私、魔王の会社に入社しました-何者でもなかった僕が自らの城を手に入れる日まで-

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第8章

誰かを「紹介する」ことの重みを知るためにー第八の課題解答編ー

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魔王様から課題を頂いたこともあり、紹介企画を終えて早々に
僕は自分の紹介ツイートを読み返してみることにした。

本当に個性的な方々が申し込んでくださったなあと
振り返ってみればしみじみと思う。

なかには今まで知らなかった職業の方もいて
どんな仕事内容なのかというところから学ばせていただいた。

でも、これまでに知らない職業の方であっても
Twitterやブログ、HPなどでしっかりとご自分のことを発信して下さっていれば
手がかりはたくさんあるので、ネットでいくらでも調べることができた。

業界の知識やまとめて伝えるための文章力が足りない部分は置いておいて
そういった方の紹介文を作るのは、そこまで苦労しなかったように思う。

「一番紹介しにくかったのって、あの人だよなあ…」

僕の頭に浮かんだのは、応募下さった方のあるアカウントのことだ。

その方のTwitterタイムラインは、ほとんどがリツイートで埋め尽くされていた。

自分の意見が添えられた引用リツイートならまだしも、単なるリツイートばかりだと
その人がどんな人なのかを探るのは困難だ。

プロフィールやヘッダーは整っているにも関わらず、発信から人柄やお仕事が見えないと
どの程度信憑性があるのかも判断できないし、どうしても魅力を紹介しづらいと感じた。

「あとは、アレかな」

別な意味で紹介しにくかったアカウントがあったことを僕は思い出す。

おそらく最近辛いことや悲しいことが多かったのだろう。

その方のツイートはネガティブな内容のものでいっぱいだった。

人間だから落ち込むときもあるだろう。それでもマイナス感情ばかりの発信の中から
よさを探して紹介するのは難しい。

それに、僕が紹介した内容を見て「いいな」と思って頂けたとしても
その人のアカウントを実際に見たらネガティブな投稿ばかりだと
紹介文の内容も嘘っぽいと思われてしまうだろう。

そうすると、会社のアカウントの信用問題にもつながってしまう。

「紹介って責任があるもんなあ…」

僕は会社のアカウントとして、発言に責任を持たなくちゃいけない。

そして、誰かを紹介するというのなら、企画に参加してくれた人達に対してだけではなく
ツイートを読んでくれる人達にだって、当然責任が発生するのだ。

紹介に伴う責任というのを、今回の企画を進めていくうちに
僕はだんだんと体感するようになった。

後回しにしていた紹介を書き上げたときには
ツイートが怖いとすら思った。

うかつな紹介をすれば、僕だけではなく周りにも迷惑がかかる。

企画中はいつも以上にTwitterの発信に対して僕は神経を尖らせていた。

「さてと、レポートにまとめるか」

ううーんと思い切り背を伸ばしてから、僕はパソコンの前で
もうひと頑張りすることにした。




翌日のこと、僕は魔王様に課題を提出した。

紹介企画全体を通じての振り返りに加えて、特に紹介しにくいと感じたアカウントの特徴と
自分なりに考えた理由、そして課題の意図についての考察をまとめたレポートだ。

「人を紹介することの重みを、魔王様は僕に体感させるのが狙いだったと思ったんです」

そう、僕が感じた魔王様の意図はそれだった。

この前僕がダメにしてしまった会食の場だって、僕という新人を
相手に紹介する機会だった。

SNSの見知らぬ相手ですら怖いと感じる「紹介」だ。
リアルのお取引先に誰かを紹介するとなると、お金や信用がからんでより重みを増す。

僕の言葉に、魔王様は目を細めた。
そして、笑いながら僕に話して下さった。

「そう、紹介とは怖いものじゃ。誰と誰をつなぐのか、全ては自己責任じゃからな」


その言葉に僕もまた頷きを返した。

本当にいいと思った商品やサービス、そして信頼できる人でなければ
僕だって大事な人に紹介なんてしたくない。

紹介で嘘をつくのは簡単だけれど、後で大きな痛手となって返ってくるだろう。


「紹介したいと思える相手かどうか、というのは人を見極める基準の一つじゃな」


紹介企画をしていたときも、会ってみたいと思える相手は
発信内容からも人柄を感じられて、信頼できそうな人だった。

そういうアカウントの方は進んで紹介したくなったものだ。

もちろん会ってみて、関係を深めていく内に評価が変わることもあるだろう。

それでも、まず最初に「なんとなく紹介できそうかどうか」という判断を設けて
人を見定めるのはとてもよい方法のように僕には思えた。

「誰かに紹介したくなる人間をまず目指してみよ。そうすれば金も仕事もいずれ巡ってくる」

期待しておるぞ、とだけ言い残して
魔王様は別件のアポの対応に入ってしまった。

僕は邪魔をしないように
そうっと音を立てずに自分のデスクに戻ることにした。

思いがけず頂いた期待の言葉に、胸が躍る。

がんばろう!がんばろう!!

叫びたい気持ちをぐっとこらえる。

「それこそ、魔王様や執事さんに紹介してもらえるようになりたいよな」


僕の目標が、一つ決まった瞬間だった。


=====
<×月×日 気づきノート>

紹介してもらえるような自分になるために
何が必要だろう?

まずは、発信の内容とか立ち振舞いから
気をつけていくべきかなあ。
=====
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