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第1章
演出の意図を知り、本質を見極めろー第一の課題解答編ー
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徹夜で動画のカット数を数え、レポートを提出し終えた僕は
直接指導していただけることになった魔王様との顔合わせの場で
あらためて課題の意図について尋ねてみた。
執事さんも同席しているタイミングを逃したくないと思ったのだ。
「あの課題の意図、僕なりに答えは出しました。でも多分気づいていないところもあると思うんです」
「だから、どうかあらためて教えて頂けませんか?」
頭を深く下げた僕に言葉を返してくださったのは魔王様だった。
「前提として…動画の編集にはコストがかかっておる。それは分かるな?」
姿勢を正して魔王様と向き直ると
当初のにやっとした笑みから真剣な表情に切り替わっていた。
ぴりっと空気が引き締まる。
「動画編集のコスト、というと…」
即答できずにいる僕に、魔王様は言葉を続けていく。
動画を自分で編集するならば、時間がかかる。
誰かに頼むのなら、当然お金がかかる。
時間もお金もコスト。
それらのコストをわざわざかけるには理由があるのだと魔王様はおっしゃった。
「動画を見やすくするため、でしょうか?」
僕の答えに、魔王様は小さく頷いた。
「それもあるな。しかしそれ以上に、動画の構成には発信者の意図が表れる」
「何を強調し、何をなかったことにするのか。編集によって取捨選択されているわけじゃ」
魔王様がおっしゃる内容は、課題の中で僕がぼんやりと感じていたでもあった。
たとえば5分の動画に100を超えるカットがなされているのなら
編集前の動画はどのくらいの長さだったんだろうか?
切り取られた部分は全て、「なかった事」になる。
そして、挿入された効果音や図表があれば、どうしても意識が向く。
同じ動画から、いろんな演出ができるのが
編集の面白さでもあるし、怖さでもあると感じたのだ。
「そう、動画の印象は演出でどのようにも変えられる」
魔王様は、さらに解説を続けていく。
最初は呆然としていた僕だったが、途中からはポケットに突っ込んでたミニノートにひたすらメモをとる。
必死でメモを続ける僕を見ながら、執事さんはにんまりと笑っていた。
「さらに言えば、動画のカットを数えている間もどれだけの観察と思考ができていたか、じゃな」
「話されている内容の重要なポイントや仕草まで、おぬしはチェックしていたか?」
僕は黙って首を振った。
課題ばかりに気を取られてしまっていただからだ。
「語られている内容は全て真実とは限らぬ。自らの目と耳で本質を見極める必要がる」
工場で働いていた時に感じることはなかったが
ビジネスの場では常に駆け引きが行われていると聞く。
動画に限らず、誰もが演出の力を使っている。
僕がかつてさまよったSNSの世界だって、似たようなものだったじゃないか。
本質を見極められずに出会った人の多くに違和感があった理由は、そこだったのか。
僕は目から鱗が落ちた気分だった。
「この世は弱肉強食。語られることをそのまま受け取るような単純さでは生きていけぬぞ」
魔王様の厳しい言葉に僕はうなだれた、
「まあ、これから強くなりーや」
執事さんが、僕の肩をばんと叩く。込められた力の強さに少しだけ痛む。
きっと次の会議でも入っているのだろう。
足早に立ち去っていった魔王様と執事さんの後ろ姿を見送ってから
僕は自分のメモを見直してみた。
走り書きの字はずいぶんとぐちゃぐちゃだ。
あとで清書する必要があるだろう。
しばらくして、携帯から着信音が鳴り響いた。
差出人は、魔王様だ。
魔王様からの初めてのメールは、簡潔な内容だった。
”自らの気づきは全て言語化して残しておくこと。
いつでもプレゼンできるレベルまで、整理しておくことを勧める。
どこまでやるかは、そなた次第じゃ。がんばれよ”
短いメールの文面を、僕は何度も読み返した。
自分に叩き込もうと思った。
そうしてその日の夜、僕は帰りのコンビニでノートを数冊購入して帰った。
今までに書いていたミニノートの内容は全て整理し直そう。
これからの気づきは、些細なことだろうと書き残そう。
今日の学びを残すべく、ノートにペンを走らせる。
まっさらなノートは、僕の成長とともに埋め尽くされ
いずれ、かけがえのない財産に変わるだろう。
======
<×月×日 学びノート>
これまで動画を見ていたときに
わざわざ意図を考えたことなんてなかった。
動画のカットを数えるだけでも
視点が変われば多くのことが学べる。
今までどれだけの学びを見過ごしてきたのか
想像すると恥ずかしくなる。
相手に本当に伝えたい重要な部分は何なのか?
僕にとって大切な部分は何なのか?
動画に限らず、これから色々な物を見る時に
意図を汲み取る視点を大切にしていこう。
======
直接指導していただけることになった魔王様との顔合わせの場で
あらためて課題の意図について尋ねてみた。
執事さんも同席しているタイミングを逃したくないと思ったのだ。
「あの課題の意図、僕なりに答えは出しました。でも多分気づいていないところもあると思うんです」
「だから、どうかあらためて教えて頂けませんか?」
頭を深く下げた僕に言葉を返してくださったのは魔王様だった。
「前提として…動画の編集にはコストがかかっておる。それは分かるな?」
姿勢を正して魔王様と向き直ると
当初のにやっとした笑みから真剣な表情に切り替わっていた。
ぴりっと空気が引き締まる。
「動画編集のコスト、というと…」
即答できずにいる僕に、魔王様は言葉を続けていく。
動画を自分で編集するならば、時間がかかる。
誰かに頼むのなら、当然お金がかかる。
時間もお金もコスト。
それらのコストをわざわざかけるには理由があるのだと魔王様はおっしゃった。
「動画を見やすくするため、でしょうか?」
僕の答えに、魔王様は小さく頷いた。
「それもあるな。しかしそれ以上に、動画の構成には発信者の意図が表れる」
「何を強調し、何をなかったことにするのか。編集によって取捨選択されているわけじゃ」
魔王様がおっしゃる内容は、課題の中で僕がぼんやりと感じていたでもあった。
たとえば5分の動画に100を超えるカットがなされているのなら
編集前の動画はどのくらいの長さだったんだろうか?
切り取られた部分は全て、「なかった事」になる。
そして、挿入された効果音や図表があれば、どうしても意識が向く。
同じ動画から、いろんな演出ができるのが
編集の面白さでもあるし、怖さでもあると感じたのだ。
「そう、動画の印象は演出でどのようにも変えられる」
魔王様は、さらに解説を続けていく。
最初は呆然としていた僕だったが、途中からはポケットに突っ込んでたミニノートにひたすらメモをとる。
必死でメモを続ける僕を見ながら、執事さんはにんまりと笑っていた。
「さらに言えば、動画のカットを数えている間もどれだけの観察と思考ができていたか、じゃな」
「話されている内容の重要なポイントや仕草まで、おぬしはチェックしていたか?」
僕は黙って首を振った。
課題ばかりに気を取られてしまっていただからだ。
「語られている内容は全て真実とは限らぬ。自らの目と耳で本質を見極める必要がる」
工場で働いていた時に感じることはなかったが
ビジネスの場では常に駆け引きが行われていると聞く。
動画に限らず、誰もが演出の力を使っている。
僕がかつてさまよったSNSの世界だって、似たようなものだったじゃないか。
本質を見極められずに出会った人の多くに違和感があった理由は、そこだったのか。
僕は目から鱗が落ちた気分だった。
「この世は弱肉強食。語られることをそのまま受け取るような単純さでは生きていけぬぞ」
魔王様の厳しい言葉に僕はうなだれた、
「まあ、これから強くなりーや」
執事さんが、僕の肩をばんと叩く。込められた力の強さに少しだけ痛む。
きっと次の会議でも入っているのだろう。
足早に立ち去っていった魔王様と執事さんの後ろ姿を見送ってから
僕は自分のメモを見直してみた。
走り書きの字はずいぶんとぐちゃぐちゃだ。
あとで清書する必要があるだろう。
しばらくして、携帯から着信音が鳴り響いた。
差出人は、魔王様だ。
魔王様からの初めてのメールは、簡潔な内容だった。
”自らの気づきは全て言語化して残しておくこと。
いつでもプレゼンできるレベルまで、整理しておくことを勧める。
どこまでやるかは、そなた次第じゃ。がんばれよ”
短いメールの文面を、僕は何度も読み返した。
自分に叩き込もうと思った。
そうしてその日の夜、僕は帰りのコンビニでノートを数冊購入して帰った。
今までに書いていたミニノートの内容は全て整理し直そう。
これからの気づきは、些細なことだろうと書き残そう。
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まっさらなノートは、僕の成長とともに埋め尽くされ
いずれ、かけがえのない財産に変わるだろう。
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