57 / 72
第5章 パーティ!!!
1 私立桃華学園には、ある伝説がある。
しおりを挟む1
私立桃華学園には、ある伝説がある。
曰く――ダンス・パーティで最後に踊るカップルは、永遠に幸せになれると。
孤島にある全寮制の男子校という閉鎖的な空間で、一年に一度、全員に平等な出会いが訪れる。それがこの、所謂ダンパだ。姉妹校である女子校との共同企画で、学年ごとに三日間に分かれて行われる。有名企業のご子息ご令嬢が多く通う学園だ、社交場に出たときの嗜みとして、エスコートのし方され方なんてのを学ぶいい機会になるらしい。
一般家庭出身の俺にはほど遠い世界の話だが、女の子とお近づきになれるのは素直にうれしい。去年はかわいくて後腐れがなさそうな子を探し、遊んだものだった。懐かしい。
一日目は一年生、二日目は二年生、そして三日目は三年生と、様々相手を変えて踊ったり喋ったりと交友を深めていくのだが、三日目の夜が勝負のときだ。三年生が終わった後、フリー・タイムがある。気に入った相手がいたら、この時間に誘って、承諾を得れば一緒に踊ることができる。つまりそれは、よければこれからも仲良くしましょうってな、おつきあいの第一歩ってわけだ。告白代わりのお誘いがうまくいけば、男女不純交遊の始まり始まり。
しかしこれ、競争率が高い。フィーリングがぴたっと合う二人ならいいけれど、大抵は第一印象、つまり見た目で決まるわけ。美男美女はお申し込みが殺到で、見事破れて「もう恋なんてしない」とトラウマになる者も多数っていう、シビアな企画でもある。さらに言うと、今まで同性で付き合ってたのが女子の介入によって崩壊したり、また逆も然りっていう、修羅場の生まれる場でもある。――そんな中で、見事思い人と踊れることができたなら、永遠の幸せを手に入れることができるっていうのは、わりと信憑性があったりする。
――俺?
もちろん去年は、フリータイムに参加する暇なく、しけこんでました。なんつって。
で、その華やかなダンス・パーティを誰が企画・運営するのかというと。
「――生徒会(俺たち)なんだよねえ……」
うん、さすがにもう慣れました、この感じ。
目の前には何枚もの書類、パソコン、カタカタカタ。
いくら打っても終わりが見えない。つらい。
でも、今回ばかりは、弱音を吐いていられない。
何故なら。
「ねえ会長、いつだっけ、打ち合わせ!」
「今週末」
「超がんばらなきゃだよねマジで!」
姉妹校の女子校の生徒会の皆様が、打ち合わせをしにくるからだ。
今パソコンに向かっているのも、そのときの資料を作るため。
手を抜くわけにはいかない。
「本当に」
「女好き」
「だねえ」「ねえ」
顔を見合わせてため息を吐くのは双子だ。
ヤレヤレって顔、やめて。
「鈴宮、さん」
「なあにー」
「これ、間違ってます」
「あっ」
本当に平良くんは優秀です……。
印刷した資料の予算部分を指さして指摘してくるこの平良くん、最近はすっかり、剣菱くんに現を抜かすのをやめたらしい。
双子や副会長が剣菱くんにちょっかいをかけているのを、一歩引いてにこにこ穏やかに見守っているのは、余裕がある。
その様子に、ピンとくるものがあった。
ずい、と平良くんの耳に顔を近づける。
「ねえ、平良くんさ」
「はい」
「カノジョ、できた?」
こそっと囁くと、ぼん、と音が出そうなほどに平良くんの顔が真っ赤になった。え、マジで。
予想外のリアクションに、二の句が紡げない。
「おい鈴宮」
「はい」
「パワハラでセクハラはやめろ」
「えっ」
「本当に流、キミって」
「デリカシーがないね」
「ね」
真っ赤な顔を両手で覆う平良くんを後目に、総攻撃される俺。
そ、そんなに悪いことしたかなあ。
「ふっ、これで剣菱を狙う魔の手が一つ減ったというものだ」
「平良くん……」
副会長が剣菱くんの肩を抱いて嬉しそうに言ってる。
剣菱くんは平良くんをちらちら見て、すごく気にしているみたいだ。
先を越された、……なんてのは思わないのかな、みんなの剣菱くんは。
「お、俺のことはいいですから、早く仕事してください……」
まだ顔を赤くしてる平良くんが、一斉に注目される雰囲気に堪えかねて、か細く言う。
もし、相手は誰、とか、どんな子、とか、いつから?とか、質問責めでもしようもんなら、倒れちゃいそうな雰囲気だ。
仕方ない、いつの日か自分から伝えてくれるのを待つことにしよう。
うーん、俺ってばいい先輩。
11
お気に入りに追加
339
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

星蘭学園、腐男子くん!
Rimia
BL
⚠️⚠️加筆&修正するところが沢山あったので再投稿してますすみません!!!!!!!!⚠️⚠️
他のタグは・・・
腐男子、無自覚美形、巻き込まれ、アルビノetc.....
読めばわかる!巻き込まれ系王道学園!!
とある依頼をこなせば王道BL学園に入学させてもらえることになった為、生BLが見たい腐男子の主人公は依頼を見事こなし、入学する。
王道な生徒会にチワワたん達…。ニヨニヨして見ていたが、ある事件をきっかけに生徒会に目をつけられ…??
自身を平凡だと思っている無自覚美形腐男子受け!!
※誤字脱字、話が矛盾しているなどがありましたら教えて下さると幸いです!
⚠️衝動書きだということもあり、超絶亀更新です。話を思いついたら更新します。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる