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鉄格子の向こう側、鉄格子のこちら側

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鉄格子をはさんで
少女は鳥と向かい合っていました。
 
世界で最後の一羽。
保護された鳥にはもはや仲間はおらず
 
ただ今日も
檻の中で生きています。
 
希望なんて、ない。

まるで自分のようだと少女は笑い
檻の前から立ち去ろうとしました。
 
「かわいそう、と皆言うのです」
 
鳥は、ぽつりと呟きます。
その響きには一片の悲しみもありませんでした。
 
少女は、足をぴたっと止めました。
 
「私には翼がある。けれどもはや
飛ぶことはかなわないでしょう」
 
檻の向こうに広がる青空を
鳥は見つめます。
 
「私は最後の生き残り。けれど」
 
鳥は澄んだ目で、
私をじっと見つめました。
 
「けれど、私は今も生きている。
檻の中でも空を想う自由がある」
 
憐れな鳥などどこにもいませんでした。
 
「命ある限り、私の誇りはここに。
翼を折られようと、奪われはしない」
 
その目は
 
あなたのほうが
かわいそう
 
そう投げかけているようで
少女は何も言えませんでした
 
うつむくと、鳥の羽が一枚
檻の外に落ちていました。
 
美しく白い羽を拾い上げて
少女は光にかざします。
 
羽を広げて空を駆ける姿は
さぞ美しかったことでしょう。
 
かつて人には翼があったといいます。
肩甲骨は消えた翼のなごりなのだと。
 
「私も、飛べるのかしら」
 
小さな羽を抱きしめて、ぽつり。
その呟きを鳥が聞いたかは分かりません。
 
少女は今度こそ檻に目をやること無く
歩き出しました。
 
自らの空を見つけるために。
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