーっと、電話を甘く見すぎとらんか?」
僕の話を聴きながらも仕事の手を休めなかった
執事さんの動きがピタッと止まる。
何やら考え事をしているようだ。
そして浮かんだ笑みに、なんだか嫌な予感がする。
もしかして、僕は何かをやらかしたのか?
「というわけで、ちょい業務追加するわ。
あとはゲーテに話通しとくから、聞いといて」
なにが「というわけで」なのか流れがさっぱりわからないが
ただでさえパンク寸前の僕に新たな業務が加わるのは確定らしい。
詳細について質問を投げかける前に、話の流れが
切り替えられ、ディレクションに関する打ち合わせをその場で
行うことになった。
意図的なのか、たまたまなのか
新たな業務に関する情報を何一つ得られないまま
自分のデスクへと戻る。
「さてさて、新しいお仕事だよ~」
僕のデスクで待ち構えていたゲーテさんは
資料を手に、にこにこと笑っていた。
その笑顔につい身構えてしまうのは
これまでの経験から学んだ反射行動だ。
ぽいっと放り投げられた書類を慌てて受け取る。
見ると、企業名がずらっと並んだリストのようだ。
「さあ、さっそく電話をかけてみよう!」
僕に追加で与えられた業務は、いわゆるテレアポだった。
リストに載っている会社へと電話をかけ
相手と面談するためのお時間を頂く約束ができればクリア。
テレアポの中には、電話で即商品をセールスするケースもある。
それに比べれば、アポをとるだけなので難易度は低いと教えてもらった。
「とはいえ、楽じゃないけどね。でも電話の仕事やりたかったんでしょ?」
よかったね~と言っていただくが、心中は複雑だ。
あの話の流れから、まさかテレアポ業務につながるなんて
予想もしなかった。
とはいえ、せっかくだからチャレンジしてみよう。
仕事である以上、数をこなしてアポをとってみせる。
そう覚悟を決めることにした。
ゲーテさんを相手に簡単なシミュレーション練習をしてから
テレアポをすることになった。
「最初はまず10件だけね。10件終わった段階で、報告よろしく~」
10件電話をかけたら
1件くらいはアポがとれるだろうか。
確率としてはわずか1割だ。
初心者でもそのくらいは狙っていきたいところだ。
バクバクと鳴る心臓の音を無視して
電話をかける。
震えた指でも電話番号は間違えないように
慎重にプッシュする。
1件目は、プルル…と無機質なコール音の後
対応してくれた受付の女性にあっさりと断られた。
時間にしてわずか10秒。瞬殺だった。
2件目、3件目とかけていくと
そもそもつながらない企業や留守番電話もあった。
そして何より受付の壁が厚かった。
ただ代表者と会う約束をもらうだけのはずが
受付で冷たくあしらわれる。
突破の糸口すら見えてこない。
10件目を終えて時計を見る。
ぐったりと疲れたものの、わずか10分も経っていなかった。
アポは1件もとれていなかった。
悔しいという感情以上に
わけがわからない。
電話ってこんなに怖いものだったろうか。
こんなに、冷たく断られるものだっただろうか。
とぼとぼとした足取りで
ゲーテさんに結果を報告しにいく。
すると、テレアポに取りかかった手順や
電話口で話した内容について細かくヒアリングされた。
覚えている範囲でしどろもどろ答えた僕を見て
ゲーテさんはうまくいかなかった原因がわかったらしい。
「まあ、10件だとアポ取れなくてもおかしくないんだけど。
でも今のままじゃ多分100件やってもアポにはつながらない、かな」
うまくいかない原因はどこなのか
僕はゲーテさんへと詰め寄った。
が、ゲーテさんは決して答えを与えようとはしなかった。
「リストももったいないから、架電はいったんストップで。
ちょっと自分で調べたり考えたりしてみよっか」
=====
<第15の課題>
Q.このままだと100件やってもテレアポが上手くいかない理由はなんだろう?
=====
「上手くいかない事には必ず理由がある」とゲーテさんは言った。
そして答えは教えてもらうよりも、自分で探して納得する方が
きちんと身につくと言われてしまえば、反論なんてできっこない。
会社の電話にはレコーディング機能がついていたので
自分と受付とのやりとりの記録をまず振り返ることにした。
さて、答えはどこにあるのだろう。
=====
<第15の課題のヒント>
今回のテレアポは売り込み目的ではなく
あくまでも相手企業の代表者に会う約束を頂くこと。
電話に対応する受付の気持ちになって考えてみよう。
どんな電話なら代表者に取り次ぐだろうか?
=====
ねじまがって、誤解を生んでしまったり
ささいな言葉の食い違いが
大きなトラブルにつながってしまったり
ゲーテさんに相談した後も、ディレクション業務の中で
僕は何度も失敗を繰り返した。
メインディレクターである執事さんがその都度
フォローをしてくれたおかげで、大事には至っていない。
それでも、自分のコミュニケーション能力は
こんなにも低いのかと落ち込まずにはいられなかった。
きちんと人と向き合って
誠実に付き合っていきたい。
お互いにとってより良い形で
信頼を作っていきたい。
言葉でいうのはとても簡単で
けれど実践するのは途方もなく難しい。
それは、仕事だけではなく
プライベートにだっていえることだった。
親友からのメールを
僕はいまだに持て余している。
「日本語って、こんなに難しかったっけ」
いつも使っているはずの言語なのに
誰かとやりとりする言葉を選ぶのにこんなにも苦労する。
それこそ文章で伝えるのが難しいのなら
いっそ直接話せたら何か変わるのだろうか。
今でも打ち合わせで電話やテレビ会議を使うことはあるけれど
もっと声で話す機会を設けたほうがいいのかもしれない。
そんな思いつきを得た僕は、
思い切って執事さんにも提案してみることにした。
返ってきたのは、意外な返事だった。
「電話の方が伝わりやすいのは確かやな。目の付け所は悪くない。
ただ…ちょーっと、電話を甘く見すぎとらんか?」
僕の話を聴きながらも仕事の手を休めなかった
執事さんの動きがピタッと止まる。
何やら考え事をしているようだ。
そして浮かんだ笑みに、なんだか嫌な予感がする。
もしかして、僕は何かをやらかしたのか?
「というわけで、ちょい業務追加するわ。
あとはゲーテに話通しとくから、聞いといて」
なにが「というわけで」なのか流れがさっぱりわからないが
ただでさえパンク寸前の僕に新たな業務が加わるのは確定らしい。
詳細について質問を投げかける前に、話の流れが
切り替えられ、ディレクションに関する打ち合わせをその場で
行うことになった。
意図的なのか、たまたまなのか
新たな業務に関する情報を何一つ得られないまま
自分のデスクへと戻る。
「さてさて、新しいお仕事だよ~」
僕のデスクで待ち構えていたゲーテさんは
資料を手に、にこにこと笑っていた。
その笑顔につい身構えてしまうのは
これまでの経験から学んだ反射行動だ。
ぽいっと放り投げられた書類を慌てて受け取る。
見ると、企業名がずらっと並んだリストのようだ。
「さあ、さっそく電話をかけてみよう!」
僕に追加で与えられた業務は、いわゆるテレアポだった。
リストに載っている会社へと電話をかけ
相手と面談するためのお時間を頂く約束ができればクリア。
テレアポの中には、電話で即商品をセールスするケースもある。
それに比べれば、アポをとるだけなので難易度は低いと教えてもらった。
「とはいえ、楽じゃないけどね。でも電話の仕事やりたかったんでしょ?」
よかったね~と言っていただくが、心中は複雑だ。
あの話の流れから、まさかテレアポ業務につながるなんて
予想もしなかった。
とはいえ、せっかくだからチャレンジしてみよう。
仕事である以上、数をこなしてアポをとってみせる。
そう覚悟を決めることにした。
ゲーテさんを相手に簡単なシミュレーション練習をしてから
テレアポをすることになった。
「最初はまず10件だけね。10件終わった段階で、報告よろしく~」
10件電話をかけたら
1件くらいはアポがとれるだろうか。
確率としてはわずか1割だ。
初心者でもそのくらいは狙っていきたいところだ。
バクバクと鳴る心臓の音を無視して
電話をかける。
震えた指でも電話番号は間違えないように
慎重にプッシュする。
1件目は、プルル…と無機質なコール音の後
対応してくれた受付の女性にあっさりと断られた。
時間にしてわずか10秒。瞬殺だった。
2件目、3件目とかけていくと
そもそもつながらない企業や留守番電話もあった。
そして何より受付の壁が厚かった。
ただ代表者と会う約束をもらうだけのはずが
受付で冷たくあしらわれる。
突破の糸口すら見えてこない。
10件目を終えて時計を見る。
ぐったりと疲れたものの、わずか10分も経っていなかった。
アポは1件もとれていなかった。
悔しいという感情以上に
わけがわからない。
電話ってこんなに怖いものだったろうか。
こんなに、冷たく断られるものだっただろうか。
とぼとぼとした足取りで
ゲーテさんに結果を報告しにいく。
すると、テレアポに取りかかった手順や
電話口で話した内容について細かくヒアリングされた。
覚えている範囲でしどろもどろ答えた僕を見て
ゲーテさんはうまくいかなかった原因がわかったらしい。
「まあ、10件だとアポ取れなくてもおかしくないんだけど。
でも今のままじゃ多分100件やってもアポにはつながらない、かな」
うまくいかない原因はどこなのか
僕はゲーテさんへと詰め寄った。
が、ゲーテさんは決して答えを与えようとはしなかった。
「リストももったいないから、架電はいったんストップで。
ちょっと自分で調べたり考えたりしてみよっか」
=====
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Q.このままだと100件やってもテレアポが上手くいかない理由はなんだろう?
=====
「上手くいかない事には必ず理由がある」とゲーテさんは言った。
そして答えは教えてもらうよりも、自分で探して納得する方が
きちんと身につくと言われてしまえば、反論なんてできっこない。
会社の電話にはレコーディング機能がついていたので
自分と受付とのやりとりの記録をまず振り返ることにした。
さて、答えはどこにあるのだろう。
=====
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どんな電話なら代表者に取り次ぐだろうか?
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お読み頂き、ありがとうございます。毎日20時頃に更新していきます。
「面白い!」「続きが気になる…」と思われた方はぜひ、「お気に入り登録」頂ければうれしいです。
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