5 / 20
3杯目【前編】
しおりを挟む
2018年政府が公式に副業を推奨する規定を
打ち出し副業元年と言われた
それから2年が経つ
就業規則からは用語が消えても
社内ルールとして根強く効力を持つ会社は未だ存在する
男の会社もその一つだった
だから彼は自分の副業を社内では決して明かさない
仕事を終えれば家に戻って動画を作る
そうして彼が最初に動画編集を
学んだミュニティからの
紹介案件を日々こなし時にYoutubeに上げる
自分の本業は動画クリエイターでありたい
会社員でありつつ彼はそう願っていた
社会的に見れば営業職が本業だろう
そちらの手を抜くつもりもない
なにしろ給与が安定してもらえるわけだし
残業も少ないのはありがたい
仕事から戻れば自由な時間が彼のものだ
好きなだけ様々な動画を研究し制作に打ち込める
ただやはり窮屈な思いはあった
彼の会社ではYoutubeやTwitterといった
SNSの影響力を未だ軽視する風潮すらある
子供のなりたい職業にYoutuberが上位入りする時代に
正直時代遅れな職場だと、彼はしばしばため息をついた
社内でSNSに理解がありそうなのは、同期の女性ひとりだけ
もっとも彼女との関係はあまりよろしくない
なぜか会うたびに睨まれてしまう
間柄今後よっぽどのことがない限り
動画クリエイターが秘密を明かす機会はなさそうだった
最近天気が崩れている
本日も雨模様
業務を終えて動画クリエイターは
帰路につく傘を差し彼は雨音に耳を傾けた
ふと有名なアニメのワンシーンを
思い出す心に残る動画を作りたい
いずれは動画だけで食べていきたい
『いっそ会社をやめて動画に専念できれば…
いや今の状況じゃ現実的じゃないな。稼げない』
彼は自らの状況を自嘲した
動画クリエイターなんて名乗っても
コミュニティのおこぼれの仕事が中心だ
自分以上の技術を持つクリエイターなんて五万といる
金にならない“本業”はもう潮時なのだろうか
雨の降りは、ますます激しさを増していく
土砂降りに折りたたみの傘が負けそうだ
動画クリエイターはひとまず
目についた建物の軒先に駆け込んだ
すっかり濡れ鼠になってしまった
体は急激に冷えていく
『どこかで温かいものでも飲みたいところだなぁ』
体を震わせてながら
動画クリエイターは辺りを見回す
そこで彼は自分の後ろに
木の扉があることに気がついた
ノブには“喫茶開店中“
というアンティーク調の看板が掛けられている
ちょうどいい暖をとっていこう
彼は迷わず扉を開けた
「ようこそ。
お客様あなたの成功を導く店へようこそ」
彼を出迎えたのは怪しげな白い燕尾服
入る店を間違えたと焦るも、当然後の祭りである
打ち出し副業元年と言われた
それから2年が経つ
就業規則からは用語が消えても
社内ルールとして根強く効力を持つ会社は未だ存在する
男の会社もその一つだった
だから彼は自分の副業を社内では決して明かさない
仕事を終えれば家に戻って動画を作る
そうして彼が最初に動画編集を
学んだミュニティからの
紹介案件を日々こなし時にYoutubeに上げる
自分の本業は動画クリエイターでありたい
会社員でありつつ彼はそう願っていた
社会的に見れば営業職が本業だろう
そちらの手を抜くつもりもない
なにしろ給与が安定してもらえるわけだし
残業も少ないのはありがたい
仕事から戻れば自由な時間が彼のものだ
好きなだけ様々な動画を研究し制作に打ち込める
ただやはり窮屈な思いはあった
彼の会社ではYoutubeやTwitterといった
SNSの影響力を未だ軽視する風潮すらある
子供のなりたい職業にYoutuberが上位入りする時代に
正直時代遅れな職場だと、彼はしばしばため息をついた
社内でSNSに理解がありそうなのは、同期の女性ひとりだけ
もっとも彼女との関係はあまりよろしくない
なぜか会うたびに睨まれてしまう
間柄今後よっぽどのことがない限り
動画クリエイターが秘密を明かす機会はなさそうだった
最近天気が崩れている
本日も雨模様
業務を終えて動画クリエイターは
帰路につく傘を差し彼は雨音に耳を傾けた
ふと有名なアニメのワンシーンを
思い出す心に残る動画を作りたい
いずれは動画だけで食べていきたい
『いっそ会社をやめて動画に専念できれば…
いや今の状況じゃ現実的じゃないな。稼げない』
彼は自らの状況を自嘲した
動画クリエイターなんて名乗っても
コミュニティのおこぼれの仕事が中心だ
自分以上の技術を持つクリエイターなんて五万といる
金にならない“本業”はもう潮時なのだろうか
雨の降りは、ますます激しさを増していく
土砂降りに折りたたみの傘が負けそうだ
動画クリエイターはひとまず
目についた建物の軒先に駆け込んだ
すっかり濡れ鼠になってしまった
体は急激に冷えていく
『どこかで温かいものでも飲みたいところだなぁ』
体を震わせてながら
動画クリエイターは辺りを見回す
そこで彼は自分の後ろに
木の扉があることに気がついた
ノブには“喫茶開店中“
というアンティーク調の看板が掛けられている
ちょうどいい暖をとっていこう
彼は迷わず扉を開けた
「ようこそ。
お客様あなたの成功を導く店へようこそ」
彼を出迎えたのは怪しげな白い燕尾服
入る店を間違えたと焦るも、当然後の祭りである
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
スメルスケープ 〜幻想珈琲香〜
市瀬まち
ライト文芸
その喫茶店を運営するのは、匂いを失くした青年と透明人間。
コーヒーと香りにまつわる現代ファンタジー。
嗅覚を失った青年ミツ。店主代理として祖父の喫茶店〈喫珈琲カドー〉に立つ彼の前に、香りだけでコーヒーを淹れることのできる透明人間の少年ハナオが現れる。どこか奇妙な共同運営をはじめた二人。ハナオに対して苛立ちを隠せないミツだったが、ある出来事をきっかけに、コーヒーについて教えを請う。一方、ハナオも秘密を抱えていたーー。
月は夜をかき抱く ―Alkaid―
深山瀬怜
ライト文芸
地球に七つの隕石が降り注いでから半世紀。隕石の影響で生まれた特殊能力の持ち主たち《ブルーム》と、特殊能力を持たない無能力者《ノーマ》たちは衝突を繰り返しながらも日常生活を送っていた。喫茶〈アルカイド〉は表向きは喫茶店だが、能力者絡みの事件を解決する調停者《トラブルシューター》の仕事もしていた。
アルカイドに新人バイトとしてやってきた瀧口星音は、そこでさまざまな事情を抱えた人たちに出会う。
吸血鬼が始めるダンジョン経営 ~アトラクション化で効率的に魂採取~
近衛 愛
ファンタジー
吸血鬼のウィーンは、仕事が出来ない役立たずと、ブラッドワインを生産している家から勘当されて追いだされました。
ニートになり、貯金を切り崩して生活してたある日
『ダンジョン経営始めませんか?』というダンジョン経営のメールが来た。ウィーンは経営者になることを決め、日本でダンジョンマート金沢支店をオープンすることになった。
伝説に残る、九尾の狐や座敷童、天邪鬼、猫耳娘などの物の怪と協力しながら和気あいあいと経営を進めていく。
ダンジョンの探索には危険が伴う、安全に冒険するためには保険契約が必要?その対価とは……。人間の寿命???古今東西の物の怪が協力しながら、経営する一風変わったダンジョンストーリー
ダンジョンでの人間の集客と、スタッフの募集に頭を抱えることになるウィーン。様々な出会いがウィーンを成長させていく。たまにダンジョンを私物化し、温泉スパリゾートや、スキー、オアシスでの海水浴場を作ったり、物の怪の思惑が重なりダンジョンは一体どこへ向かっていくのだろうか?
おっちょこちょいな猫耳娘ミリィとのかけあいのあるちょっとした笑いのあるストーリー。あなたがダンジョンの経営者なら、どういうダンジョンにしますか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
僕の月、君の太陽
月ヶ瀬 杏
ライト文芸
ある月のない夜。大学生の陽央の元に、父親が朔という小さな女の子を連れてくる。朔は陽央の腹違いの「妹」で、事情があって行き場がないという。 父親に頼まれて、一人暮らしのマンションで朔を預かることになった陽央だが、警戒心が強い朔は、なかなか陽央に心を開こうとしない。そのうえ、子どものくせに強がりで、どんな状況になっても絶対に泣かない。突然現れた朔との生活は、陽央にとって苛立つことの連続だった。そんなとき、陽央の都合で家から追い出した朔が、一緒に住むマンションから離れた場所で迷子になっていたところを保護される。朔がひとりで遠くまで行った理由を知った陽央に、彼女に寄り添おうとする気持ちが少しずつ芽生え始め、陽央と朔の関係は変化していく。 ひとつの家族の、絆の話。*他サイトにも投稿しています。
喫茶店オルクスには鬼が潜む
奏多
キャラ文芸
美月が通うようになった喫茶店は、本一冊読み切るまで長居しても怒られない場所。
そこに通うようになったのは、片思いの末にどうしても避けたい人がいるからで……。
そんな折、不可思議なことが起こり始めた美月は、店員の青年に助けられたことで、その秘密を知って行って……。
なろうでも連載、カクヨムでも先行連載。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる