私、魔王の会社に入社しました-何者でもなかった僕が自らの城を手に入れる日まで-

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第5章

会社の代表として、動画のまとめをテーマにSNS発信せよ!ー第五の課題:Twittter運用ー

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ノートを前に、ぐるぐるとペンを回す。

仕事を休み時間、僕はぼーっと自分の課題について
考えていた。

といっても魔王様に与えられた課題ではなく
自分自身で設定したものだ。

「この会社のビジネスって、一体なんだ?」

魔王の会社で働いているはずの僕がいうのもどうかと思うが
この会社が何をやってるのか、内側にいてもさっぱりわからない。


正確には、上っ面の部分はある程度分かるのだ。
YouTubeでアニメ動画を作っていたり、小説を展開していたり
色々とコンテンツを作っている。

でも、それらのほとんどが無料で見られるものばかりで
ビジネスとして成り立っているとは思えない。

「でも、僕にも給料が払われているし、それに…」

魔王様のまわりでは、僕には想像もできない額が
動いているのをよく耳にする。

きちんとビジネスができているからこそ
取引ができているはずだし、お金が回っているはずだ。

「ああーーー、わからん!」

椅子に思い切り体を預けて、背を伸ばす。

考えても考えても、何一つわからない。

前回の課題で、僕は魔王様から街コンビジネスの仕組みについて教わった。

それからはつい、様々な商品やサービスがどんなビジネス展開になっているのか
考えるくせがついたように思う。

世の中には本当にたくさんのサービスや商品がある。
意識しなければ気づくことすらできないものも、本当にたくさん。

しかも、関わっている会社全てが名前を出しているわけじゃない。
魔王の会社もきっと、人間界の裏側で名前を出さずに色々と動いているのだろう。

「くっそう、なんかヒントがないかなあ…」

パソコン画面を操作しながら、魔王の会社が関わっている
いくつかの作品やTwitterなどの発信をあらためて見直していくことにした。

表に出していない面が多すぎるし
魔王様も魔物達もとにかく秘密主義だ。

新人の僕は彼らの秘密に踏み込めない。
それでも、自社のことくらい少しでも知っておきたい。

少し意地になっているような気もする。

きっと会社の事業について詳しく明かされていないことにも
意図はあるのだろう。


「それでも、知りたいと思っちゃダメなんだろうか」

ぐちめいたつぶやきが、ぽつりと口からこぼれて消えていく。

無駄かもしれなくても、大したことができないとしても
それでも自分にできる何かをしていたかった。


そうして、僕は誰から言われるでもなく、休憩時間すら惜しんで、会社関連の情報を調べた。
SNSの発信はもちろんのこと、周囲の先輩たちの会話にも必死で耳をそばだてる。

わからない単語は調べて、自分なりにメモを増やしていった。

新人だから、仕方ない。
そんな甘えを自分に許したくなかった。

僕は会社でとにかくきちんと役に立ちたかったのだ。

心の焦りに追われて、業務外の時間を使いながら
僕は自分なりのリサーチを続けた。



人の行動は、思ったよりも見られているものだ。

僕が会社のことについて調べようと必死になっていたのを
魔王様や会社の上司達は、とっくに把握していた。

「会社の一員としてそろそろ新人にも発信をしてみてもらおうかの」

ある日、僕の背後からいきなり声が降ってきた。
びくんと体を震わせる。

腰にくる低音ボイスは、僕の直属の上司である魔王様の声だ。

「頃合いかと」

しかも合いの手をうつ声まで聞こえてくる。
執事さんの声、ということは会社のツートップが勢揃いしているわけだ。

Twitter画面をスクロールしていた手を止めて
僕は背後のお二人へと向き直る。

「え、あ、あの、何か御用ですか?」

僕の問いかけに、お二人はにやっと笑った。

魔王様と執事さんは、服装もキャラクターも違う。
なのに、こんなときだけ表情がそっくりだ。

「そうそう、喜べ。仕事追加じゃぞ」

魔王様の言葉に喜んでよいのかは正直迷ったが
とにかくやるべきことが増えたのなら、精一杯やるだけだ。

そうして僕は会社関連のTwitterアカウントをの運用をまかせることになった。

発信のテーマは、YouTube動画をピックアップし、わかりやすくまとめること。

「仕事として、取り組むんやで」

関西弁の執事さんに、からかうように声をかけられる。
詳しい説明は、魔王様から補足としてなされた。といっても内容はシンプルきわまりない。

「会社のアカウントとしての運用じゃ。動画の選定やまとめ方は任せよう。
よほどの問題が起きない限りは口を出さぬ。まあ、自由にやればよい」


つまり、僕におまかせ、ということだ。

「いや、会社のアカウントで発信って…責任重大でしょう?」

言いたいことだけ言って、魔王様は去っていった。
反論もできなかったし、仕事としてもちろんやるけれど、それにしたって
説明が少なすぎる!と少し文句が言いたくなった。

軽くうなだれている僕を見て、執事さんはケラケラ笑う。
そして、これだけは覚えておけ、と僕に念押しをした。

「必死に過去の発信、見とったやろ?それをムダにせんようにな」

気張りやーと手を振りながら、執事さんもどこかへと消えていく。

その後ろ姿を、僕はただ見送った。




しばし呆然とした後、僕はあわててパソコン画面に向かった。
立ち止まっている時間がもったいない。

「多分もうヒントは与えられてるんだ」

がりがりと頭をかきながら、YouTubeの動画を次々に見ていく。

=====
<第五の課題>

Q 会社アカウントで紹介していくYoutube動画はどんな基準で選ぶべきだろう?

=====


そういえば、以前にTwitterの発信を分析する課題を
僕は魔王様に与えられた。

いろんな経営者の動画を見ながら
魔王の会社はどんな意図で発信をしていたのかを考えた。

「あのとき、魔王様はなんて言ってた?」

気づきノートをめくっていく。

思い返せば、あのとき魔王様は動画のまとめをツイートする意図について
全てを解説してはいなかったように思う。

細かな意図まで説明する時間があのときの魔王様になかったのか
それとももしかして、今回の課題で実践するまではあえて口で説明しないことを選んだのか。

なんとなく後者のような気がした。

意図のある発信をどう行うのか、実践で教えられるタイミングを見計らっていたのかもしれない。

「よし、やるっきゃない」

声を張り上げて、自分に気合を入れる。

自分に任された仕事だ。
ならば、お二人の期待を越えられるようにがんばってみよう。



=====
<第五の課題のヒント>

・僕のこれまでに書いてきた気づきノートがとても役立った

・魔王の会社のビジネスって何だ?ということへの理解が結果的に進んだ

YouTube動画は無数にある。

その中から、もし自分が会社のアカウントを運用することになったらどうするのか
ぜひイメージしながら答えを考えてみてほしい。

=====
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