フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~

いちき

文字の大きさ
上 下
7 / 72
第1章 ミーツ!!!

6 ずんずん前を進む会長の後をついて、連れて来られたのは、

しおりを挟む









 ずんずん前を進む会長の後をついて、連れて来られたのは、生徒会室とは真逆の方向にある、古びた部屋だった。正方形状で狭く、デスクが二つと、真ん中にサイドテーブル、古ぼけたソファが置いてあるだけの部屋。こんな部屋があるなんて、初めて知った。



「何すかこの部屋、初めて来たー」

「元々は控室みてえな扱いだったらしいけどな。今は、静かに仕事したい奴が来る隠し部屋だ」

「会長の他にも誰か使ってんの?」

「風紀委員とか、新聞部とか。締切前にはここにこもりてえ奴らもいるらしいな」

「ふうん……」



 みんな、切羽詰まった青春を送ってるなー。もったいない。机の上に書類を置いて、椅子に腰かける。会長も、隣り合う席の椅子に座った。



「なんなんだ、あいつらは……」



 大きなため息と共に、零された愚痴。うわ。会長が弱音吐くの、初めて見た。貴重な瞬間だ。



「さあ。惚れ薬でも飲まされたんじゃないすかー」

「双子は見た目の愛らしさに興味をもって、平良は優しい言葉掛けに、椎葉は……」



 淡々と紡ぐ会長の言葉に、思わず会長を凝視する。



「小鳥と戯れて花に水をあげていた姿に、心奪われたらしい」

「うわーお」



 何その王道的展開。雫にそのまま教えてあげたい。会長は、額を抑えて再び息を吐いた。椅子の背もたれに、深く寄り掛かっている。



「お前だけでも、マトモでよかった……」



 小さく洩れた言葉は、きっと会長の本音だろう。俺だって、会長だけでもマトモでよかった。俺は微かに笑って、顎を引いた。



「だいじょぶっスよ、きっと明日にはみんなちゃんと仕事するでしょ」

「ああ、……そうだな」

「ていうか会長、ちょっと休んでいーんじゃない。ちょー疲れてますよ今日。……はい、」



 手のひらを出すように促して、その上に小さい飴玉を二つ、プレゼント。やっぱり糖分は取らなきゃね。目を細めて会長を見ると、会長は少しだけ、笑った。――うわ。こんな顔も、初めて見る。



「ありがとう」



 生真面目で不器用で唐変木な会長だけれど、イヤなヤツではない。それはここ一ヶ月一緒に仕事をして、身に染みてよくわかっている。改めて言われた礼の言葉にちょっと照れて、「いーえー」とだけ返して再び書類と向き合った。

 会長と二人きりで黙々と仕事をするのはちょっと変な感じだけれど、決して、いやな雰囲気ではなかった。

















仕事が終わって生徒会室を通り過ぎると、まだ電気がついていた。話し声も聞こえる。仕事熱心なことで、と思いながら今日記入した書類を持ち帰るわけにはいかないので、こっそり室内に入る。書類だけ自分の席に置いて立ち去ろうとしたのだけれど、無理だった。



「やあおかえり、流」

「どうだった?」



双子に声をかけられて、目線を上げる。どうって何が、と問い返そうとして、ギョッとした。ソファーにちょこんと座った、転入生の姿が目に入ったのだ。



「え、まだいたの」

「すみません……、お邪魔しちゃって」

「別に良いだろ、誰にも迷惑はかけてないし」



今の今まで会長と俺に迷惑かかってたんすけどお、とは、口が裂けても言えない。発言権がないってつらい。「そおっすねー」なんて愛想笑いを浮かべて頷いて、会長に頼まれた書類を会長の机上に置いた。今日ばかりは、生徒会室に戻りたくないらしい。そりゃそうか、こんな状態見ちゃったら、疲れがどっと溜まりそう。



「あいつは何か言ってたか?」



お邪魔しましたー、なんて言って部屋を出て行こうとする俺を引き留めて、副会長が聞いてきた。



「別に何も。……これは俺の気持ちっすけど、」



何となく口にしたら、また全員が俺を見る。だから止めてーこの空気……。



「明日は、生徒会室で仕事できたら嬉しいなあ、なんて……」

「そんなことか。大丈夫だ、問題ない。なあ、剣菱」

「は、はい」



そうか転入生の名前は剣菱というのか。今更な発見をしながら、剣菱くんの髪を愛しそうに撫でる副会長の、とろけそうな顔を見る。たった一日でこんなにメロメロになるなんて、ほんと、恋ってやつは偉大である。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

気まぐれ先生の学園生活

海下
BL
これは主人公 成瀬 澪が愛おしまれ可愛がられる。 そんな、物語である。 澪の帝紀生時代もいつか書きたいと思ってます、なんて。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

ボクに構わないで

睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。 あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。 でも、楽しかった。今までにないほどに… あいつが来るまでは… -------------------------------------------------------------------------------------- 1個目と同じく非王道学園ものです。 初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

星蘭学園、腐男子くん!

Rimia
BL
⚠️⚠️加筆&修正するところが沢山あったので再投稿してますすみません!!!!!!!!⚠️⚠️ 他のタグは・・・ 腐男子、無自覚美形、巻き込まれ、アルビノetc..... 読めばわかる!巻き込まれ系王道学園!! とある依頼をこなせば王道BL学園に入学させてもらえることになった為、生BLが見たい腐男子の主人公は依頼を見事こなし、入学する。 王道な生徒会にチワワたん達…。ニヨニヨして見ていたが、ある事件をきっかけに生徒会に目をつけられ…?? 自身を平凡だと思っている無自覚美形腐男子受け!! ※誤字脱字、話が矛盾しているなどがありましたら教えて下さると幸いです! ⚠️衝動書きだということもあり、超絶亀更新です。話を思いついたら更新します。

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

処理中です...