フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~

いちき

文字の大きさ
上 下
48 / 72
第4章 フェスティバル!!!

1 私立桃華学園の文化祭は、とても豪華だ。

しおりを挟む








 私立桃華学園の文化祭は、とても豪華だ。――って、体育祭の紹介でも全く同じことを言った気がするけれど、本当にそうなんだから仕方がない。何しろ、全国屈指のお坊ちゃま学校で、ナントカ財閥の息子やナントカ企業の次期社長なんていう生徒がごろごろいる。有名企業とのコネクションならば他の学校に負けることはなく、どうせならそれを有効活用しちゃいましょう、あわよくば将来に繋げるチャンスにしちゃいましょう、文化祭はそんなコンセプトで行われるため、非常に派手だ。十月の最終週に行われることが多いのだけれど、一般開放日の動員客数は軽く遊園地レベルだ。こんな離島にはるばるご苦労さま、とも思うけれど、まあ、来る価値はあると思う。豪華だから。
 さて、そんな壮大な文化祭を誰が企画・運営するかというと。





 「生徒会(俺たち)なんだよねえ……」

 机の上に積み上がった書類を見上げて、俺は深く重いため息を吐き出した。幾らやってもやっても終わりが見えないし、面倒ったらありゃしない。あーあー、去年は参加側で、他校の女の子に声を掛けて楽しんでたっていうのにー。

「ううう、もうやだよー」
「泣き言言うんじゃねえ」
「ダサいね」
「ダサいよ」

 それぞれの部活や有志の団体からの企画書が山積みになっていて、コレはアリとかナシとか予算が幾らまでなら出せるとか、最終的には実行委員との会議で決まるけれど、一応生徒会の方でふるいにかけておかなければ見通しが立たない。みんなで手分けして目を通して、っていう作業は、骨が折れる。すっかりと気が抜けて、平良くんが用意してくれたお茶をストローでずるずる飲みながらぼやく俺に、容赦ないツッコミが三方向から飛んできた。

「読んでも読んでも終わらないじゃんー」
「今年は特に数が多いな」
「つうか剣菱くん関連の企画書多すぎ。許可取ってんの?」

 剣菱日向と握手会、剣菱日向のメイド喫茶、剣菱日向の耳そうじ屋……もう何枚見たかわからない似たり寄ったりな文字に、ついその企画書を指で弾くと、同じように書類に目を通していた剣菱くんが、びくりと肩を竦めてからぶんぶんと大きく首を振った。

「し、知りませんー……!」
「一体誰がこんな堪らん企画を、いや剣菱を困らせる企画を」
「本音だだ漏れー」

 副会長の鼻から赤い血が一筋零れそうになっているのを、平良くんがすかさずさっと拭き取った。GJ。

「案外副会長だったりしてー」
「何を言う。俺だったらもっと上手くやるに決まってるだろう。撮影所と称して剣菱とのツーショットを撮り放題にしたり、剣菱に着せ替え可能にしたり……」

 ああ、妄想の世界に行ってしまわれた。
 剣菱くんがさあっと青褪めているのも気にせず、平良くんが抑えているティッシュが赤く染まっている……。ううん。副会長をここまで狂わせる剣菱くん、恐るべし。
 会議室の広い机の上、数えきれない書類が散乱している。可と不可を分け合って、可には無難な企画、不可には(主に剣菱くん関連の)不可能と思われる企画が積み重なっていった。大きな窓からは、すっかり藍色が濃くなった西日が差している。――そこで、俺ははっと気が付いた。

 ――この人たちが、ちゃんと、仕事してる……!?

 なんということだ。
 書類の選別に夢中で気が付くのが遅くなったが、確かに、生徒会が全員揃っている。しかも今日は途中でティータイムに入ることなく、剣菱くんを囲むこともなく、一人一人が、自分のノルマを達成しようと書類に向かっている。なんだろうこれ、奇跡?
 夏休みが明けて暫く経って、最近はすっかり文化祭の準備に追われていて、そんなことを気付く暇もなかった。でも確かに、体育祭のときほど、追い詰められてはいない。そして、何より。
 会長が、疲れていない。
 目を細めて書類の文面を確かめ、ぽいぽいと可不可に分ける顔は、いつもの目付きの悪い会長だ。
 うう、うれしい。
 ――俺は漸く、元祖チャラい男に戻れるってわけだ。 



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

気まぐれ先生の学園生活

海下
BL
これは主人公 成瀬 澪が愛おしまれ可愛がられる。 そんな、物語である。 澪の帝紀生時代もいつか書きたいと思ってます、なんて。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜

小屋瀬 千風
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。 主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。 他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆ 〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定) アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。 それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 【超重要】 ☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ) また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん) ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな! (まぁ「長編」設定してますもん。) ・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。 ・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。 ・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

処理中です...