私、魔王の会社に入社しました-何者でもなかった僕が自らの城を手に入れる日まで-

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第5章

会社のアカウントで発信をするのは誰のため?ー第五の課題解答編ー

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あらためて会社のアカウントの過去ツイートを見ていくと
当たり前すぎて見落としていたことに気づく。

動画のまとめに限らず、他のアカウントの紹介をしている場合
明らかに周りからの信頼が高いビジネスアカウントを選んでいるのだ。

過去の動画まとめにしても、とにかくガッツリビジネス系で
見ていて学べるコンテンツが多い。

「ポイントは信頼、か…?」

考えたことをそのまま口に出す。

単にプロフィールの内容がすごいわけじゃない。
言葉はいくらでも嘘をつけるだろう。

共通点をまとめると、法人名や役職、過去のポートフォリオなどがはっきりしていて
一人ひとりの発言内容も好ましいと感じるものが多かった。


当たり前と言われれば、当たり前だ。

でも、ここは魔王の会社。
ある意味ふざけた、人間界のビジネスとは少し違った社風の会社だ。

これまでに発信してきたコンテンツも
いわゆるエンタメ色が強いものが多い。

がっつりビジネス系の発信をしているところは、見た覚えがないのだ。

「でも、うちのコンテンツは全然紹介してない」

違和感はまさにそれだった。。

無料で公開しているコンテンツとはいえ、もっと見てもらおうと
発信でアピールするのが普通のやり方だと思う。

でも自社コンテンツどころかエンタメ関係のアニメ動画を取り上げてもない。

「わけがわからん…」

僕は頭を抱えた。
発信で自社コンテンツのPRは目指していないというのは明らかだ。

そもそも、魔王の会社は誰のために発信をしてるのだろう?

僕は不意に魔王様の言葉を思い出す。

「会社の利益を考えるのは当然のこと。しかし短期的な視野にとらわれるのはよくないぞ」

確か、街コンビジネスの仕組みに関する課題のときに
魔王様が教えてくださったことだ。

ビジネスは視野を広く見なくてはならない。

そして、関わる人の悩みを解決していくことが
ビジネスになっていく。

「関わる者たちがみんな利を得られるビジネスは強い。魔界でも人間界でも同じことよ」

そう言って笑っていた魔王様には、どんな景色が見ていたのだろう?

魔王の会社が目指す未来とは何なのだろう?


魔王様を筆頭に、魔物達は誰もが先を見据えて動き続ける。

今回任されたTwitterの発信だって、きっとその布石の一つなのだ。

小さなことかもしれない。
だからこそ全力でやろう。僕は気を引き締めた。

そうして考えたのは、いったん先入観を捨てること。
魔王の会社がどうこうではなく、まずはTwitterの発信を見てくれる
人達に楽しんで学んでもらえたらと思った。

その上で、一緒にビジネスをしていけたらもっと面白いことができそうな相手の
YouTube動画を取り上げてみよう。そう方針を決めて動くことにした。

魔王の会社アカウントで過去に取り上げていたYoutuberは全てチャンネル登録し
おすすめ動画にあがってくるビジネス系の動画もほぼ全てチェックしていった。

2倍速でいくつか見て、「これいいな」と思えるものを片っ端から登録していく。
すると、あっという間におすすめ動画がビジネス系の動画で埋め尽くされた。

「さて、要点まとめてみるか」

動画を見ながら、文章を作っていく。
要点をうまくまとめるのは、意外と大変だ。

それでも、会社のビジョンなんて未だよく分からない僕でも
発信を見て下さる方々に、精一杯有益な情報をお届けしよう。

その一心で、取り組んだ。

発信者が特に伝えたい“メッセージ”は
編集の工夫にもある。

最初の課題だった動画の編集カウントを通じて学んだことだ。

「きっと全部つながってるんだろうな」

今の目の前の作業は、どんな未来につながっているのだろう。
だんだん作業に疲れて眠気はピークだ。それでも気分はハイになってくる。

動画を選び、何度も見直し、ポイントを140字でまとめる。

たった一つのツイートの文章を作るために、数時間かけたこともあった。
要約しきれないもどかしさや表現しきれない悔しさを感じながら、手は休めない。

傍から見ればムダかもしれないだろう。
それでも、僕にとっては未来につながる一歩だった。




気づけば、一週間以上の時が流れた。
日々の業務の合間に、どのくらいの数を日々ツイートしただろう。

カチリとエンターキーを鳴らして、その日もまた動画のまとめを
ツイートする。

「さてと、一息いれるかな」

休憩前にスマホをチェックしてみると、魔王様からのメールが届いていた。

作業に没頭していて着信に気づいていなかったらしい。

文面は一言。

「おつかれ。よくやっておるな」

続けて送られてきていたメールには、Twitterで取り入れるべき工夫や
改善ポイントに関するアドバイスも添えられていた。

魔王の会では誰もが忙しく日々を過ごしている。
なにより、トップの魔王様が多忙を極めていることを僕はよく知っていた

「ちゃんと見てくれてるんだなあ」

文面を見ながら思わず顔がにやけた。

Twitterの細かいところまでしっかり見て下さっているアドバイスは
厳しい指摘も含まれていたけれど、それでもうれしさの方が先にたった。

毎日、小さながんばりを積み重ねる。
見てくれる人が確かにいるのは、とても幸せだ。

高まる感情のままに叫びそうになったが、もう夜も遅い。
声をぐっと殺して、にやにやと笑う。

胸の温かさを感じながら、僕は少し砂糖多めのホットコーヒーを飲み干した。


======

<×月×日 学びノート>

まずは読み手のことを考えること。
役立つ内容、勇気づけられる内容なんでもいい。

自社のことばっかり考えるのではなくて、
きちんとSNSの向こうにいる人へ向けて
メッセージを届けていこう。

それがきっと、回り回って会社の利益にもなっていくだろう。
そうできるように、がんばろう。

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