フリーダム!!!~チャラ男の俺が王道学園の生徒会会計になっちゃった話~

いちき

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第1章 ミーツ!!!

3 小さな電子音が、鼓膜の向こうで聞こえてくる。やだ。

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ピピピ……ピピピ……ピピピ……小さな電子音が、鼓膜の向こうで聞こえてくる。やだ。まだ起きたくない眠い、俺は布団を離さない……ぎゅうと布団を抱き締めると、「痛ェ」という声が聞こえた。あれ布団って喋るっけ、そうか痛いかと心の中で答えて、ぽんぽんと優しく撫でてやる。



「……れ、なーがーれ」

「ん……」



ああ、俺の名前も知っている。ちょっぴりゴツゴツして硬い布団を再び抱き締めようとすると、肩を押された。あれ?



「朝から布団と間違えてぎゅー、は確かに美味しいシチュエーションだが、生憎自分がされるのには興味ねえ。相手がお前なのも全く萌えねえ。起きろ」



朝からヒドイことを言われた気がする……。ぼんやりとした意識の中で薄く目を開けると、既に制服に着替えた雫が俺を見下ろしていた。



「あー……おはようございます」

「今更恥じらうな馬鹿。起きたな? 先、行ってるぞ」

「はあい」



よい子の返事をして、ゆっくりと布団から起き上がる。朝に弱い俺を起こすのが、雫の一番の仕事だ。母のような男である。確か、雫はご飯も美味かった。



「絶対モテんのになー」



 今度、清純そうな女の子を紹介してあげよう。日頃のお礼として。三次元は怖いとか言われそうだから、なんかコスプレとかさせて……アホなことを考えながら、着替えて、髪をセットして(いい感じにピンを留めるのが時間がかかる)、俺は部屋を出た。









学食で朝飯を食べて、教室に行くと、ざわざわと普段よりも騒がしい。「おはよー」と挨拶しながら窓際の一番後ろに腰掛けて、荷物を置いた。



「なにこれなんの騒ぎ」



さすがに、雫とはクラスは別である。クラスまで同じだったらちょっと気持ち悪い。いや、一年までは同じだったのだが、二年になって別れた、といった方が正しい。



「転入生が来るらしい」

俺が話し掛けたのは、前の席に座る久遠くん。赤い髪を立たせて、制服を着崩して、紛れもない不良風の容姿なのに、実は真面目な良い奴だ。



「へえ。何年?」

「一年」

「入学式に間に合わなかったんだねえ……」



昨日の雫との会話をぼんやりと思い出した。それにしても、男共のこの騒ぎっぷりは、異常だ。



「それだけでなんでこんな盛り上がってんの」

「さあ……何でも、超絶美少年、とか何とか」



そう言って久遠くんは俺に新聞を見せてくれた。号外と大きく銘打ってあるそれは、ある種うちの学園の名物だ。学園行事等の全うな記事も多いが、誰と誰がどうのこうのという、名誉毀損とか大丈夫?と心配したくなるようなスキャンダルも扱っている。その新聞の一面を見ると、「季節外れの転入生!?」という見出しで、すっぱ抜きのような大きな写真が使われていた。俯き加減に廊下を歩く少年が、職員室に向かっているところだ。白黒写真じゃよくわからないけれど、線が細く、儚げな印象を受ける。



「でも男でしょー」

「そりゃあな」



礼を言って新聞を返すと、久遠くんは苦笑した。



「まあ、暇なんだろ、みんな」



久遠くんは、もしかしたら誰よりも冷静かもしれない。新聞を畳んでしまっているところを見ていると、ブレザーのポケットが震える。メールだ。



『超絶美少年ktkr』



送り主は雫で、写真が添付してあった。どこから撮ったのか、ドアップの写メ。癖のない栗色のショートカットに、ぱっちりとした大きな瞳、睫毛も長い。小振りな鼻に口角の上がった唇、桜色の頬――確かに、女の子も羨むような、可愛らしい顔立ちをしていた。



『いつの間に撮ったの』



俺は冷静な返信をする。



「確かに可愛いみたい。久遠くんどお、タイプ?」



久遠くんの反応が知りたくて、雫にもらった写メを見せる。首を傾げると、久遠くんは俺の携帯を覗き込んだ。



「俺はもうちょい、体格が良いほうが」



あ、久遠くんってガチ系なんだ。知らなかった。ちょっとショック……。不意に、手のなかの携帯が再び震えた。



『俺の情報収集能力嘗めんなよwww現物はもっと萌えるwww会長とラブシーンよろ』

『まだ生徒会入り決まってないっしょー』



簡単に返信を打つと、担任が入ってきて朝のホームルームになった。ちらりと窓の外を見る。勿体ないくらいの、晴天だった。



 
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