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第1章 ミーツ!!!
6 ずんずん前を進む会長の後をついて、連れて来られたのは、
しおりを挟む6
ずんずん前を進む会長の後をついて、連れて来られたのは、生徒会室とは真逆の方向にある、古びた部屋だった。正方形状で狭く、デスクが二つと、真ん中にサイドテーブル、古ぼけたソファが置いてあるだけの部屋。こんな部屋があるなんて、初めて知った。
「何すかこの部屋、初めて来たー」
「元々は控室みてえな扱いだったらしいけどな。今は、静かに仕事したい奴が来る隠し部屋だ」
「会長の他にも誰か使ってんの?」
「風紀委員とか、新聞部とか。締切前にはここにこもりてえ奴らもいるらしいな」
「ふうん……」
みんな、切羽詰まった青春を送ってるなー。もったいない。机の上に書類を置いて、椅子に腰かける。会長も、隣り合う席の椅子に座った。
「なんなんだ、あいつらは……」
大きなため息と共に、零された愚痴。うわ。会長が弱音吐くの、初めて見た。貴重な瞬間だ。
「さあ。惚れ薬でも飲まされたんじゃないすかー」
「双子は見た目の愛らしさに興味をもって、平良は優しい言葉掛けに、椎葉は……」
淡々と紡ぐ会長の言葉に、思わず会長を凝視する。
「小鳥と戯れて花に水をあげていた姿に、心奪われたらしい」
「うわーお」
何その王道的展開。雫にそのまま教えてあげたい。会長は、額を抑えて再び息を吐いた。椅子の背もたれに、深く寄り掛かっている。
「お前だけでも、マトモでよかった……」
小さく洩れた言葉は、きっと会長の本音だろう。俺だって、会長だけでもマトモでよかった。俺は微かに笑って、顎を引いた。
「だいじょぶっスよ、きっと明日にはみんなちゃんと仕事するでしょ」
「ああ、……そうだな」
「ていうか会長、ちょっと休んでいーんじゃない。ちょー疲れてますよ今日。……はい、」
手のひらを出すように促して、その上に小さい飴玉を二つ、プレゼント。やっぱり糖分は取らなきゃね。目を細めて会長を見ると、会長は少しだけ、笑った。――うわ。こんな顔も、初めて見る。
「ありがとう」
生真面目で不器用で唐変木な会長だけれど、イヤなヤツではない。それはここ一ヶ月一緒に仕事をして、身に染みてよくわかっている。改めて言われた礼の言葉にちょっと照れて、「いーえー」とだけ返して再び書類と向き合った。
会長と二人きりで黙々と仕事をするのはちょっと変な感じだけれど、決して、いやな雰囲気ではなかった。
仕事が終わって生徒会室を通り過ぎると、まだ電気がついていた。話し声も聞こえる。仕事熱心なことで、と思いながら今日記入した書類を持ち帰るわけにはいかないので、こっそり室内に入る。書類だけ自分の席に置いて立ち去ろうとしたのだけれど、無理だった。
「やあおかえり、流」
「どうだった?」
双子に声をかけられて、目線を上げる。どうって何が、と問い返そうとして、ギョッとした。ソファーにちょこんと座った、転入生の姿が目に入ったのだ。
「え、まだいたの」
「すみません……、お邪魔しちゃって」
「別に良いだろ、誰にも迷惑はかけてないし」
今の今まで会長と俺に迷惑かかってたんすけどお、とは、口が裂けても言えない。発言権がないってつらい。「そおっすねー」なんて愛想笑いを浮かべて頷いて、会長に頼まれた書類を会長の机上に置いた。今日ばかりは、生徒会室に戻りたくないらしい。そりゃそうか、こんな状態見ちゃったら、疲れがどっと溜まりそう。
「あいつは何か言ってたか?」
お邪魔しましたー、なんて言って部屋を出て行こうとする俺を引き留めて、副会長が聞いてきた。
「別に何も。……これは俺の気持ちっすけど、」
何となく口にしたら、また全員が俺を見る。だから止めてーこの空気……。
「明日は、生徒会室で仕事できたら嬉しいなあ、なんて……」
「そんなことか。大丈夫だ、問題ない。なあ、剣菱」
「は、はい」
そうか転入生の名前は剣菱というのか。今更な発見をしながら、剣菱くんの髪を愛しそうに撫でる副会長の、とろけそうな顔を見る。たった一日でこんなにメロメロになるなんて、ほんと、恋ってやつは偉大である。
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